第 7 章 経済・財務的実行可能性
7.3 財務分析
7-11
7-12 (2) 売買電力価格
独立した送電線運営者による自由市場では、送電会社の収益は、送電手数料に相当し、配電会社 への販売価格と発電会社からの購入価格の差額となる。インドネシアでは、発電会社は、子会社と してPLNから分離しているが、送電部門と配電部門は同じ会社の中で一体運営されている。
PLNとの協議の中で、PLNは託送料単価を示すことができなかった。本分析では、PLNに帰属する 財務収益は、発電費用と売電によって得られる収入の差額に基づいて算定した。
12月、PLNは、Jawa-7プロジェクトについて、Shenhua Energyを落札業者として選定した。Shenhua
Energyは5米セント/kWh程度の非常に競争力のある料率を提示したと思われる。PLNは、Jawa-7より
この料率で電力を購入することになるため、50ドル/MWhがこの地域におけるPLNからの電力購入金 額になる。
公共サービス規制(Public Service Obligation、PSO)によると、PLNは運営費用総額に相当する補助金を 受領する。この発電コストの基本となる部分を補填する利益は、電力販売の際に受け取る収入単価(補助
金を含む)に組み入れられる。 2014年には、この利益は7%であった34。PLNが獲得するであろう政府
補助金の平均利益率は、電力供給費用の約5%と推定する。これは、PSOの時系列データに基づいて算 定した。
上記分析に基づいた託送料の単価の根拠は以下の通りである。
Average cost of electricity production USD 50.00 /MWh
Assumed margin x 5%
Unit Wheeling income USD 2.50 /MWh
(3) PLNへの財務収益
PLNへの収益は以下のように算定される
(年間財務収益)= (年間送電量) x(託送単価)
表 7-9に、年間の託送料金収入を示す。託送料金は、本プロジェクトの送電線が稼働する2020年
より発生すると仮定する。
34 PLNの2014年年次報告書によると、PLNは政府から電力補助金を受領している。電力補助金は、各料金体系毎の(平
均販売価格-基本原価)の差額(マイナス)を基礎に算定される。この補助金はまた供給原価超過相当額のの利益も含 んでいる。2014年Approval Letter of Budget Performance Listによると、電力補助金は、電力供給費用に7%の利益を含ん でいる。
7-13
表 7-9 年間託送料金収入
Power Flow (MW)
Load Factor
(%)
Available Factor
(%)
Annual Transmitting Power Flow
(MWh)
Wheeling Price (US$/MWh)
Wheeling Charge (1,000US$)
Suralaya - Gandul 4,120 70% 35% 8,842,300 2.50 22,106
(出典: 調査団)
7.3.3 財務費用
財務費用は、本プロジェクトの建設費用によって示される。具体的には熟練工、非熟練工双方への 支払いを含む直接費や燃料費、建設機械費用、備品費用、補償費用、エンジニアリング費、管理費、
偶発費用等である。この分析では、建設期間中に金利費用と価格上昇は考慮しない。財務費用の詳細 は、本報告書の前述の章における技術分析を基礎としている。
本プロジェクトの建設費用総額に相当する財務費用は以下に示す通りである。
(1) 建設費用 (134.75百万ドル)
建設費用は、熟練工や非熟練工に対する直接労務費を含む建設に直接必要となった費用や、燃料費、
建設機械費用、備品費、補償費用、エンジニアリング費、管理費用等や本プロジェクトの技術面に関 連する偶発費が含まれる。
(2) 付加価値税や法人税 (0ドル)
本プロジェクトは、付加価値税や法人税は免除されると仮定する。
(3) 建設期間中の利息(0ドル)
建設期間中の利息は、この財務分析の評価対象には含まれない。表 7-10 において、上記検討結果 に基づいて算定したものを示す。
表 7-10 財務費用
(単位:千ドル)
Year 2017 2018 2019 2020 Total
Financial 3,234 56,776 69,350 5,390 134,750
7-14
7.3.4 プロジェクトライフと運営期間
経済分析の章で検討した通り、このプロジェクトの運営期間は、2017年から2020年の4年間の総工 事期間経過後30年とする。
7.3.5 財務評価の結果
本プロジェクトの財務評価は、上述した財務費用と財務収益による将来キャッシュフローを使用して実施し た。計算結果は、表 7-11と表 7-12に示す。
財務分析において、プロジェクトの正味現在価値は、資本コストを示す10%の割引率を使用して算定 している。正味現在価値は、資金の機会費用である相手国の財務収益を測定したものである。当該現在 価値がゼロより大きい場合、プロジェクトは財務的に実行可能性があることを示す。財務的内部収益率
(FIRR)は資本コストと対比してプロジェクトの実現可能性を示す主要な指標と考えられている。FIRR
は以下のように算定される。
� 𝐶𝑓𝑡
(1 +𝑅𝑓)𝑡=
𝑡=𝑇 𝑡=1
� 𝐵𝑓𝑡
(1 +𝑅𝑓)𝑡
𝑡=𝑇
𝑡=1
- T:プロジェクトライフの最終年度
- Cft: t年目における年間財務費用のキャッシュフロー
- Bft:年目における電力販売による年間利益のキャッシュフロー
- Rf:財務的内部収益率
表 7-11 財務評価の結果
Case FIRR (%) NPV (US$1000)
Base Case 14.31% 45,359
算定の結果、本プロジェクトの財務的内部収益率(FIRR)は、14.31%と算定された。
本プロジェクトのFIRRである14.31%はインドネシアの金融市場における一般商業銀行の 市場金利である12%よりも高い数値であり、このプロジェクトは財務的に実施可能であると結 論づけることができる。
ただし、FIRRが同国の市場金利を上回っていることが、直ちに民間企業による事業参入が可能であ ることを意味するものではない。
7-15
インドネシアに限らず、いずれの国においても送電線の建設、張替および持続的な維持管理による 安定した電力供給は、地域住民の生活および企業活動にとって必要不可欠であり、社会的な要請が極 めて高い事業分野である。
このような特有の性質を有する事業に対し、同国の近年の政策は、発電事業においてはIPPの参入 を奨励する一方、送電線事業に対してはPLNによる経営資源の重点的配分を企図している。
また、事業者側の課題として、一般に、初期の建設投資が巨額に上る一方、送電に係る託送料収入 等による投資回収は長期に亘ること、および自然災害、政治事業および資金調達等の多くのビジネス リスクを伴うことが挙げられる。
以上より、国民生活に必要不可欠な社会的インフラの整備ならびに長期安定的なエネルギー供給の 維持という観点からは、同国政府主導の公共投資による持続可能なプロジェクトの推進が必要である と考えられる。
7-16
表 7-12 FIRR算定結果
Financial Analysis
FIRR= 14.31%
(Units: USD'000)
Capital expenditure O&M Total (A) Wheeling Energy (MWh) Wheeling Income
(USD/MWh) Total (B)
2017 3,234 - 3,234 - - - (3,234) 2018 56,776 - 56,776 - - - (56,776) 2019 69,350 - 69,350 - - - (69,350) 1 2020 5,390 1,242 6,632 - - 22,106 15,474 2 2021 - 1,242 1,242 - - 22,106 20,864 3 2022 - 1,242 1,242 8,842,344 2.50 22,106 20,864 4 2023 - 1,242 1,242 8,842,344 2.50 22,106 20,864 5 2024 - 1,242 1,242 8,842,344 2.50 22,106 20,864 6 2025 - 1,242 1,242 8,842,344 2.50 22,106 20,864 7 2026 - 1,242 1,242 8,842,344 2.50 22,106 20,864 8 2027 - 1,242 1,242 8,842,344 2.50 22,106 20,864 9 2028 - 1,242 1,242 8,842,344 2.50 22,106 20,864 10 2029 - 1,242 1,242 8,842,344 2.50 22,106 20,864 11 2030 - 1,242 1,242 8,842,344 2.50 22,106 20,864 12 2031 - 1,242 1,242 8,842,344 2.50 22,106 20,864 13 2032 - 1,242 1,242 8,842,344 2.50 22,106 20,864 14 2033 - 1,242 1,242 8,842,344 2.50 22,106 20,864 15 2034 - 1,242 1,242 8,842,344 2.50 22,106 20,864 16 2035 - 1,242 1,242 8,842,344 2.50 22,106 20,864 17 2036 - 1,242 1,242 8,842,344 2.50 22,106 20,864 18 2037 - 1,242 1,242 8,842,344 2.50 22,106 20,864 19 2038 - 1,242 1,242 8,842,344 2.50 22,106 20,864 20 2039 - 1,242 1,242 8,842,344 2.50 22,106 20,864 21 2040 - 1,242 1,242 8,842,344 2.50 22,106 20,864 22 2041 - 1,242 1,242 8,842,344 2.50 22,106 20,864 23 2042 - 1,242 1,242 8,842,344 2.50 22,106 20,864 24 2043 - 1,242 1,242 8,842,344 2.50 22,106 20,864 25 2044 - 1,242 1,242 8,842,344 2.50 22,106 20,864 26 2045 - 1,242 1,242 8,842,344 2.50 22,106 20,864 27 2046 - 1,242 1,242 8,842,344 2.50 22,106 20,864 28 2047 - 1,242 1,242 8,842,344 2.50 22,106 20,864 29 2048 - 1,242 1,242 8,842,344 2.50 22,106 20,864 30 2049 - 1,242 1,242 8,842,344 2.50 22,106 20,864
Total: 172,010 663,176 491,166
Discount rate: 10%
NPV calculations NPV of Cost: 125,888 NPV of Benefit: 172,223
Benefit and Cost Ratio (B/C): 1.368
Benefit and Cost Difference (B-C): 46,335
Wheeling Energy (MWh): 8,842,344 MWh
Wheeling unit price (US$/MWh): 2.50 US$/MWh
O&M cost
For 500kV S/S: 340,000 US$/substation/year
For 500kV T/L: 1,000 US$/km/year
T/L length: 220 km
Operating years
Cost Revenue
Net Cashflow (B) - (A) Year
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7.3.6 財務的視点からの感応度分析
インドネシアにおける経済環境を起因とする建設資材や建設機器の価格変動は、このプロジェク トに影響を及ぼす可能性がある。また、財務収益もまた、このような不安定な状況の影響を考慮す る必要がある。このような状況を踏まえ、上記標準ケースに加え、合計8種類の感応度分析を実施し た。財務収益が5%もしくは10%減少した場合、財務費用が5%もしくは10%上昇した場合である。
感応度分析の結果を以下に示す。
表 7-13 FIRRの感応度分析の結果
費用
収益
標準ケース -5% -10%
業準ケース +5%
+10%
14.31%
13.57%
12.90%
13.54%
12.83%
12.18%
12.75%
12.07%
11.44%
上記表 7-13に示す通り、FIRRの数値は、価格が5%程度変動した場合においても、インドネシア における市場金利の数値を上回っている。よって、本プロジェクトは、送電線の張替工事により送 電能力が増加するため、財務的観点からも実行可能性があると結論づけることができる。
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