• 検索結果がありません。

第 6 章 インサート金属を用いたハイブリッド固相接合

6.3 実験結果及び考察

6.3.4 超音波振動が接合部の原子拡散へ与える影響

接合部におけるO,Al,Tiの各元素の分布状態についてEPMA分析(面分析及び線分析)

を行った結果をFig.6-12,Fig.6-13に示す.Fig.6-12 a)及びFig.6-13 a)は真空炉中で拡 散接合したアルミニウム接合部の断面のEPMA分析結果である.Fig.6-12 b)及びFig.6-13

b)は大気中で超音波振動を印加して接合したアルミニウム接合部の断面のEPMA分析結

果である.

ここで,拡散現象について考える6).実際に起こる多くの拡散現象は非定常状態の拡散で あり,非定常状態での拡散方程式は,フィックの第二法則(Fick’s second law)より,式 6.1で表される.

𝜕𝐶

𝜕𝑡 = 𝜕

𝜕𝑥(𝐷𝜕𝐶

𝜕𝑥) ⋯ (6.1)

C:位置xでの濃度,t:拡散時間,D:拡散係数

いま,拡散係数Dが濃度依存性をもたないとすると,式6.1は式6.2と表される.

𝜕𝐶

𝜕𝑡 = 𝐷𝜕2𝐶

𝜕𝑥2 ⋯ (6.2)

ここで,実用的に,以下のような境界条件にて解くと,式6.3が得られる (ⅰ) t=0のとき,0x∞ において C=C0 とする.

(ⅱ) t>0のとき,x=0 において C=Cs とする.

x=∞ において C=C0 とする.

これより,

𝐶𝑥− 𝐶0

𝐶𝑠− 𝐶0= 1 − 𝑒𝑟𝑓 ( 𝑥

2√𝐷𝑡) ⋯ (6.3) Cxは,位置xにおける濃度を示す

右辺の第2項は,ガウスの誤差関数とよばれるものであり,式6.4で定義される.

𝑒𝑟 𝑓(𝑧) = 2

√𝜋∫ 𝑒−𝑦2𝑑𝑦

𝑧 0

⋯ (6.4)

この誤差関数の値をもとに,Fig.6-14に拡散のマスターカーブを示す7)Cxの値は場所x および時間の関数として与えられる.具体的には,𝑥 √𝐷𝑡⁄ の関数となる.

ちなみに,拡散係数は,温度に依存し,高温ほど大きくなる.拡散係数Dの温度依存性 は,式6.5と表される.

𝐷 = 𝐷0𝑒𝑥𝑝 (−𝑄𝑑

𝑅𝑇) ⋯ (6.5)

ここで,D0:定数(振動因子),Qd:拡散の活性化エネルギー,

R:ガス定数,T:絶対温度

- 90 -

また,チタンの特性について考えてみる.チタンは酸素の固溶量が大きく,673K以上に 加熱すると,表面の酸化皮膜が急激に減少することが知られている.本実験に用いた真空 拡散接合品は,この現象を利用し接合強度を高めている.

そこで,O元素について観察する.Fig.6-12の面分析結果にて,赤丸で囲んだ接合部に 着目すると,真空拡散接合品は酸素元素が少ないが,大気中で超音波振動を印加したもの は酸素元素があることがわかる.Fig.6-13の線分析結果内の一点鎖線は接合部であり,超 音波振動を印加した接合部の酸素強度が増加していることがわかる.これらの結果から,

大気中で超音波振動を印加して接合した試料は,拡散接合した試料に比べ接合部界面にO 元素が濃く分布しているのは明らかである.

次に,Ti元素について観察する.Fig.6-12の面分析結果内の赤い線が線分析を行った箇 所である.Fig.6-13に示す線分析結果から,大気中で超音波接合した試料のTi拡散幅は1.8

㎛であるのに比べ,真空拡散接合した試料ではTi元素の拡散幅が2.4㎛と広くなっている ことがわかった.

ここで,拡散領域と接合強度の関係について考えてみる.前述の式より,接合温度の上 昇は,拡散係数を大きくし,拡散距離の増加につながる.一方,Fig.6-5より,接合温度の 上昇は,接合強度の増加につながっている.このことから,本接合において,チタンおよ び酸素の拡散距離の増加は,接合強度の増加につながると考えられる.

ハイブリッド固相接合は,超音波振動にて酸化皮膜を破壊することで接合する.Fig.6-11 からも明らかなように,アルミニウム側には塑性流動領域が存在するが,チタン側にはそ れは見られない.また,真空拡散接合した試料の接合時間は3600sであり,ハイブリッド 固相接合装置にて接合した試料の接合時間は,360sである.このことから,ハイブリッド 固相接合材の接合界面にある酸化皮膜が,チタンの元素拡散を妨げたことで,拡散領域が 狭まり,真空拡散接合品よりも接合強度が低下したと考える.一方,ハイブリッド固相接 合品において,超音波振動を印加しない場合よりも,印加した場合の接合強度が高かった のは,部分的に酸化皮膜が破壊され,チタン元素の拡散領域が広がったためであると考え られる.

- 91 -

Fig.6-12 EPMA image (Map)

- 92 -

Fig.6-13 EPMA image (Line)

- 93 -

Fig.6-14 Concentration profile by diffusion