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情報通信機器を利用した双方向型大学授業の試み

ドキュメント内 イラレ8_表紙No4-A4 (ページ 91-100)

−教職科目「教育心理学」 ・リベラルアーツ科目「心のしくみ」における実践的検討−

下木戸隆司・白井靖敏

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究では、携帯電話の電子メール送受信機能を利用して、

双方向型のコミュニケーションを実現するためのシステ ムの構築を行い(以後、「携帯メール応答システム」と表 記)、大学講義科目での運用を試みた実践報告を行う。

3.大学生の携帯電話使用率と教育利用の可能性  内閣府が平成20年度に実施した通信利用動向調査に よると、13歳〜19歳の携帯電話使用率は83.6%、20歳

〜29歳は97.3%と報じられている。若者の5人に4人 以上は携帯電話を利用していることになり、かなり高い 数値といえよう。我々が大学の教室で行った調査でも、

受講生全員が携帯電話を所有していた。大学からの連絡 事項の受け取り、家族や友人とのコミュニケーション、

スケジュール管理、音楽や動画の鑑賞、電子辞書・イン ターネット検索など、学生にとって携帯電話はもはや 日々の生活に欠かすことのできない必需品ともいうべき 存在になっている。

 ほとんどすべての学生が携帯電話を所持しており、日 常的に使用している状況を考慮すると、学生にとって携 帯電話は馴染みのある手慣れたツールとなっているもの と考えられる。使い慣れた携帯電話を授業場面で活用す ることができれば、学生にとって利便性の高い教育機器 となることが期待できるだろう。実際、大学教育への携 帯電話の利用の試みは近年相次いで報告されており、教 育機器として携帯電話への期待は大きいといえ る。3)4)

4.携帯メール応答システムの構成

 本研究が開発した携帯メール応答システムは、①学生 が所持する携帯電話、②データの受信・登録・処理と情 報送信を行うサーバ、③授業担当教員のノートパソコン、

以上3つの情報通信機器から構成される(図1)。各機器 の機能については以下のとおりである。

 ①携帯電話 学生は、携帯電話の電子メール(以下「携 帯メール」と称す)を利用して指定されたアドレス宛に 電子メールを送信する。携帯メールには質問紙や小テス トの回答等の必要事項を記入させる(図2左)。その際学 籍番号も一緒に記入させれば、授業の出席確認にも使用 することも可能である。携帯メールの分量が50文字を 超えることは滅多にないため、パケット代はほとんどか からない。またこの携帯電話はサーバから送られてくる 返信メールを受信する際にも使われ、単にデータを送信 するだけでなく、返信メールという形で学生は自分の得 点や判定結果を知ることもできるようになっている(図 2右)。

 ②サーバ Joesウェブホスティング社のレンタル

サーバから、メールサーバ、Webサーバ、データベース、

CGIの各機能を利用して行う。PHPスクリプトを作成し て、送信されたメールを受信し、そこに含まれている情 報をデータベース(My SQL)に登録するようにした。そ の際、受信確認の意味も兼ねて送信元へメールが返信さ れるようにしておいた。例えば、小テストの回答を携帯 メールでサーバに送信した場合、学生一人一人の回答結 果がデータベースに記録されるだけでなく、テストの採 点結果を記したメールが個々の学生のもとに返信される 仕組みになっている。また必要に応じて随時そこから情 報を検索し、加工・統計処理を行った後で結果を出力す る、動的なHTMLファイルを生成する機能を持ったPHP スクリプトも用意した。データベースを使うことで、学 生の出席管理や過去の小テストの得点比較も容易である。

 ③ノートパソコン 講義室に備わっている液晶プロ ジェクタとLANソケットにノートパソコンを接続して 使用する。インターネット・ブラウザを使ってサーバの Webサイトにアクセスすることで、全体結果の傾向が教 室の大画面スクリーンに表示される。結果は可能な限り グラフ表示されるように努め、PHPのグラフ作成ライブ ラリJp Graphを用いて作成した。

図1 携帯メール応答システムの概略

図2 携帯電話による携帯メールの送信画面(左)    受信画面(右)      

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5.心理学講義科目での実践

 名古屋女子大学で平成21年度後期に開講されている

「心のしくみ」と「教育心理学」において、本システム の運用を実施した。本システムは受講生の出席確認を兼 ねて、ほぼ毎回授業のなかで使用した。具体的には、心 理学の内容理解を促すために、心理学の質問紙調査など でよく使われている心理尺度(心理テスト)や心理学実 験で使われている実験課題、授業内容に関する小テスト やアンケート調査を実施し、その回答を携帯メールで送 信させた。受講生が携帯メールをサーバに送信すると、

受理した情報を加工した結果のフィードバック直ちに返 信されるようになっており、心理尺度の場合には自分の 得点が何点だったか(あるいは自分の類型が何型だった か)、小テストの場合には自分がいくつ正解できたか(間 違えたか)を知ることができるようになっている。

 実際に本システムを使って受講生に携帯メールを送信 させるタイミングは授業で扱う内容によって異なってお り、概ね授業開始後10分〜40分ぐらいの範囲で実施し た。携帯メールの送信を受講生に求める際には、出席管 理のために、授業で提示された「キーワード」と「学籍 番号」を携帯メールのSubjectの部分に記入するように指 示した。出席時の不正を減らすために、キーワードはラ ンダムな文字列を指定し、かつ毎回変えるようにした。

出席確認は携帯メールに含まれている「送信アドレス」、

「キーワード」、「学籍番号」、および「メール送信時間」

によって行い、著しく送信時間の遅れている者は遅刻扱 いに、授業時間外に送信している者は欠席扱いにするよ うにしており、このことは授業初回時に受講生に説明し て了解を得た。

 図3は授業のなかで、表情認知テストを実施したとき の受講生の回答をヒストグラムで図示した例である。人 物写真を数枚受講生に提示し、その人物が抱いている感 情について「喜び」「悲しみ」「怒り」「恐れ」「驚き」「嫌 悪」のうち、どの感情に対応するかの判断を求めた。図 はその際の受講生の選択数を示している。グラフは一定 時間ごとに更新されるので、送られたデータが増えるに つれてヒストグラムの形状が変化し、受講生全員の回答 状況がリアルタイムに反映されるようになっている。速 やかにメールを送信する受講生もいれば、結構ゆっくり としている受講生もいるというように、携帯電話操作の はやさには個人差があるので、一度に全員分の結果が出 そろうことはほとんどない。この間全体結果が確定する までの時間は、隣同士お互いの結果について話し合うよ うに促していることもあり、授業のなかでよく盛り上が る部分である。自分の回答が他者のものと同じならば喜 びや安心の歓声が、違っていると驚きや当惑、不満の声

があがるのが常である。

 このように個人の結果は携帯メールで、クラス全体の 結果は液晶プロジェクタの画面でフィードバックされる ことで、受講生は自分の回答と他人の回答を見比べるこ とができる。自分と他者を比較することで、自分がクラ スの多数派なのか、少数派なのかについても知ることが でき、自らを振り返り自己理解を促すきっかけになって いる。では実際に、本システムが受講生の自己理解を促 進していたのかについては、後で結果の部分で考察する。

6.調査方法携帯メール応答システムの教育効果   (アンケート調査より)

6.1 調査概要

 調査目的 携帯メール応答システムの授業内での運 用が、受講生にどのように受け止められていたのかを調 査した。

 調査対象 平成21年度後期授業科目「心のしくみ」「教 育心理学」を受講している計175名の受講生が対象で あった。

 調査時期 平成21年12月10日に授業終了間際の10 分程度を利用して調査を行った。

 調査項目 質問項目は携帯メール応答システムの教 育効果に関する7項目「メールシステムは授業で適切に 活用されていた」「メールシステムによって授業の参加意 識が高まった」「メールシステムによって授業や話の内容 への関心が高まった」「メールシステムによって授業内容 の理解度が高まった」「メールシステムによって授業が楽 しく感じた」「メールシステムで他の人の考えや傾向を 知って参考になった」「メールシステムは自分自身を振り 返るきっかけになった」と、携帯メール応答システムの 操作性に関する4項目「メールシステムの使い方になじ めなかった」「メールシステムは面倒だった」「メールシ 図3 携帯メール応答システムにおける受講生へのフィー

ドバック画面の例

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