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思考力を育む効果的な授業のあり方

ドキュメント内 イラレ8_表紙No4-A4 (ページ 107-113)

水谷禎憲・田植稔哉・秋田武史・坂井健悟 小野田敬範・野田みどり・影浦真紀子

(高校教務部研究会メンバー)

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 国立大学附属高校は教育研究の実践校であるから、学 校は思考力を育成させる場として捉えている。実際、高 校は「自主、自律、自由」をそれぞれの教育目標にして いる。高校に在学する三年間クラス替えは行われない。

理系・文系でのクラス分けをしないのも特徴。

 土曜日は隔週で授業を行っている。現行の学習指導要 領の目玉であった「総合的な学習」は筑附の特徴で、こ の学校が発祥のモデル校。特に筑附小出身者は、小学生 時代から同様の教育環境にいたこともあり、表現・発表 能力には長けている。研究し発表できる力は、筑附なら ではの伝統的な教育力の賜で、各教科もそれに倣って物 事深く、多面的から学ぶ。

 研究会では、国語・地歴公民・数学・理科・外国語の 公開授業と教科分科会が行われた。分科会では、公開授 業の合評会および各教科会のテーマに沿って、研究協議 会が行われた。

(2)研究授業

①11月16日(月) 第6時限 3年4組 日本史B  授業者 小野田敬範 教諭

 平成21年3月に新学習指導要領が告示される。目標 には、「歴史的思考力を培う」ことが掲げられている。こ の目標は、今回の研究テーマである「思考力を育む効果 的な授業のあり方」に関連し、歴史教育の柱となるもの である。今回の授業では、新学習指導要領に則り思考力 を刺激し育む授業の実践を本研究で考えていきたい。ま た、研究のテーマや研究授業に関する部分について新指 導要領の内容は、次のように記されている。

1 目 標

 我が国の歴史の展開を諸資料に基づき地理的 条件や世界の歴史と関連付けて総合的に考察さ せ、我が国の伝統と文化の特色についての認識 を深めさせることによって、歴史的思考力を培 い、国際社会に主体的に生きる日本国民として の自覚と資質を養う。

2 内 容

(3)近世の日本と世界

 近世国家と社会や文化の特色について、国際 環境と関連付けて考察させる。

ア.歴史の説明

 歴史的事象には複数の歴史的解釈が成り立つ ことに気付かせ、それぞれの根拠や論理を踏ま えて、筋道立てて考えを説明させる。

 授業で取り上げた時代は近世であり、江戸時代初期の 外交政策である鎖国体制についておこなうことにする。

近年の研究で江戸幕府の外交は「四つの口」と表現して

おり、従来の閉鎖的外交政策以外の解釈がされている。

また、鎖国に関する法令、キリスト教の禁教政策、島原 の乱などについても同様に歴史的意義が複数示されてい る。こうした点からも新指導要領にみられる「歴史の説 明」の重要性が示されていることが理解できる。

 研究授業では、こうした歴史事象について多面的な解 釈と意義に気づく力を身につけることを目的とし、歴史 事象を考察する力を養うこと目指していきたい。そのた めに暗記科目としての受動的な授業ではなく、教師の発 問を通して歴史を思考する能動的な授業の実践をおこ なった。

 今後の課題であるが、これまでの通史を系統的に整理 し授業する型の授業からの脱却があげられる。新指導要 領の日本史Bでは「歴史の考察」が削除され、「歴史と資 料」・「歴史の解釈」・「歴史の説明」・「歴史の論述」に分 割された。そのため歴史を覚えるのではなく生徒自身が 思考し解釈する力を養う授業の型を構築する必要があり、

私自身も一層の教材研究と教授方法の研鑽をおこなって いきたい。

②11月19日(木) 第2時限 2年4組 Reading  授業者 影浦真紀子 教諭

 本校の今年度の研究テーマは「思考力を育む効果的な 授業のあり方」である。思考力育成のためには、指導者 が質問するだけでなく、生徒自身が「こんな場面ではど んな英語を言えばいいのか」「この発話をしたときの、発 話者の意図は何か」「なぜこの英文はこの形になっている のだろうか」など考えることが必要である。これは、学 習指導要領が目指している英語の授業である。

 学習指導要領では、英語Ⅱに関する以下の記述がある。

1 目標

 幅広い話題について、聞いたことや読んだことを理解 し、情報や考えなどを英語で話したり書いたりして伝え る能力を更に伸ばすとともに、積極的にコミュニケーシ ョンを図ろうとする態度を育てる。

 今回の研究授業では、生の英語を学ぶにはメディアを 使った英語教材の1つである英字新聞を使うことにした。

英字新聞は、内容がバラエティーに富み、情報量豊富、

さらに時事問題を現実社会と並行して学べるので刺激的 だからである。英語という言語についての知識を増やす だけでなく、英語で表現されている情報や考えを活用し、

いろいろな角度から分析・考察したうえで、自分の意見 などを表現できるようになることが思考力の育成には重 要である。英字新聞を使い、グループで意見交換を行な う活動を通して思考力の育成を図った。

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③11月19日(木) 第3時限 2年7組 古文  授業者 野田みどり 教諭

 「思考力」とは「得た知識を利用して考えを広げる力」で あると考える。

 平成21年3月に告示された学習指導要領では古典Bの 目標を「古典としての古文と漢文を読む能力を養うとと もに、ものの見方、感じ方、考え方を広くし、古典につ いての理解や関心を深めることによって人生を豊かにす る態度を育てる」としている。古典を通して、その時代、

人物の考えに触れ自らの視野を広げることを目的として いる。しかし、これまでの授業は「読む能力を養う」こ とに重点が置かれていたように思われる。それは古典文 法の知識を生徒に伝え、古語の意味を確認し、それをも とに生徒が現代語訳を行うという授業である。もちろん、

文法や現代語訳は正確に古文を読むためには必要である が、それを授業の中心とすべきではない。

 古典における「思考力」は、身につけた文法知識や古 語をもとに本文を読む過程で、背景や状況を把握し考え を巡らす力であると考える。古典は文章どおりに訳すこ とができれば理解できるものではなく、また、主語や目 的語が省略されていることが多いため、それを補いなが ら読み進める必要がある。「中納言参り給ひて」の教材を 通して、登場人物の心情や状況を根拠とし、清少納言が 定子と過ごした宮中での日々を書き記した理由を考察す ることで「思考力」を養うことを目標とする。本授業は その考察につながる根拠となる場面を扱う。文章を手が かりにして、そこで省略されている事柄を考え、理解に 努めるということに主眼をおき、「思考力」の育成を図る 授業を実施した。

④11月19日(木) 第5時限 2年9組 化学Ⅰ  授業者 坂井健悟 教諭

 理科の学習において必要な思考力とは、「自ら問題を 発見し、解決していく過程を論理的に導き出し、再構築 していく力」であると考えられる。そのような論理的な 思考力を身につけるために、日々の授業においてどのよ うな学習活動を行っていくことが効果的であるか研究す る必要がある。これまでの授業では、どちらかというと 知識を与えたり、そのことに関する解説をして理解させ ることを重視していた。しかし、生徒たちはそのような 授業を受けているだけでは、思考せずに授業を受ける姿 勢が身についてしまう。思考力を身につけていくために は、このような受動的な学習だけではなく、自ら考え答 えを導き出していくような能動的な学習が大切になって くる。そのためには、自分たちで予測を立てたり、ルー ルを見つけパターンを発見していくことを通して、生徒

たちが主体的に考える活動を取り入れていくことが必要 である。本研究では、思考力を働かせるトレーニングを 行い、その中で思考力を育てる取り組みを行った。

 本時では、有機化合物の命名法について、そのルール を知識として与えるのではなく、生徒たちが自ら考えて いく過程を大切にし、その中から主体的に考える姿勢を 身につけ思考力の育成につなげることができるような授 業の実践を行った。

⑤11月20日(金) 第5時限 2年4組 数学Ⅱ  授業者 秋田武史 教諭

 数学科の場合、「教科書の問題は解けても、大学入試問 題は解けない」ということがよくある。過去の本校の生 徒も「定期テストや通知票の評定は良くても、センター 試験などの大学入試では高得点が取れない」という生徒 が少なくなかった。

 では、どうすれば入試問題を解く学力がつくのだろう か? 難関大学の入試問題といえども高校生が解ける

「基本の組み合わせ」である。教科書の基本事項の組み 合わせで、大学入試問題の正解にたどり着くには、教科 書の問題が階段1ステップなら、入試問題は5〜10ス テップほどの階段を1ステップずつ上る必要がある。

 数学は「覚える1+考える9」くらいの「考える科目」

と思っている生徒が多いが、「覚える6+考える4」くら いであると思う。教科書や参考書の公式や問題の「解き 方(定石)」を道具として問題を考えていかなければなら ない。さらに、道具を正しく選ぶ判断力。そして、道具 を使いこなす技量で問題は解答できる。「思考力」=「自 分の頭の中に入っている知識を選択し、加工し、応用し、

組み合わせる一連の作業を進める力」と私は考える。

 今回の授業では、京都大学の入試問題を取り上げる。

しかし、既習の教科書レベルの基本の積み重ねでも解け る問題である。問題を解くための基本知識をプリントで 再確認し、知識と「思考力」と慣れ(=努力)で解ける ようになることを目指す授業を実施した。

(3)講演会

・日時 2月20日(土)午後2:15〜3:50

・演題テーマ「思考が深まるときとは――林竹二の『授 業巡礼』を手がかりに」

・講師 川本 隆史 先生(東京大学教育学部教授)

 生き方に関わる衝撃を与え続ける林竹二先生の授業巡 礼のDVDを拝見し、映像で林先生が述べていたのは、覚 えたことをテストで測って優劣をつけるだけの教育では なく、子供がしまいこんでいる自分の可能性を自ら掘り 起こすのを助ける教育のあり方のことであると、あらた

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