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〜質の高い家庭科教員養成のためのプログラム開発の試み(その3)〜

ドキュメント内 イラレ8_表紙No4-A4 (ページ 60-67)

  Bu i l d i ng  Supp o r t  Sy s t em  t o  P r a c t i c e  I n t e r na t i o na l  Ex c h ange  P r o g r am  Ut i l i z i ng  Home  Ec o nomi c s and  I CT

A  S t udy  t o  De v e l op  P r o g r amme  t o  Enc ou r a ge  and  P r omo t e  Home  Ec o nomi c s  Te a c h e r s  and  Th e i r  Ab i l i t y  Ⅲ

山口厚子・白井靖敏・木原貴子

At s uko  YAMAGUCHI・Ya s u t o s h i  SHIRAI・Takako  KIHARA

1 家政学は、欧州、アフリカ、米国、カナダ、アジア諸国など、世 界的に存在する。約10カ国の様々な分野で専門職につく家政学 者が会員となっている国際家政学会(Intrnaonal Federaon  for Home Economics:IFHE)は、28年には10周年を迎

えた。国連の諮問機関でありNGO組織でもあるというユニーク な性格をもつIFHEについては、学会ホームページ(http://www.

fhe.org)、10周年記念に発刊された歴史書(Arcus、28)

等を参照されたい。

2 家政学分野は、女性がまだ教育を受けにくく、社会へ進出してい ない時代に、女性に教育を授け、社会で働くための専門職を発展 させてきたパイオニアであるということができる。家政学分野が 発展させてきた専門職には、家庭科教員、栄養士、生活改良普及 員、家 族 の 専 門 家、消 費 科 学 の 専 門 家、企 業 で 働 く 家 政 学 者 

(Home Economics n Busness)など様々なものがある。

詳しくはStage & Vincent(17)、Hitch & Youat(22)

等を参照されたい。

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 そのような学校レベルでの教育を実践できる家庭科教 員養成の実現を視野にいれた大学レベルでの教育課程の 検討を試みたいと考えた。

(2)これから求められる学力とICT教育

 本研究においてICT(Information and Communication Technology)に着目したのは、国内外においてこれか ら求められる学力を達成するのに、ICTのさまざまな ツールが学習支援ツールとして有効であると捉えたため である。では、これから国内外において求められる学力 とはどのようなものであり、ICTが学習支援ツールとし てどのように有効であるか。

 国内外において求められる学力については様々な議論 があろうが、本プロジェクト研究では、国内においては 中央教育審議会答申が示す学力観、国外においては  OECD(経済協力開発機構)が示す学力観の動向に注目

した。

 平成20年1月17日に発表された中央教育審議会の答 申は、学習指導要領の改訂のねらいとその概要を明確に 示した。知識基盤社会化、グローバル化の中、「生きる 力」が一層重視されるとともに、「確かな学力」を育成す ることが目指され、学力の要素として、

① 基礎的・基本的な知識・技能の習得

② 知識・技能を活用して課題を解決するために必要な 思考力・判断力・表現力

③ 学習意欲

が示された。これらは、OECDが示す国際的な学力観の 動向を踏まえて検討されたという。

 OECDは、個人の人生にわたる根源的な学習の力を示 すのにコンピテンシーという言葉を用い、特に重要な3 つの鍵となる力をキー・コンピテンシーと呼んだ。それ は、

1)自律的に活動する力

2)道具を相互作用的に用いる力 3)異質な集団で交流する力  

という3つのカテゴリーに分類されて示されている。  自律的に活動する力は、大きな展望、あるいは文脈の 中で行動すること、人生計画や個人的プロジェクトを設 計し、実行すること、自らの権利、理解、限界、ニーズ を守り、主張することなど、責任と思慮深さをもって自 立的に活動することに関わるコンピテンシーである。道 具を相互作用的に用いる力は、言語、シンボル、テクス トを相互作用的に活用すること、知識や情報を相互作用 的に活用すること、技術を相互作用的に活用することと 関連するコンピテンシーである。そして、異質的な集団 で交流する力は、他者とうまく関わること、協力するこ と、紛争を処理し、解決することなど、他者と思慮深く 責任をもって交流することに関わるコンピテンシーとい える(ライチェン・サルガニク、2006)。

 しかしながら、キー・コンピテンシーのような学力を 達成するには、教師が一方的に学習者へ知識を詰め込む 教育ではなく、学ぶ側が体験や実験をとおして知識を探 求し構成する(つくりあげていく)、いわゆる「構成主  義」の学習理論に基づく教育が有効となる。近年、質の 高い教育として関心が寄せられているフィンランドの教 育は、まさに構成主義の学習理論に基づいて展開されて いる。さらに、1990年以降に起こってきた「社会構成主 義」の理論では、「構成」という活動は、一人で行うもの ではなく、人間関係や社会との関係で起きてくると捉え た。グループで教えあい、学びあう中で、より充実した 知識を作り上げていくというのだ。この理論をとりいれ た先述のフィンランドの教育では、たいていグループ学 習が採用されているという(福田、2005;福田、2007)。  社会構成主義に支えられる学び、すなわち、協同して 活動に取り組む中で、教えあい、学びあって知識を構成 するという学びを展開するには、ICTの様々なツールが 学習支援ツールとして有効である。特に、「web2.0」と呼 ばれるインターネットの新しい技術は、構成主義の学習 との親和性が高く、ICT教育にうまく取り入れることで 効果が高まる(久保田、2008)。梅田(2006)によれば、

2005年半ば頃から広く使われるようになった「web2.0」

は、定義は今も議論が続くものの、その本質は、「ネット

4 OECDは、コンピテンシーを定義し、各国や企業、組織、そして 各個人がどのようにコンピテンシーを選択していけばよいかとい う問題に答えるためにDeSeCo(Definion and Seecton  of Conptences:コンピテンシーの定義と選択)プロジェクト を提案、その研究成果として、キー・コンピテンシーが示された

(ライチェン・サルガニク、26)

5 構成主義については、白井・山口(29)においてとりあげてい る。参照されたい。

3 ICT(Informaton and Communicaton Technoogy)は、

多くの場合「情報通信技術」と和訳される。IT(Informaton Technoogy)の「情報」に加えて「コミュニケーション」(共 同)性が具体的に表現されている点に特徴がある。ICTとは、

ネットワーク通信による情報・知識の共有が念頭に置かれた表現 であるといえる。

  http://www.sophia−it.com/content/ICT(29年2月 3日参照)

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上の不特定多数の人々(や企業)を、受動的なサービス 享受者ではなく能動的な表現者と認めて積極的に巻き込 んでいくための技術やサービス開発姿勢」と考えられる と述べている。Web2.0によって「一人ひとりの表現行 為が他者の表現行為と自由に結び付けられることで、共 同作業による創造行為の可能性が拓かれる」という。ま た、久保田(2008)は、web2.0の技術を活用すること で、①学習者中心の学習、②豊かな学習環境、③学習コ ミュニティの形成、④細かな学習ニーズに対応、⑤参加 型の学習、⑥協同のための信頼、⑦自律的な学習、とい う構成主義の学習を実践できると説明している。

 以上の見解を参考に、本研究では、国内外においてこ れから求められる学力の育成を担う教育をめざし、web 2.0の活用を視野にいれ、教育におけるICTの活用を模 索することを試みたいと考えた。

3.研究の目的

 以上の研究の背景をふまえた上で、本プロジェクト研 究は以下の目的にしたがって進められたといえる。

・家政学とICTを活用した国際交流プログラムを開発し、

その成果と課題を考察する。

①家庭科教員養成に焦点をあてたICTを活用した大 学レベルでの国際交流プログラムを開発する。

②これから求められる学力を伸ばす学校レベルでの 家庭科教育もしくは家政学の本質を活かした多様 な教育を行うために、学校レベルでのICTと家政 学を活用した国際交流プログラムを開発する。

4.研究の方法

 以上の目的を明らかにするためにとった方法は次のと おりである。

(1)平成18年度から平成20年度の3年の間に、本学 の学生が参加する国際交流プログラムを3事例試 み、Moodleを用いたweb上のプラットホームを 作成した。国際交流の相手国はシンガポールで あった。

・事例①:高校生と大学生が参加したプログラム

・プラットホームの作成

・事例②:中学生と大学生が参加した授業

・事例③:中学生・高校生・大学生が参加したプロ グラム〜プラットホームの活用事例〜

(2)大学において、家政学とICTを活用した国際交流 プログラムがより効果的なプログラムとして機能 するための授業開発を、主として山口が担当する 科目(家政学原論、基礎ゼミ、総合演習、卒業研 究)において試みた。

5.平成18−20年度の研究成果

 本研究の最大の効果は、本研究で開発に着手した国際 交流プログラムが、質の高い家庭科教員養成のための大 学レベルでのプログラム、およびこれから求められる学 力を伸ばす学校レベルでの家庭科教育もしくは家政学の 本質を活かした教育のためのプログラムとして、大きな 可能性を示唆したことであろう。

 主として実施した国際交流プログラムは、中高生を対 象に、ICTを活用して家庭科や家政学の領域やねらいを 取り入れた授業に、本学の学生がコーディネーターおよ びサポーターとして参加するというスタイルをとった。

その結果、参加した生徒、大学生、教員、大学教員それ ぞれがお互いから学びあうことのできる教育プログラム となることがわかった。生徒の中には、協同学習に関心 をもち、学ぶことを楽しむ生徒がみられた。大学生たち は、プログラムの計画・実施にあたって教員や大学教員 とのディスカッションや作業、生徒の授業観察や学習活 動を支援する中で、家政学や家庭科教育にさらに関心を 寄せ、ICTを活用した授業実践の方法、家庭科や家政学 を活かした教育実践についての知識を深め、技術を身に 付けた。教員や大学教員はネットワークをつくり、共に 学びあった。

 また、国際交流プログラムの事例③では、本研究にお いて開発したweb上のプラットホームを活用したグルー プワークを試みた。その結果、ICTのさまざまな学習支 援ツールの中でも、お互いがコミュニケーションをとり あい、グループワークを進める際には、web上のプラッ トホームが有効に活用できることなどもわかった。

 一方で、プログラムを実施する中では、日本の生徒や 大学生の英語力に大きな課題があることがわかった。

 そして、3年間を通じて最も痛烈に感じたのは、ICT を活用した教育を実施するためのサポート体制の確立の 必要性であった

8 これについては、中間報告書(山口・白井・木原、29)を参照 されたい。

6 Moodleとは、社会構成主義の教育理論に基づき、オーストラリ アのカーテイン工科大学のMartnin Dougimas氏によって開発 されたLMS(Learning Management System)であり、 

web2.0の技術を利用できる。本プロジェクト研究の報告書にお いては、白井・山口(29)にて説明している。参照されたい。

7 研究方法とその結果の詳細は、本プロジェクト研究に関する報告 を参照されたい(山口・白井、27、2; 白井・山口、28、

; 山口・白井・木原、29)

ドキュメント内 イラレ8_表紙No4-A4 (ページ 60-67)