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第 6 章 取引戦略

第 2 節 買いヘッジと売りヘッジ

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100t)建てた。(取引単位:5,000kg、受渡単位:10,000kg とした場合)

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6 ヶ月後、A 社の懸念通りゴム価格が 260.0 円/kg(税抜き)に値上がりした。現物価格と先物価格は連 動するという前提で、先物価格も 260.0 円/kg になったとする。

そのとき、先物取引で得られる利益は

(260.0(円)-240.0(円))×5,000(kg)×20(枚)=200 万円

一方、ゴムの購入費用は

260.0(円)×1,000×100(t)=2,600 万円

よって、購入に係る費用は

2,600 万円-200 万円=2,400 万円

つまり、A 社は当初の計画通り、1kg あたり 240.0 円でゴムを仕入れることができたことになる。

反対に、ゴム価格が 6 ヶ月後に 230.0 円/kg に値下がりしたとする。現物価格と先物価格は連動するというこ とを前提においているので、先物価格も 230.0 円/kg になったとする。

この場合の先物取引の損失は

(230.0(円)-240.0(円))×5,000(kg)×20(枚)=-100 万円

一方、現物の購入費用は

230.0(円)×1,000 ×100(t)=2,300 万円

よって、購入に係る費用は

2,300 万円-(-100 万円)=2,400 万円

つまり、この場合も A 社は計画通り 1kg あたり 240.0 円でゴムを仕入れることができ、A 社はヘッジ取引により 購入費用を 1kg あたり 240.0 円で価格を固定できたということになる。

ここで、当初の時点で A 社はゴムを購入して保管しておくという選択肢よりも、先物取引を利用した方が有利で ある点に注目したい。

もし、当初の時点でゴムを購入していれば、購入価格は 1kg あたり 250.0 円で、その他にも金利や保管費用 までも負担することになり、さらに、6 ヶ月後までその商品が不要であれば、保有することにより生じる便益(コンビ ニエンス・イールド)の価値もないからである。

68 第 2 項 売りヘッジ(ショート・ヘッジ=Short Hedge)

将来のある時点で商品の売却を予定しており、今後の価格変動に係りなく現在の価格で商品を売却 した い場合に用いるのが売りヘッジである。また、現在保有している商品の価値が下がることに対する、価格下落リス クを避けるためにも使用される。

<売りヘッジの例>

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ゴムの輸入商社である B 社は、3 ヶ月後にゴム 100t を売却する契約を結んだ。現在のゴム価格は 250.0 円 /kg で、この契約により B 社は 3 ヶ月後のゴム価格が 10 円(1kg あたり)上昇すれば収入が 100 万円(10 円×100,000kg)増加し、逆に価格が 10 円下落するごとに収入が 100 万円減少することになる。

そこで、B 社は値下がりによる損失を回避するために、ゴムの先物取引を利用して、リスク・ヘッジを行うことにし た。

B 社はゴム先物市場 3 ヶ月後の限月に 260.0 円/kg で 20 枚売りポジションを(1 枚あたり 5,000kg×20 枚=100t)建てた。(取引単位:5,000kg、受渡単位:10,000kg とした場合)

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3 ヶ月後、B 社の懸念通りゴム価格が 240.0 円/kg に値下がりしたとする。現物価格と先物価格は連動すると いう前提により、先物価格も 240.0 円/kg になったとする。

そのとき、先物取引で得られる利益は

(240.0(円)-260.0(円))×5,000(kg)×(-20(枚))=200 万円

一方、現物売却の収益は

240.0(円)×1,000×100(t)=2,400 万円

先物取引とあわせた収益は

2,400 万円+200 万円=2,600 万円

つまり、この場合も B 社は 1kg あたり 260.0 円でゴムを売却することができ、B 社はヘッジ取引により売却価格 を 1kg あたり 260.0 円で固定できたことになる。

今までの例でみたように、ヘッジ取引によって価格変動リスクを回避して、将来の現物取引に伴う利益を確保す ることができるが、反対に利益増大の機会も失うことにもなる。しかし、ヘッジ取引の目的は、将来の不確実性を 取り除き利益を確保するということであるから、その目的が満たされている点を評価するべきである。

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