第 2 章 タンザニア政府の取組みと成果
2.2. 貧困削減に向けた政府のキャパシティ
本項では、貧困削減戦略に掲げられた各セクター戦略・政策、重点プログラムの実施体 制と実施状況について検証し、貧困削減に向けた政府のキャパシティについて分析を行 なう。
2.2.1.
中央政府中央政府においては、政府のキャパシティを強化するための一環として、ⅰ)公共サー ビス改革プログラム(
PSRP
)、ii
)財政管理改革プログラム(PFMRP
)の2
つのプログ ラムが実施されている。また、政府の合理化の一環として地方分権化が進められ、中央 政府の役割・責任が明確化されてきた。本項では、これらのキャパシティ強化プログラ ムの内容をレビューするとともに、貧困削減戦略の実施における中央政府のキャパシテ ィについて考察する。(1)
公共サービス改革プログラム(PSRP: Public Service Reform Programme
)2000
年から、大統領府公共サービス管理庁が主管して、公共サービス改革プログラム が実施されており、2007
年に完了する予定となっている。PSRP
の目的は、政府の役割 を見直し、合理化を進めるとともに、政府機関の能力向上を進めることによって、政府 歳出削減を図ることである。PSRP
の主な内容は以下の通りである。実績管理手法の改善、業務プロセスの向上
政府のリストラ、民間セクターの参入、政策実施を担当するエージェンシーの 創設
公務員等の人事管理(能力主義による人事評価、給与改訂など)
公共サービスにおける倫理の回復、ジェンダー配慮など 情報システム構築、情報管理
政策策定、モニタリング・評価など、プログラム管理の普及
2003
年にPSRP
の中間レビューに基づいて中期戦略が策定され、その中で、ⅰ)開発成 果への重点的取組み、ii
)PSRP
のコンポーネント間の連携強化、iii
)モニタリング・評 価制度の強化、iv)省庁間調整の促進、などが示された。(2)
財政管理改革プログラム(PFMRP: Public Financial Management ReformProgramme
)PFMRP
は、1998
年に財務省(Ministry of Finance
)によって導入され、コンピューター システムによる財政管理制度の導入や公共財政管理にかかわる法制度の整備、会計・調 達・監査に係る能力強化などが図られている。具体的なコンポーネントとしては、以下 の10
項目がある。政策分析および開発政策策定 対外援助・債務管理
予算管理
国庫管理および会計 調達
情報技術(
IT
)サービス投資管理(国営企業改革関連)
財務省管理部門支援 外部監査サービス
プログラム調整および進捗管理・評価
これらのコンポーネントの実施にあたっては、日本、スウェーデン、スイス、ノルウェ ー、
UNDP
がそれぞれ支援を行っている。クラスターごとの目標達成に向けて、各セクターの適切な予算配分を行うことが求めら れるが、新政権の発足に伴う政府機構改革もあり、セクター間の重点配分の見直しや予 算調整が現在行われているところである。MKUKUTA における目標達成に向けて、予 算策定・執行、財政管理の実効性について今後分析・フィードバックが必要となろう。
(3)
貧困削減戦略の実施能力貧困削減戦略の実施にあたっては、
PSRP
およびPFMRP
による政府の合理化と政府機 関の能力向上が大きく影響する。また、地方分権化が進められていることから、地方政 府への支援を行う地方政府省(Ministry of Local Government)が設置されている。地方 開発については、コミュニティ開発・ジェンダー・子ども省(MCDGC
:Ministry of Community Development, Gender and Children
) が 所 管 す る コ ミ ュ ニ テ ィ 開 発 官(
Community Development Officer
) お よ び コ ミ ュ ニ テ ィ 開 発 補 助 員 (Community
Development Assistant
)がファシリテーターとして支援を行い、県レベルの事業計画策定において参加型計画・立案が行われていることとされている。
各セクターにおける貧困削減の取組みにおける中央政府の役割は、政策立案、基準等の 設定、地方政府へのアドバイス、実施状況のモニタリングとされ、各セクターを所管す る省は、こうした役割を果たすことが求められている。
SWAps
をいち早く導入し、こうした政府の役割分担に基づいて教育分野の開発計画である
PEDP
を実施している教育セクターでは、中央政府としての教育文化省のキャパシ ティは向上している。教育文化省では、自らのイニシアティブにより、ドナーとの調整 を行いつつ、開発計画を策定する能力に改善が見られる。また、開発政策の実施にあた っては地方分権化を進めているおり、特に学校建設については、コミュニティレベルの ニーズを反映した形で、PEDP
を実施できるよう、スクールマッピングという手法を取 り入れている。しかし、その他のセクターでは依然として、
計画策定にあたってはドナーの支援に依存しているケースもあり、国家開発・
貧困削減についてのオーナーシップの尊重・自覚が十分でない
受益者および地方政府の参加が限定的であり、中央政府において地域のニーズ や地方政府の実施能力が把握されず、適切な開発計画の策定や地方政府へのサ ポートが十分に行われていない
といった課題が見られる。
また、地方分権化ついては、新たに設置された地方政府省は、法律上の首都である
Dodoma
に置かれており、他省庁との調整などが十分に行うことができないなどの懸念がある。地方分権化の効果を高めて行くには、中央政府による地方政府の能力向上に対 する適切な支援が不可欠であり、省庁横断的な調整を行い、必要な支援を地方政府に提 供して行く中央機関として、地方政府省の組織強化が求められる。
地方開発に対するコミュニティ開発官の派遣を通じた中央政府による支援は、予算など の制約により、現状では国全体に行き渡っていない。コミュニティ開発省は、コミュニ ティ開発官および補助員の育成を行っており、毎年
30
〜45
名の修了者を排出している。しかしながら、本来、一つの郡で
1
名のコミュニティ開発補助員を配置することが必要 とされているにも拘らず、人員が大幅に不足しており、郡レベルでの適切な事業策定お よび予算執行の阻害要因となっている。また、中央政府全体の課題としては、中央政府レベルにおける財政基盤の脆弱性も指摘 される。開発予算に占める援助資金の割合は低下傾向にあるものの、依然として
7
割以 上を援助資金に依存している。貧困削減戦略の策定にあたっては、タンザニア政府のオ ーナーシップ意識の高まりが見られるようになっているものの、実施にあたって不可欠 な予算の確保はドナーに依存している状況が続いており、財政面での能力強化が大きな 課題である。2.2.2.
地方分権化と地方政府タンザニアにおいては開発および貧困削減の実現に向けて、地方政府の実施能力の重要 性が高まり、
1999
年から地方政府改革プログラム(LGRP
:Local Government Reform
Programme
)が実施されている。LGRP
では、i
)地方分権化、ii
)中央政府と地方政府の役割・責任の明確化、
iii
)地方政府への権限委譲、iv
)歳入の公平な配分、を原則と して、地方財政改革や地方政府のキャパシティ・ビルディングおよび人材育成に取組ん でいる。LGRP
で特筆すべきは、財政の地方分権化の進展である。地方政府によって中央政府か らの財政移転や支援に格差があり、不公平が生じていたことから、タンザニア政府は指 標基準法式に基づく地方政府能力開発グラント(LGCDG: Local Government Capacity Development Grant
) を 導 入 し た 。 交 付 金 の 交 付 は 地 方 自 治 省 (Ministry of Local
Government
)を通じて行われ、ⅰ)GBS
を含む一般会計予算からの配分、ii
)LGRP
向けのバスケットファンド、
iii
)WB
による地方政府支援プログラム(LGSP
:Local Government Support Programme
)、iv
)各セクターのバスケットファンド、が財源となっ ている。主な交付金の種類と配分の基準は以下の通り。なお、交付金システムについては、実施機関となる地方政府省の能力強化や、地方自治 体の計画策定・実施・調達能力の強化などが必要であるとの指摘がドナー側からなされ ている。
表 2-14 地方政府への交付金の種類・基準
交付金の種類 目的 配分基準
一般交付金(GPG:General Purpose Grant)
村落レベルでの経常支出に対する交付金 歳入の実績による
• 人口:70%
• 貧困人口:20%
• 面積:10%
開発交付金
(CDG:Capital Development Grant)
地方ニーズに基づいた既存インフラの改修およ び新規インフラ整備のための地方政府支援
歳入の実績による
• 人口:70%
• 貧困人口:20%
• 面積:10%
地方政府開発交付金
(LGDG:Local Government Development Grant)
CDG の交付条件に満たない地方政府向けの任 意の開発資金の供与
歳入の実績による
• 人口:70%
• 貧困人口:20%
• 面積:10%
能力向上交付金(CBG:
Capacity Building Grant)
CDG の交付条件を充足するための地方政府の 能力・制度強化、および能力評価により追加資 金へのアクセスを可能とする
年間平均支出35,000ドル相当。
資格付与審議会が 20,000ドルを受領 し、CDGと同じ基準で15,000ドルが 割り当てられる
(出所) The President’s Office Planning and Privatization (2005) “Guidelines for Preparing Medium Term Plans and Budgets for 2005/06-2007/08”および外務省(2006年)「平成17年度外務省第三者評価:一般財政支援(タンザニアPRBS、
ベトナムPRSC)のレビュー報告書(素案)」22ページ図表III-1-15より作成