下木戸隆司・石倉瑞恵・伊藤太郎・宇野民幸・白井靖敏・竹尾利夫・
谷口富士夫・遠山佳治・原田妙子・幸順子
図1 テキストを事前に読んできた割合
−5 8−
う。
ただし「ざっと目を通した」「少し読んだ」という学生 を加えると3学科とも9割を超えており、事前指導が まったく功を奏していないわけではないこともわかる。
一方、「まったく読まなかった」という学生は児童教育学 科で0、生活環境学科・保育学科で1割弱であった。
(2)テキストの内容を理解したか
事前に読んできたテキストの内容を「理解できた」と いう学生は3学科とも1割未満であり、「大体理解でき た」が5割〜7割、「少し理解できた」が4割〜2割、
「理解できなかった」については1割未満であった。読 みやすく、理解しやすいテキストが使われたことが評価 されている結果といえよう。テキストの理解度について は3学科にそう大きな違いは認められないが、「理解で きた」「大体理解できた」という保育学科の割合が他の2 学科よりも少し多いようである。
(3)初年次教育での説明を理解したか
初年次教育の説明の理解度については、「理解できた」
と回答した学生が1割未満〜2割、「大体理解できた」が 7割〜9割、「少し理解できた」が1割〜2割、「理解で きなかった」がほぼ0であった。全体的な傾向としては ほぼ共通しており、3学科とも新入生オリエンテーショ ン時の初年次教育は学生にわかりやすいものとして、肯 定的に受け止められていたようである。なかでも保育学 科は「理解できた」という学生が多く、とくに初年次教 育の効果が顕著であった。
平成19年度に総合科学研究所が行った学生調査によ ると、新入生が「不安に感じている」と回答した上位3 項目は、大学での試験対策(61%)、ノートの取り方
(50%)、予習・復習の程度(48%)であった。1) 今 回初年次教育によって「授業の受け方」「予習・復習」に
ついて理解できたと回答している学生がいることを考慮 すると(自由記述より)、新入生オリエンテーション時に おける初年次教育はこうした「大学での学びの不安」を 減じる働きをしている点で評価できるだろう。
(4)2週間授業を受けてみて納得したか
オリエンテーションで行った初年次教育の効果(第一 回目調査)はあくまで一時的なもので、時間の経過とと もに消失してしまっているかもしれない。その可能性を 検討するために、大学入学後2週間以上経過した頃合い を見計らって、再度質問紙調査を行った(第二回目調査)。 2週間経過以後の理解度においては、「納得できた」と いう学生が1割〜2割、「大体納得できた」が7割、「少 し納得できた」が1割〜2割、「納得できていない」が0 であった。3学科ともほぼ同じ傾向を示しているが、細 かなところを見ると第一回目の調査と第二回目の調査と の比較において、児童教育学科と生活環境学科は「大学
図4 2週間授業を受けてみて理解した割合 図2 テキストを理解した割合
図3 初年次教育での説明を理解した割合
−5 9−
での学び」について「納得できた」と回答した割合が増 えていたのに対し、保育学科では逆に減少していた。こ の「納得できた」という割合が増えていたことについては、
オリエンテーション時点での漠然とした理解が、実際に 自分が大学生活を体験していくことで「大学での学び」
についての理解が深まったためと考えられる。
4.総括
まず第一に、初年次テキストを配布し、予め初年次教 育テキストを読んでこいと教示するだけの指導では漫然 と読んでくる学生が多いことが示された。第二に、初年 次教育の説明自体はわかりやすいものとして受け止めら れ、入学生の大学での学びへの不安を減じる効果が推察 された。第三に、オリエンテーションで理解した内容は 実際に大学の授業を受けることでより深まったものへ転 化している可能性が示された。これらの結果を踏まえ、
さらに質の高い初年次教育を行うように次年度の教育活 動に反映させていくことが肝要であろう。
機関研究「大学における効果的な授業法の研究4 初 年次教育についての授業法の開発」としての活動はこれ で終了である。今後は初年次教育を含め、大学教育での 取り組みが学生の学びの質とどのように繋がっていくの か、その学習成果(ラーニング・アウトカム)の測定に ついて「大学における効果的な授業法の研究5 多様な 学習成果の評価方法の開発」のなかで模索し、検討して いく予定である。
参考文献
1)石倉瑞恵、伊藤太郎、宇野民幸、下木戸隆司、白井靖敏、竹尾利 夫、谷口富士夫、遠山佳治、原田妙子、幸順子、大学における効 果的な授業法の研究4 −初年次教育についての授業法の開発−
名古屋女子大学、総合科学研究、第3号、p.1−43(2009)