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クレーム交渉談話における各「話段」の分類及び出現数

ドキュメント内 九州大学学術情報リポジトリ (ページ 40-47)

第 4 章 クレーム交渉談話の構造分析に関する対照研究

4.3 クレーム交渉談話における各「話段」の分類及び出現数

クレーム交渉談話は、内容のまとまりや参加者の役割、目的によっていくつかの「話段」

に分類される。

各「話段」の構成について、佐久間(2000:81)は、「話段は、発話権を持つ話者の実質的な 発話や質問で始まり、他の参加者の相づちか応答で終わる。これは、参加者の役割分担のあ る談話や対話の場合にも共通する傾向だといえよう」と述べている。

クレーム交渉談話における各「話段」についても以上の2種類の発話が観察された。客と サービス関係者のどちらかの一方の話者が発話権を握っていて実質的な発話で自分の意見や 主張を表明する。それに対して、その他の会話参加者が相づちの表現で注目を表す。

4.3.1クレーム交渉談話における各「話段」の分類

本研究では、クレーム交渉が終了するまでの過程は以下の五つの段階を経ていると考える。

① 前置き話段

② 交渉の目的を表面化する話段

③ 交渉話段

④ 対応話段

⑤ 交渉を終了させる話段

以下、それぞれの話段の定義及び例を見ていく。

① 前置き話段:「挨拶」や「前置き表現」からなり、交渉の場に引き込む働きかけを持つ 発話のまとまり

【JP3】

前置き話段

1C7 あのう、ちょっとお伺いしたいんですが、

2S8 はい。

交渉目的が表面化する話段

3C これ、昨日買ったばかりなんです、製造国の証明書が付いているんですか?

対応話段1

4S 証明書はですね。

5C ええ。

1C~2Sは「前置き話段」である。客側は1Cの「あのう、ちょっとお伺いしたいですが、」

で交渉の場に引き込んでいく。

② 交渉の目的が表面化する話段:クレーム事情を説明すること、または処理要求を提示す ることにより、サービス関係者に交渉の目的を告げる発話のまとまり

【JP2】

前置き話段

1C あのう、すみませんが

2S はい。

交渉目的が表面化する話段 3C 先週、こちらで

7 Customerの略字で、以下Cとする。

8 Serviceの略字で、以下Sとする。

4S はい。

5C PSPを19800円で

6S 19800円。

7C 買ったんですよ。

8S はい。

9C で、それを友達に伝えたら、C支店が

10S はい。

11C 「え、私18700円で買えた」って

12S ああ

13C言うから、「はあ?」って 14S ああ

15C やっぱり、○○○なら○○○で、

16S はい。

17Cどの店舗も同じ値段にしてもらわないと

18S はい。

対応話段1

19Sああ

20C はい。

21S それは、そのう、場所ごとに値段の設定が変わってきちゃっているんですね。

3C~18Sは「交渉目的が表面化する話段」である。3C「先週、こちらで」、4C 「PSPを

19800円で」、6C「 買ったんですよ。」、8C 「で、それを友達に伝えたら」、9C 「C支

店が」、11C「 「え、私 18700 円で買えた」って」、13C「言うから、「はあ?」って」、

15C「 やっぱり、○○○なら○○○で」、17C「どの店舗も同じ値段にしてもらわないと」

というクレームを表明し、交渉の目的が表面化する。一方、Sは「ああ」、「はい」、「19800 円」で注目を表す。

③ 交渉話段:客側が交渉の目的を実現するために、サービス関係者に対して、要求や説得 をする発話のまとまり

「交渉話段」において、客側が発話権を握っていて、相手に対して要求や説得を表明する。

一方、サービス関係者側は相づちなどの表現を使って、客側に対して注目を表す。

【JP2】

交渉話段4 60C 振り込み?

61S はい。

62C私がわざわざまた銀行に行かなきゃいけないんですか?

対応話段6

63S そうですね。

64Sまあ、そういう形になりますけど。

交渉話段5

65Cそれってお客様に対して迷惑じゃないんですか?

66S申し訳ございません。

67C ね。

68S はい。

交渉話段4において、客側のC「振込みという形で返金をする」という対応に対して、

62Cの「私がわざわざまた銀行に行かなきゃいけないんですか?」と言って不満を表す。

そして、サービス関係者側は64Sの「まあ、そういう形になりますけど。」と自分の主張を 述べる。

その態度を見て、客側は65Cの「それってお客様に対して迷惑じゃないんですか?」と強 く非難することによって相手を説得しようとする。

④ 対応話段:サービス関係者が客の要求や主張などに対する態度や対応を示す発話のまと まり

「対応話段」において、サービス関係者側が発話権を握っていて、相手の要求や説得に対し て対応を行う。一方、客側は相づちなどの表現を使って、サービス関係者側に対して注目を 表す。

【JP4】

対応話段3

39S2 いや、あのう、######というよりも、午前中のご指定がありますので

40C ええ。

41S2でこちらがAM指定になったらもちろんお家に伺うんですが。

交渉話段3

42Cあ、じゃ、速達扱いで頼んでいるけどどっちもわからないということですか、速達 なのかどうなのか//がわかない。

対応話段4

43S2 //速達というのが次の日の配達の

44 S2そうなんです。

45S2ということですよね。

46C ええ。

47S2そうすると、今日の指定が入っているので、必ず今日には伺いをするという必着 というのが

交渉話段4

48C じゃ、速達であっても//

49S2 //時間は指定していない、

50C 急いでいるか分からないということだ、こっちは。

39S2~41S2 は「対応話段3」である。サービス関係者S2は「客側がAM指定をしていな

いため、午前中に家に伺うことが難しい」と理由を提示することによって自分の行動を正当 化する。

それに対して、客側は42Cの「速達扱いで頼んでいるけどどっちもわからないということ ですか?」で相手に確認する。

その確認に対して、サービス関係者側Cは「そうなんです。ということですよね。そう すると、今日の指定が入っているので、必ず今日にはお伺いするという必着というのが」と 言って理由を説明することにより対応する。

交渉を終了させる話段:サービス関係者と客が交渉を終了させる発話のまとまり。

【CN4】

対応話段10

54S 我问一下我们经理吧。

55S您稍等一下。

交渉話段10

56C 我有事情要赶回去。

57C关于赔偿的问题你让你们经理给我电话。

58S 好的,好的。

59C 还有邮件随时查。

60C有消息联系我。

交渉を終了させる話段 62S 好的,您放心吧。

63C 恩。你们知道我手机吧 。 64C不要往家里打电话,打手机。

65S 好的。知道了。

日本語訳文

対応話段10

54S上司に聞いてみます。

55S少々お待ちください。

交渉話段10

56C用事があるからすぐにいかなきゃいけなくて。

57C賠償については僕に電話するよう上司に伝えてください。

58Sはい。

59C荷物も調べ続けてください。

60C分かったら連絡してください。

交渉を終了させる話段 61Sはい、承知しました。

62Cちなみに、私の携帯の番号、知っていますね。

63C自宅にではなく、携帯に連絡してください。

64Sはい、承知しました。

客側の主張に対して、サービス関係者Sは「上司に意見を聞く」と対応する。そして、客 側のCは「用事があるので帰ります。」と返事する。また「賠償のことについて、上司から 私に連絡するように伝えてください。荷物も調べ続けてください。分かったら連絡してくだ さい。」と一連の要求を出す。それに対して、Sは「はい。承知しました。」と言って、問題 を解決しないまま交渉を終了させた。

次に、【JP5】は「最終的な合意が形成される話段」の例である。

【JP5】

対応話段7

63Sああ、それは問題ございません。

64Cああ、お願いします。

65Sそうしましたら、いかがいたしましょうか。

66S修理はいつぐらいにすればよろしいでしょうか。

交渉話段6

67Cまた来た時でもいいですか?

最終的な合意が形成される話段 68Sそれでも問題ございません。

69Sあの、修理は可能でございますので。

70Cはい。

71Sまた、ちょっと再発してしまったということですね、前回ご連絡したということを おっしゃっていただければ結構でございます。

72Cはい。分かりました。

73Sはい。大変申し訳ございませんでした。

74Cはい。ありがとうございました。

客側は67Cの「また来た時でもいいですか?」と相手に尋ねる。サービス関係者Sは68S の「それでも問題ございません。」、69Sの「あの、修理は可能でございますので。」と71S

「また、ちょっと再発してしまったということですね、前回ご連絡したということをおっし ゃっていただければ結構でございます」と言って承認を示す。それに対して、C は「はい。

分かりました。ありがとうございました。」と言って、最終的に合意が形成された。

4.3.2クレーム交渉談話に現れた「話段数」

すべての談話を分析した結果、各談話に現れた「話段数」は以下の表4-1及び表4-2に まとめる。

表4-1 日本語談話例に現れた「話段数」

日本語談話例(回)

JP1 JP2 JP3 JP4 JP5 JP6 JP7

前置き 1 1 1 1 1 1 1 目的表面化 1 1 1 1 1 1 1 交渉 3 5 6 6 6 4 2 対応 4 8 7 7 8 5 3 交渉終了 1 1 1 1 1 1 1 合計 10 16 16 16 17 12 8

表4-2 中国語談話例に現れた「話段数」

中国語談話例(回)

CN1 CN2 CN3 CN4 CN5 CN6 CN7

前置き 1 1 1 1 0 0 0 目的表面化 1 1 1 1 1 1 1 交渉 8 8 6 10 12 14 11 対応 8 9 7 10 13 13 11 交渉終了 1 1 1 1 1 1 1

合計 19 20 16 23 27 29 24

以上の分析結果が示すように、日中両言語共に、「交渉話段」と「応答話段」が複数回行 われていた。

また、「前置き話段」はすべての日本語談話例に見られたが、中国語談話例には4例しか 観察できなかった。

陳(2007)によれば、「前置き」表現は聞き手との人間関係を良好に維持しながら、後続す る発話行為によるフェイス侵害度を軽減し、円滑なコミュニケーションを保つ機能を有す る。クレーム交渉は聞き手に負担をかけて影響を及ぼす言語行動であるため、交渉を提示す る内容に「前置き」を先立てることによって行動の直接性の度合いを緩和し、相手への負担 を軽減する効果がある。

一方、中国語談話例の CN5、CN6、CN7 には「前置き話段」の使用がなかった。「前置 き」表現を使わない場合、客側がクレームの内容や自分の不満などををより直接的に相 手に伝達しようとしている印象を与えるだろう。

ドキュメント内 九州大学学術情報リポジトリ (ページ 40-47)