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本研究にて得られた知見を総括し,本章にまとめる.

第一章では,アルミニウムおよびアルミニウム合金をとりまく環境及びその接合技術に ついて調査し,研究目的を明示した.

アルミニウムおよびその合金の需要は増加しており,需要が高まるにつれて,アルミニ ウムおよびその合金への接合ニーズが高まっている.“溶融接合”や“ろう付”から,“摩 擦攪拌接合”や“拡散接合”へとアルミニウムおよびその合金への接合ニーズは多様化し ている.そんな中,材料を溶融させない固相接合技術が注目されている.しかし,アルミ ニウムおよびその合金を固相接合させるには問題がある.それは,アルミニウムと強く結 合した酸化皮膜が固相接合を阻害するからである.大気中でアルミニウムおよびその合金 を固相接合させる場合,アルミニウム材料を大きく変形させなければならない.真空中で アルミニウムおよびその合金を固相接合させる場合,大きな設備と長い処理時間が必要と なる.そこで,本研究では,大気中で短時間に材料変形の少ないアルミニウム及びその合 金の固相接合法を考案し,接合装置を開発する.そして,考案した固相接合法の接合メカ ニズムを解明し,実用化を目指すことを目的とした.

第二章では,大気中で短時間に材料変形の少ないアルミニウム及びその合金の固相接合 法を考案した.その接合法を実現するためのハイブリッド固相接合装置を開発した.

アルミニウムおよびその合金の接合に用いられている固相接合技術を,表面研磨などの 前処理,接合時間,変形量,熱影響の 4 項目で評価した結果,超音波接合法が本研究に適 していると考えた.しかし,現状の超音波接合では,超音波振動を発生させる圧電素子の 出力に限界があるため,機械部品などの大きなアルミニウム製品への適用は困難である.

そこで我々は,材料を外部からの熱で軟化させながら超音波接合を行う接合法を考案した.

考案した接合法を実現するためのハイブリッド固相接合装置は,主に加熱ユニットと超 音波振動ユニットと加圧ユニットで構成されている.加熱ユニットは,局所急速加熱が可 能で,制御性に優れる高周波誘導加熱を用いた.高周波誘導加熱発振機と放射温度計,温 度調節計を組合せることで,安定した接合部の温度制御を実現させた.また,超音波振動 ユニットは,加熱や加圧による材料固有振動数の変化に対応可能な超音波発振機と,振動 解析を活用して設計したホーンを用いた.これにより,超音波振動を効率よく接合面へ伝 達することができた.そして,加圧ユニットは,サーボプレスを用いることで,熱により 材料が膨張しても一定の加圧力にて制御することが可能となった.各ユニットの制御パラ メータおよび振動伝達系を最適化させたことで,開発したハイブリッド固相接合装置は,

今まで超音波接合では接合困難であったアルミニウム丸棒を大気中で接合することに成功 した.

第三章では,開発したハイブリッド固相接合装置を用いて,接合条件(超音波振動の有 無および接合温度,接合時間,加圧力,振動振幅)が,接合強度にどのような影響を及ぼ すのか検証した.その結果,得られた結論は次のとおりである.

・ 超音波振動が接合強度に及ぼす影響

523K 以上に加熱したアルミニウム丸棒に超音波振動を印加し接合すると,接合 部の破断面には,延性金属の破断面の特徴であるディンプル形状が存在する.よっ て,超音波振動を印加させると,外周部が金属接合し,超音波振動を印加しない場 合よりも,接合強度は上昇する.

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・ 接合温度が接合強度に及ぼす影響

接合温度の上昇に伴い供試材の引張強さ,耐力が低下するため,接合面での塑性 変形領域は,同圧力および同振幅を接合部に印加した場合でも,増大する.その結 果,接合温度の上昇と共に接合部面積が増大し,接合強度は上昇する.

・ 接合時間が接合強度に及ぼす影響

接合時間は,ある一定時間まで,超音波振動は金属接合部の形成を促し,接合強 度を増加させるが,一定時間以降は,材料の変形,とりわけ接合部面積の増加に作 用する.

・ 加圧力が接合強度に及ぼす影響

加圧力の上昇と共に接合強度は低下する.これは,加圧力が上がると塑性変形領 域が拡大し接合部の面積は広がるが,金属接合部(ディンプル形状部)の拡大には つながらず,接合強度が低下したと考える.

・ 超音波振幅が接合強度に及ぼす影響

周波数一定のもとで振幅を大きくすると,接合強度は上昇する.振幅を大きくす ると超音波エネルギーが大きくなり,塑性流動効果が拡大し,酸化皮膜の流動性が 高まることで,金属接合が促進されると考える.

第四章では,新たに開発したハイブリッド固相接合装置での接合において,接合面の酸 化皮膜がどのように変化し,アルミニウム丸棒同士の金属接合が形成されるのか調査した.

アルミニウム表面の酸化皮膜は,厚さ100Å(オングストローム:10-10m)程度なので,

その状態を捉えるのは困難である.そこで,陽極酸化法を用いて,人為的に接合面に1㎛ 程度の酸化皮膜を生成し観察した.その結果,以下のことがわかった.

・ 超音波振動を印加することで,酸化皮膜は破壊され,部分的に消失する.また,超 音波振動により,アルミニウム組織に塑性流動が生じる.この塑性流動により,消 失した酸化皮膜は,接合界面からアルミニウム結晶粒内に取り込まれると考えられ る.

第五章では,加圧力,振動力,熱エネルギーの役割を今までの実験結果から考察した.

それらを踏まえて,新たに開発したハイブリッド固相接合装置での接合メカニズムは,以 下のとおりと考える.

① 接合面を密着させ,熱と圧力および超音波振動を接合面に印加することで,接合 面に塑性変形が生じる.その際,酸化皮膜には亀裂が発生し,酸化皮膜を分断す る.

② 材料は熱エネルギーによって軟化し,超音波振動のエネルギーにて塑性流動を起 こす.接合界面にある酸化皮膜は塑性流動により破壊が進みアルミニウム組織内 部へ移動していく.

③ 酸化皮膜が消失した接合界面では,新生面の面積が拡大していき,強固な金属結 合となって接合が完了する.

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Fig.8-1 Schematic diagram of an aluminum state bonding mechanism at high temperature

第六章では,アルミニウム合金を大気中で形状を大きく変形させることなく短時間で接 合する新たな接合技術を開発することを目的に,インサート金属と接合強さの関係,超音 波振動が接合強さにおよぼす影響、超音波振動が接合部近傍組織へ与える影響について調 べた.その結果,得られた結論は次のとおりである.

・ 超音波振動が接合強度に及ぼす影響

接合温度823Kで,アルミニウム丸棒の接合時に超音波振動を印加すると,超音 波振動を印加しない時より接合強度が高くなった.なお,超音波振動を印加した時 のアルミニウム丸棒の接合強度は,真空拡散接合したものよりは低かった.

・ 超音波振動が酸化皮膜へ与える影響

破断面上にて観察した酸化皮膜の亀裂長さは,超音波振動を印加しなかった時よ り,超音波振動を印加した時のほうが約1.8倍長かった.よって,超音波振動を印 加することにより接合部表面の酸化皮膜が破壊は進行する.

・ 超音波振動が接合部近傍の組織に及ぼす影響

アルミニウム丸棒の接合部近傍は,超音波振動を印加することにより塑性変形し て加工硬化する.更に,超音波振動を印加することで接合部表面の酸化皮膜が破壊 される.

・ 超音波振動が接合部の原子拡散へ与える影響

アルミニウム接合面に存在する酸化皮膜によって,元素の拡散が妨げられる.接 合面の酸化皮膜の存在が,大気中で接合した試料の接合強度が真空拡散接合の場合 より低下する原因の一つである

第七章では,市中で多く用いられているアルミニウム合金材であるA6061材とA6063材

(6000系合金)を供試材として,ハイブリッド固相接合装置の有用性を検討した.A6061 材は,Al-Mg-Si合金にCuを添加することで,強度を向上させた合金であり,車両や陸上 構造物,医療用機械部品などに広く用いられている.一方,A6063材は,A6061材より強 度は低いが,押出性,表面処理性に優れており,近年,軽量で熱伝導が良好な特徴を生か し,自動車用熱交換器にも多く用いられている.そこで,A6061材は,機械部品を想定し,

丸棒形状にて,A6063材は熱交換器を想定し,パイプ形状のもので接合実験を行った.そ の結果,得られた結論は次のとおりである.

・ ハイブリッド固相接合装置にて接合したA6061合金材は,同条件で接合したA1070 材よりも高い接合強度を有した.これは,超音波振動による酸化皮膜破壊効果とと もに,合金中のMg元素による酸化皮膜の破壊・還元効果が相乗したと考えられる.