第 7 章 経済・財務的実行可能性
7.2 経済的分析
7-4
7-5
7.2.2 経済便益
"With and Without Principle"によると、本プロジェクトの経済便益は、代替案の建設費用として算定さ れる。代替案は、本プロジェクトで計画している送電容量の増加分に相当する、新しい500kVの送電線 を建設することである。送電線網を新しい送電線網を使って機能を向上させるか、又は張替により向上 させるかに対応が限られるため、これが唯一の代替案である。よって、経済便益は、張替により実現す る容量に相当する送電容量を持った新しい500kVの送電線を建設するコストと運営費用、管理費用に より構成される。しかしながら、送電線建設のための新しい土地を取得することは、送電線ルート沿 線が人口密集地域であるため非常に困難であり、調査チームは新しい送電線を建設することは、非常 に困難な手続きであると考えている。
このようなコストは、以下のように見積もった。
(1) 新しい500kVの送電線の建設費用
‘Suralaya – Gandul地区
電線の規模は決まっているため、同等程度の電線張替工事からおおよその見積金額が算定可能であ る。以下が、特定項目の詳細である。
-電圧 500 kV、送電線の数 2本、総延長 222 km
-電線サイズ・導体数 double circuit ACSR Zebra conductors (新送電線での総送電容量, 4,070 MW):
PLNの過去の資料によると、建設費用は116.3百万ドル
(2) 新しい500kV送電線敷設のための土地取得費用と用地使用権の保証費用
新しい送電線を建設するためには、新たな鉄塔建設のために追加で土地を取得する必要があり、また、
土地使用権の補償が必要になるため、プロジェクト費用の見積もりに際しこれらの費用も含める必要が ある。中央ジャワや西ジャワ地域で新しい500kVの送電線を建設する類似プロジェクトによれば、土地 取得費用や土地使用権の補償費用は343㎞の送電線で8.26百万ドルであった。
- 500kVの送電線を新しく敷設する場合の土地取得費用及び土地使用権に対する補償費用:
2.68百万ドル
(3) 変電所の更新
前回と同様、追加の送電線建設のために、変電所能力を増加させるために、関係する変電所を更新 する必要がある。
- Suralaya – Gandul間 (Suralaya,、Gandulおよび Balaraja の変電所): 24.2百万ドル
7-6 (4) 年間の運営・管理費用
新しい送電線と関連する変電所の建設に続き、年間の運営費用と管理費用も、関連する事業費や運営 費、管理費用もある程度増加する。この増加した費用も経済便益に含める。
他の国の類似案件によれば、送電線や関連する変電所能力に関する運営・管理の単位当たりの費用 は、以下のように推定される。
- 500 kV送電線: 1,000ドル/km/年 - 500 kV 変電所: 340,000ドル/1か所/年
変電所の運営・管理費用は、増設される変電設備のみを考慮する(結果として20%の増加を推定)。
結果、年間の運営・管理費用は以下のように推定される。
- Suralaya - Gandul 間: 1,000ドル/km/年/1ライン×110km×2 ライン=222,000ドル/年 -変電所: 340,000ドル/1か所/年×20%×3か所=204,000ドル/年
土地の新規取得や補償が必要となり、且つより長期間の調達期間が必要となる新しい送電線の建設 により、運営開始は、2021年となると仮定する。一方、更新を行う本プロジェクトの2020年の運用 開始予定となる。新たな送電線の建設費用は、表 7-3に示す。
表 7-3新たな送電線の建設費用 (代替案)
7.2.3 経済費用
経済費用は、本プロジェクトの建設費用を表す。より厳密には、直接必要になる建設費用であり、
熟練労働者、非熟練労働者双方に払う労務費、燃料費、建設機械の費用、備品費、補償費用、エンジ ニアリング費、管理費、偶発費用等を含む。本プロジェクトの現地通貨と外国通貨の区分は、現地の 経済政策委員会の費用見積もりに由来する。現地通貨は主に、労働費が含まれており、外国通貨の割 り当て部分は、外国製の機材の費用である。経済費用を算定するためのみ、付加価値税や法人税は除
(Unit: US$1000)
Items FC LC FC LC FC LC FC LC FC LC
A. Project Cost
1Suralaya - Gandul T/L incl. related substations 0 0 43,723 6,673 52,132 7,957 5,045 770 100,900 15,400 116,300
0 0 43,723 6,673 52,132 7,957 5,045 770 100,900 15,400 116,300
0 0 3,363 513 6,727 1,027 0 0 10,090 1,540 11,630
1,010 154 2,020 308 2,020 308 0 0 5,050 770 5,820
1,010 154 49,106 7,494 60,879 9,292 5,045 770 116,040 17,710 133,750
0 2,326 0 4,652 0 4,652 0 0 0 11,630 11,630
0 2,680 0 0 0 0 0 0 0 2,680 2,680
0 0 0 0 0 0 0 0 0 0 0
1,010 5,160 49,106 12,146 60,879 13,944 5,045 770 116,040 32,020 148,060
Year
G. Taxes (sales and custom duties) Grand Total
Total of A. Project Cost
C. Consulting Services B. Contingency
F. Land Acquisition & Compensation D. Total Eligble Portion (A+B+C) E. Administration Cost
Grand Total Total
2018 2019 2020 2021
7-7 外される。これらは政府予算に移転されるためである。
表 7-4において、経済費用総額を示す。これは、表7-2に示した年毎の電線張替工事費の明細に基
づき、工事費用、価格上昇、偶発費用、コンサルティング費用、管理費用、土地取得費用を集計し てまとめたものである。
表 7-4本プロジェクトの経済費用
(単位:千ドル)
Year 2017 2018 2019 2020 Total
Economic 3,234 56,776 69,350 5,390 134,750
なお、プロジェクトの経済評価を実施する際には、送電線や変電所の運営・管理費用は通常、経済 費用に含まれる。然しながら、このプロジェクトは既存の送電線の張替や変電所の機材の更新を目的と しているため、電線取替後も同じ数の機器の量が残り、運営・管理費は変化しない。これらのコストは 増加もしなければ減少もしないと推定される。言い換えれば、運営・管理費用は張替前後で変化がない ということである。よって、これらは経済費用には含まない。
7.2.4 プロジェクトライフと運営期間
経済費用や経済便益は、プロジェクトライフの全期間にわたり算定される。プロジェクトライフの 最初の年は、本プロジェクトの費用が最初に支払われた年であり31、最後の年は、プロジェクトで建 設された機器の運営・管理が終了した年である。
本プロジェクトで建設された送電線の運営期間は、2017年から2020年の4年間の総工事期間後、30 年と推定される。
31 このプロジェクトでは、最初の年は、コンサルティングサービスが開始した年としている。
7-8
7.2.5 経済評価の結果
本プロジェクトの費用便益評価は、前述した経済費用・経済便益に基づくキャッシュフロー分析を 用いて実施し、計算結果を表 7-5および表 7-6にて示す。
経済分析において、便益費用比率(B/C ratio)は、正味現在価値に換算された便益と費用の比較結果を 示す一方、便益と費用の差額(B-C)は、正味現在価値に換算された便益と費用の差額を示したものであ る。
経済費用 経済便益
本プロジェクト実施により発生する費用(張替 費用、関連する変電所の更新費用、建設に係る偶 発費用、コンサルタント費用、管理費用を含む)
このプロジェクトの代替案として新しい
500kV の送電線の建設費用 + 関連する変電所
の更新費用 + 土地取得費用 + 管理・運営費 用
経済的内部収率(EIRR)は、本プロジェクトの経済的実現可能性を決定する際の指標として使用さ れる。EIRRは以下の算式により得られる。
� 𝐶𝑡
(1 +𝑅)𝑡=
𝑡=𝑇 𝑡=1
� 𝐵𝑡
(1 +𝑅)𝑡
𝑡=𝑇 𝑡=1
- T:プロジェクトライフの最終年
- Ct:プロジェクトライフのt年目の経済コストのキャッシュフロー
- Bt: t年目の代替案から得られる経済便益
- R:経済的内部収益率
表7-5および7-6で示す通り、標準ケースにおける本プロジェクトのEIRRは12.58%と算定される。
7-9
表 7-5 EIRR算定結果
表 7-6費用便益評価結果
Case EIRR (%) B/C Ratio B-C (千ドル)
Base Case 12.58% 1.028 3,205
一般的に、世界銀行やアジア開発銀行などの国際金融機関は、発展途上国に対する資本の機会費用と して割引率を8%から12%の間に設定しており、意思決定の基準として10%を採用している。
上表で算定された EIRR12.58%は、インドネシアに対する推定された資本の機会費用としての割引 率である10%を超過しているため、本プロジェクトは経済的観点から実行可能性があると判断される 可能性がある。
Economic Analysis
EIRR= 12.58%
(Units: USD'000)
Capital expenditure O&M Total (A) Capital expenditure O&M Total (B)
2017 3,234 - 3,234 - - - (3,234) 2018 56,776 - 56,776 6,170 - 6,170 (50,606) 2019 69,350 - 69,350 61,252 - 61,252 (8,098) 1 2020 5,390 - 5,390 74,823 - 74,823 69,433 2 2021 - - - 5,815 426 6,241 6,241 3 2022 - - - - 426 426 426 4 2023 - - - - 426 426 426 5 2024 - - - - 426 426 426 6 2025 - - - - 426 426 426 7 2026 - - - - 426 426 426 8 2027 - - - - 426 426 426 9 2028 - - - - 426 426 426 10 2029 - - - - 426 426 426 11 2030 - - - - 426 426 426 12 2031 - - - - 426 426 426 13 2032 - - - - 426 426 426 14 2033 - - - - 426 426 426 15 2034 - - - - 426 426 426 16 2035 - - - - 426 426 426 17 2036 - - - - 426 426 426 18 2037 - - - - 426 426 426 19 2038 - - - - 426 426 426 20 2039 - - - - 426 426 426 21 2040 - - - - 426 426 426 22 2041 - - - - 426 426 426 23 2042 - - - - 426 426 426 24 2043 - - - - 426 426 426 25 2044 - - - - 426 426 426 26 2045 - - - - 426 426 426 27 2046 - - - - 426 426 426 28 2047 - - - - 426 426 426 29 2048 - - - - 426 426 426 30 2049 - - - - 426 426 426 Total: 134,750 - 134,750 148,060 12,354 160,414 25,664 Discount rate: 10%
NPV calculations NPV of Cost: 116,212 NPV of Benefit: 119,417
Benefit and Cost Ratio (B/C): 1.028
Benefit and Cost Difference (B-C): 3,205
O&M cost for alternative project
For 500kV S/S: 204,000 US$/year
For 500kV T/L: 222,000 US$/year
Operating
years Year Net Benefit
(B) - (A)
Cost - Reconductoring Project Benefit - New Transmission Line
7-10
7.2.6 経済的分析結果の感応度分析
インドネシアの経済状況により、建設資材や建設機器の値段、電力の販売・購入等の価格上昇が本プ ロジェクトに影響を及ぼすことが想定されるため、感応度分析を合計8種類のケースで実施する。具体 的には、標準ケースに加えて、経済費用が5%もしくは10%上昇した場合、経済便益が5%又は10%減 少した場合である。
表 7-7に感応度分析の結果を示す。
表 7-7 EIRRの感応度分析の結果
費用
便益
標準ケース -5% -10%
標準ケース +5%
+10%
12.58%
8.10%
4.52%
8.03%
4.35%
1.56%
4.17%
1.36 % -0.75 %
上表に記載している通り、費用便益両方が標準ケースであった場合、EIRRは12.58%となり、本プ ロジェクトは実行可能性があると考えられる。もし、標準ケースより便益の減少もしくは費用の増加 が5%発生した場合、EIRRは8%に低下する。
7-11