第 8 章 日本人と中国人のクレーム交渉動に関する意識調査
8.2. 調査 1 の概要
8.2.6 調査 1 から見られた文化差
8.2.6.2 質問 2 に関する結果
行できないという問題点は日本ではすでに解決されているが、中国ではいまだ問題が残さ れているといえるだろう。
吉城(2009:46)
具体的に見てみると、さらに場面間の差も見られた。14の場面のうちCN7については最 も差が見られた。
CN7 については、「よくある」と「時々ある」と回答した日本人母語話者は 9.4%しか占 めていなったのに対して、「よくある」と「時々ある」と回答した中国人母語話者は約半分 であった。
CN7 はスーパーで買ったフライドチキンが腐ったようなので交換してもらうように交渉 する談話である。日本では、スーパーの食品衛生管理が厳しいので、腐った商品を販売す ることはあまり多くない。また、たとえそのような事態が発生しても、サービス関係者が ただちに交換や返品するように対応するのが普通である。
図8-5 クレーム交渉の必要性に関する結果(中国人の場合)
図8-6 クレーム交渉の必要性に関する日中対照
全体的に見てみると、日中両国には、大きな違いはなかった。14 例のうち、もっとも違 いが見られたのは談話例のJP6、CN1、CN2であった。
52.9
23.5 20.1 88.2
26.5 61.8
94.1 70.6
50
94.185.394.1 82.4
52.9 47.1
76.5 79.9 11.8
73.5 38.2
5.9 29.4
50
5.9 14.7 5.9 17.6
47.1
0%
10%
20%
30%
40%
50%
60%
70%
80%
90%
100%
交渉しない 交渉する
63.2 64
36.8 36
0% 20% 40% 60% 80% 100%
日本人 中国人
交渉する 交渉しない
8.2.6.2.1 談話例CN1の場合
CN1は不良品の交換についてのクレーム交渉談話である。「交渉する」と回答する中国人 母語話者人が 70%以上を占めているのに対して、日本語母語話者の回答率は半分以下であ ることが分かった。
「交渉する」と回答した理由を分析した結果は図8-7に示す。
図8-7 「交渉する」と回答した理由(CN1の場合)
一方、「交渉する」と回答した中国人母語話者の理由を分析した結果、「一ヶ月は早すぎ る」、「明らかな初期不良なので、交換できると思う」、「二回目で故障したので、もうこの 店は信用できない」などの理由が見られた。
一般的に中国で欠陥商品が販売されていることが日本より多いことは事実である。この ため、中国では欠陥商品の存在を前提とした商習慣ができている。そして、このような商 習慣があるため、中国の消費者は、欠陥商品が出たら、返品できるという期待を持ってい る。
36.3 13.4
18.2 26.8
45.5 46.4
0 13.4
0% 20% 40% 60% 80% 100%
日本人 中国人
一ヶ月は早すぎる 明らかな初期不良 二回目の故障 商品自体が高い
「交渉しない」と回答した理由を分析した結果を図8-8に示す。
図8-8「交渉しない」と回答した理由(CN1の場合)
「交渉しない」と回答した日本人母語話者の理由を分析した結果、「買ってから一ヶ月以 上経ったので、初期不良かどうか判断できない」、「使用の頻度を店側に証明できない」、「店 側は修復するサービスを提供しているので、返品するのではなく、修復を依頼する」など の理由が観察された。
8.2.6.2.2 談話例JP6の場合
JP6とCN2は金銭的な利益に関わるクレーム交渉談話である。
JP6は契約後 1ヶ月でちょうど1年間になるので短期違約金を払わなくてもいいかにつ いて賃貸管理会社と交渉する談話である。その場合では、「交渉する」と回答する中国人母 語話者人が 61.8%であったのに対して日本語母語話者の回答率は 28.1%しか占めていなか った。
「交渉しない」と回答した人の理由を分析した結果を図8-9に提示する。
19 22.2
23.8 55.6
42.8 22.2
4.8 0
9.6 11.1
0% 20% 40% 60% 80% 100%
日本人 中国人
一ヶ月以上経った
使用の頻度を証明できない 修復を依頼する
商品自体は高くない 面倒だから
図8-9 「交渉しない」と回答した理由(JP6の場合)
「交渉しない」と回答した日本人母語話者の理由を分析した結果、「契約を守らなければ いけない」、「最初に決まったルールだから」などの理由が多かった。
「交渉する」と回答した理由を分析した結果を以下の図8-10に示す。
図8-10 「交渉する」と回答した理由(JP6の場合)
一方、「交渉する」と回答した人の理由を分析した結果、日本人の場合、「交渉して融通 してもらえる可能性がある」という回答率は極めて低かった。しかし、中国人の場合、「交
30.8 23.1
53.8 38.4
15.4 23.1
0 15.4
0% 20% 40% 60% 80% 100%
日本人
中国人 契約を守らなけれないけな
い
最初に決めたルールだから 違約金の金額が大きくない 面倒だから
88.2 54.8
11.8 45.2
0% 20% 40% 60% 80% 100%
日本人 中国人
違約金の金額が大きい 交渉して融通してもらえる 可能性がある
渉して融通してもらえる可能性がある」という回答率が45.2%まで達している。
8.2.6.2.3 談話例CN2の場合
CN2は修理費用を安くするように店の人と交渉する談話である。「交渉する」と回答する 中国人母語話者が半分であったのに対して、日本語母語話者の回答率は 15.6%しか占めて いない。
「交渉しない」と回答した理由を分析した結果は図8-11に示す。
図8-11 「交渉しない」と回答した理由(CN2の場合)
「交渉しない」と回答したの理由を分析した結果、「決まった料金だから定価で修理する」、
「新しく買う」、「面倒だから」などの理由が挙げられた。しかし、日本人と中国人の間に は大きな違いが見られなかった。
「交渉する」と回答した理由を分析した結果を図8-12に示す。
51.9 35.3
33.3 29.4
14.8 35.3
0% 20% 40% 60% 80% 100%
日本人 中国人
決まった料金だから定価で 修理する
新しく買う
商品自体が高くない
図8-12「交渉する」と回答した理由(CN2の場合)
一方、「交渉する」と回答した理由を分析した結果、日本人では「事前に説明してなかっ た」という回答が多かったが、中国人の場合、「交渉して安くしてもらえる可能性がある」
という回答率が一番高かった。また、日本人の回答には見られない「他のサービスが提供 される可能性がある」というのも中国人の回答から観察できた。
中国人は、日本人より交渉好きなタイプが多いと言えるであろう。中国では、交渉の行 動の有無や交渉能力の優劣は、本人の利害得失に直接関わるケースがかなり多いようであ る。中国が融通の利く社会であるのに対して、日本は規則を重視し、融通の利かない社会 と認識されている。日本では法的制度がすべての領域に普及しているため、自分の利益に 関わる事について、既成の契約や規則及び制度の裁量に任せるのが良いことである。規則 やルールなどの決められたことを守って、その枠をはみ出さない限り、当事者が交渉して もしなくても、最終的結果はほぼ同じである。それはJP6とCN2のような状況があった場 合では、多くの日本人が「交渉しない」を選んだ最大な理由ではないかと考えられる。
78.7 21.5
21.3 65.9
0 22.6
0% 20% 40% 60% 80% 100%
日本人 中国人
事前に説明してなかった 交渉して安くしてもらえる 可能性がある
他のサービスがもらえる可 能性がある