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酵素触媒分解における環化反応機構について

ドキュメント内 小山内 靖 (ページ 189-200)

3.3 結果・考察

3.3.5 酵素触媒分解における環化反応機構について

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Entry Substrate Products Composition b) Cyclic    Linear 9

10 11 12 13 14 15 16

Linear 5-mer

3-mer 4-mer 5-mer 6-mer 7-mer 8-mer 9-mer 10-mer

1.00    0.61 1.47    8.86 8.12    26.04

6.55    9.37 6.23    5.33 5.60    4.95 3.48    3.44 2.50    3.03 17

18 19 20 21 22 23 24 25 26 27

Linear 6-mer

3-mer 4-mer 5-mer 6-mer 7-mer 8-mer 9-mer 10-mer 11-mer 12-mer 13-mer

1.00    0.00 0.08    0.28 2.70    1.40 9.63    2.34 3.23    6.52 1.97    2.02 1.49    1.77 0.58    0.84 0.50    0.72 0.28    0.66 0.00    0.39 28

29 30 31 32 33 34 35 36

Linear 7-mer

3-mer 4-mer 5-mer 6-mer 7-mer 8-mer 9-mer 10-mer 11-mer

1.00    0.00 0.82    2.73 2.86    5.02 17.95    11.84 40.54    22.38 6.33    7.33 2.84    4.67 3.14    3.98 1.27    3.60

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Entry Substrate Products Composition b) Cyclic    Linear 37

38 39

Linear 7-mer

12-mer 13-mer 14-mer

0.93    2.81 0.68    1.63 0.47    1.55 40

41 42 43 44 45 46 47 48 49 50

Linear 8-mer

3-mer 4-mer 5-mer 6-mer 7-mer 8-mer 9-mer 10-mer 11-mer 12-mer 13-mer

1.00    4.71 1.05    13.06 8.03    12.71 34.09    12.37 71.37    30.25 71.10    46.99 8.11    6.91 3.58    4.36 4.81    3.20 1.53    2.83 0.00    2.97 51

52 53 54 55 56 57 58 59 60 61 62 63 64

Linear 9-mer

3-mer 4-mer 5-mer 6-mer 7-mer 8-mer 9-mer 10-mer 11-mer 12-mer 13-mer 14-mer 15-mer 16-mer

1.00    0.00 0.69    1.20 2.35    2.18 8.21    3.37 13.31    5.71 17.66    12.13 18.13    15.98 2.36    3.67 1.22    2.27 1.15    1.67 0.50    1.46 0.24    1.07 0.00    0.95 0.00    0.60

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Entry Substrate Products Composition b) Cyclic    Linear 65

66 Linear 9-mer 17-mer 18-mer

0.00    0.43 0.00    0.18 67

68 69 70 71 72 73 74 75 76 77 78

Linear 10-mer

3-mer 4-mer 5-mer 6-mer 7-mer 8-mer 9-mer 10-mer 11-mer 12-mer 13-mer 14-mer

1.00    0.57 0.29    1.23 1.58    0.83 4.18    1.24 5.81    1.42 5.92    2.23 7.33    3.97 6.90    4.79 1.57    1.43 0.83    0.58 0.79    0.63 0.32    0.33

a)0.25 % Toluene solution of the molecularly homogeneous oligomer was stirred with 1000 wt.-% Silica Novozym at 40 oC for 24 h.

b)Relative value to cyclic 3-mer.

Table 3.16に示した組成比の値は環状型3量体のスペクトル積分値を1として計算した。

したがって、絶対値に意味はなく、同一基質のデータ内でmole比を求めることにより他 の基質と比較できるものである。

本検討により、いずれのオリゴマーサイズを基質に用いても、基質オリゴマーよりも大 きなオリゴマーが生成物中に含まれることが確認された。したがって、本検討のように基 質濃度を低下させたときでも、リパーゼ触媒による分子間エステル交換反応が進行するこ とが明らかになった。

生成物中に含まれる環状型オリゴマーの比率を解析した結果、4, 5-merを基質に用いた 場合は生成物中の環状型組成比が30 %台であるのに対して、6~10-merを基質に用いると 生成物中の環状型組成がは50 %台後半にまで上昇することが明らかになった。この結果 より、本分解反応中に生じた環化反応はこれまでの検討から示されたように、オリゴマー サイズ選択性を有しており、その選択されるオリゴマーサイズは6-mer以上であると考え

Fig. 3.68: MALDI-TOF MS spectrum of before and after the cyclization of hydroxy-type 8-mer catalyzed by lipase fromCandida antarctica a).

a)0.25 % Toluene solution of the molecularly homogeneous oligomer was stirred with 1000 wt.-% Silica Novozym at 40 oC for 24 h.

られる。8量体の水酸基末端型オリゴマーを環化させた際のMALDI-TOF MSスペクトル をFig. 3.68に示した。

また、環化反応におけるオリゴマーサイズ選択性はアシル酵素中間体を形成する段階で 決定されると考えられる。先の検討から、本分解反応に用いたCandida antarctica 由来リ

パーゼを6-mer以上の大きさのオリゴマーに作用させたときに環化反応が良好に進行する

ことが示されたが、この結果からは本反応のオリゴマーサイズ選択性は導き出せない。す なわち、酵素が基質を認識してアシル酵素中間体を形成した際に最も確率の高いアシル鎖 長がオリゴマーサイズ選択性の結果であり、この本環化反応に適したオリゴマーサイズよ り大きなオリゴマーを基質に用いれば、酵素は適したアシル鎖長を用いて中間体を形成し、

環状型生成物を与えると考えられる。そこで、環化反応で生成する環状型オリゴマーの大 きさを詳細に検討することで基質オリゴマーサイズの保持性を調べ、本環化反応のオリゴ マーサイズ選択性について検討した。本検討は基質オリゴマーの環状型組成比が生成物全 体に占める割合を算出することで行った。結果をFig. 3.69に示した。

Fig. 3.69より、基質として用いたオリゴマーのサイズを変更せずに最も環化したのは

Fig. 3.69: Cyclization rate with keeping the original oligomer sizea).

a)0.25 % Toluene solution of the molecularly homogeneous oligomer was stirred with 1000 wt.-% Silica Novozym at 40 oC for 24 h.

7-merの水酸基末端型オリゴマーを酵素に作用させたときであった。したがって、Candida

antarctica由来リパーゼが環化反応を行う際にアシル鎖として最もよく認識するのは3—ヒ

ドロキシブタン酸ユニットで7量体の長さであると考えられる。また、Fig. 3.69の形状が ポリマー分解生成物のMALDI-TOF MSスペクトルの形状に類似していることから、ポ リマーの分解反応過程でもこのオリゴマーサイズ選択性が存在することが示唆された。し かし、本酵素の有するオリゴマーサイズ選択性は厳密なものではなく、3—ヒドロキシブタ ン酸ユニットの場合には6~8量体程度のオリゴマーと良好なアフィニティーを有するこ

とがFig 3.69より示唆された。これは本酵素がサブユニットなどを有していないために、

正確なオリゴマーサイズを認識できないためと考えられる。ただし、4, 5-merの環状型の 生成率は他のオリゴマーサイズと比べて明らかに低かったことから、4, 5-merの環状型オ リゴマーが本酵素の活性部位領域で立体障害を持つ可能性やこれらのサイズのオリゴマー を基質に用いた際にkcatやkm値が大きく変化した可能性が示唆された。

以上の検討からCandida antarctica 由来リパーゼが環化反応を行う際にオリゴマーサイ ズ選択性を有していることが示されたので、既にUppenbergらにより報告されたCandida

antarctica由来リパーゼの活性部位周辺の立体構造157)と合わせて以下に考察した。また、

PROTEIN DATA BANKに保管されている、Candida antarctica 由来リパーゼと酵素阻 害剤であるTween80が結合した活性部位周辺の立体構造をFig. 3.70に示した。

Fig. 3.70: The structure in 3-D of lipase from Candida antarctica with inhibitor (Tween80) by RAS MOL. (PDBid. = 1LBT)

Candida antarctica 由来リパーゼの活性セリン残基はSer 105(105番目のセリン残基) であると報告されており157)、Fig. 3.70では阻害剤が活性部位に入り込んでいる様子がわ かる。また、この活性部位のポケット内に存在する阻害剤の炭素骨格の数は20を超えて おり、非常に大きな基質も収容できることが示唆された。

そこで、Uppenbergらが報告したCandida antarctica由来リパーゼの活性部位周辺を 二次元図157)に7量体の環状型3HBオリゴマーをあてはめた図を作成し、Fig. 3.71に記 した。

若干のひずみが確認されたが、28員環である7量体環状型がすっぽりと収まる大きさを 本酵素が有していることが示唆された。また、報告より活性部位ポケットの側面からアミ ノ酸残基側鎖が張り出していることが明らかになっている(Fig. 3.71ではアミノ酸残基を 示した。)。したがって、環化反応で4及び5量体オリゴマーの環化率が低かったのは、4 及び5量体の環状型がこれらアミノ酸残基側鎖と立体障害があった可能性が高い。

また、当研究室の江端らの報告により、ポリ(ε—カプロラクトン)を有機溶媒中で本酵素 により分解させたときには2量体の環状型が得られた。これは14員環の大きさであり、

活性部位ポケットの側面から張り出したアミノ酸残基側鎖と立体障害がなければ、中程度

Fig. 3.71: Proposed cyclization mechanism in active site of Candida antarctica.

の大きさのマクロリドが本酵素により合成できることが示された。本分解反応においても 4及び5量体の環状型オリゴマーよりも3量体の環状型オリゴマーの組成比の方が高かっ た。(Table 3.16参照)

一方、本酵素がリッドを有さないために、より大きな環状型オリゴマーも立体障害をも たずに本酵素の活性部位に入ることができ、合成可能であると考えられる。しかしながら、

活性部位から反応系側に張り出したオリゴマー領域が酵素と相互作用を有さないため、オ リゴマーサイズの増加に伴って、酵素との親和力は低下すると考えられる。したがって、

本酵素のオリゴマーサイズ選択性は7量体を中心に示され、より大きな環状型オリゴマー については立体障害がないために徐々に環化率が低下したと考えられる。

以上の検討から、本分解反応で酵素として用いたCandida antarctica 由来リパーゼは直 鎖状オリゴマーを環化させるときにサイズ選択性を有していることが示された。そのオリ ゴマーサイズ選択性のために、3—ヒドロキシブタン酸ユニットでは7量体が最も良好に環 化されることが明らかになった。その結果、P(3HB)の分解生成物中には分解反応時間に 影響されずに7量体の環状型が最も高い比率で含まれたと考えられる。

(2)環化反応機構

これまでの検討から、本環化反応はアシル酵素中間体内の分子内エステル交換反応によ り進行していることが示された。第2章 酵素触媒重合においても環状型生成機構につい て考察したが、一般に環化反応にはFig. 3.72に示したように分子間反応によるものと分 子内反応によるものがある。そこで、単一分子量に分別した環状型オリゴマーを基質に用 いた検討を行った。

Scheme 3.72: Proposed mechanisms of the lipase-catalyzed cyclization.

Fig. 3.73: Proposed reaction mechanism of the cyclic oligomer with lipase.

Table 3.17: The reaction of molecularly homogeneous cyclic oligomers a).   Entry      Substrate       Main product   

  1      7-mer       7-mer   

  2      8-mer       8-mer   

  3      9-mer       9-mer   

  4      10-mer       10-mer   

  5      11-mer       11-mer   

a)0.25 % Toluene solution of the molecularly homogeneous oligomer was stirred with 1000 wt.-% Silica Novozym at 40 oC for 24 h.

Fig. 3.73に示したように本環化反応がアシル酵素中間体内における分子内エステル交換

反応により進行するならば、環状型オリゴマーを基質に用いた場合、律速がアシル酵素中 間体形成と水酸基の求核攻撃のどちらの過程であっても、生成物は基質と同じオリゴマー

Fig. 3.74: The lipase-catalyzed reaction of cyclic 7-mera).

a)0.25 % Toluene solution of the molecularly homogeneous oligomer was stirred with 1000 wt.-% Silica Novozym at 40 oC for 24 h.

サイズを有するはずである。一方、アシル酵素中間体がn個凝集した分子間エステル交換 反応で環化反応が進行すると、得られる環状オリゴマーのオリゴマーサイズは基質に用い たオリゴマーのn倍になるはずである。

Table 3.17に単一分子量の環状型オリゴマー4~11量体を分解反応と同条件にさらした

結果をまとめた。生成物の確認はMALDI-TOF MSを用いて行った。また、7量体の環状 型オリゴマーを用いた反応前後のMALDI-TOF MSスペクトルをFig. 3.74に示した。

Table 3.17並びにFig. 3.74より、反応前後で主生成物のオリゴマーサイズが変化しな

いことが明らかとなった。Fig. 3.74中では基質以外のオリゴマーサイズが生成物中に若 干含まれたことが確認された。また、基質の開環体である水酸基末端型オリゴマーは酵素 に含まれる水を用いた加水分解反応により生成したと考えられる。したがって、確認され た基質オリゴマーよりも小さな環状オリゴマーは、開環反応により生じた水酸基末端型オ リゴマーの再環化反応により生成したと考えられる。したがって、本環化反応はこれまで の検討により示されたように、アシル酵素中間体内における分子内エステル交換反応によ り進行したと考えられる。

ドキュメント内 小山内 靖 (ページ 189-200)