• 検索結果がありません。

事故電流問題の対策

ドキュメント内 (1) (ページ 58-77)

第 4 章 潮流分析 4.1 実施した調査

4.5 事故電流問題の対策

4-17

4-18 1. 事故電流レベル 現状維持の場合

(1)限流リアクトルの導入

変電所及び発電所の設備を現状 20のままとすることを前提とした場合に、事故電流発生時 に電流を一時的に制限する効果があるものとして、限流リアクトルを導入することが対策と して考えられる21

限流リアクトルを電気回路に直列に挿入すると、事故点から見たインピーダンス 22が増加 し、事故電流は小さくなる 23。一方、限流リアクトルに電流が流れると電圧降下が発生し、

運転電圧許容範囲の±5%を下回り、需要家設備の正常動作に支障を来す可能性が高まるため、

その場合通常は電圧降下対策として電圧を上昇させる機能を持つ電力用コンデンサを設置す る。そのため、限流リアクトルを導入する場合には、限流リアクトルの他に、電力用コンデ ンサ設置のための敷地が必要となる。

また、限流リアクトルは、事故電流の零点推移と呼ばれる別の問題を引き起こす可能性が ある。以下の図 4-11は、事故電流の波形例を示す。

図 4-11 遮断器を通過する電流の零点推移(イメージ)

事故電流

事故発生 零点推移継続時間 電流零点

遮断器は、交流電流の瞬時値が零になったときのみ、電流を遮断できる。 電流遮断のメカ

20 既存の設備のうち遮断器は、40kA50kAの規格が両方存在している。

21 導入実績としては、中国上海のYanghang変電所に、500kV限流リアクトルが201410月に設置されている。

22 電気回路におけるインピーダンスは、交流回路における電圧と電流の比である。 直流におけるオームの 法則の電気抵抗の概念を拡張し、交流に適用したものであり、単位としてはオーム(表記はΩ)が用 いられる。

23 インピーダンスが小さいほど、三相短絡事故電流は大きくなる。

(file zm1.pl4; x- var t) c:X0012A- BEG2A

0.00 0.05 0.10 0.15 0.20 0.25 [s] 0.30

- 2 0 2 4 6 8 10 12 14 [kA]

DC 成分の減衰

4-19

ニズムは、保護リレーにより事故を検出後、遮断器の駆動機構は遮断器の接点を開くと同時 に接点部分にガスを吹き付けることでプラズマ状態になっているアークの温度を下げ、電流 零点となった時点で消弧することで完了する。遮断器動作が完了した後は、ガス吹きつけの ための駆動も完了してしまっているため、この遮断器でアークを消弧することはない。もし 電流が零にならない状態で遮断器の接点が物理的に開いても、接点間にアークが存在し続け てしまい、遮断器接点の溶断や、遮断器に直列に接続している断路器等が熱的に損傷する可 能性がある。特に、取替品が海外製の場合には設備取替のために輸入するとなると数ヶ月必 要であり、停電の長期化に繋がるおそれがある。このため、零点推移が遮断器動作の前に解 消するように、零点推移継続時間は十分に短くなければならない。

事故電流は、交流成分と直流成分から成る。直流成分は、系統のインピーダンスで決まる 時定数で、指数関数的に減衰する。この時定数 は、以下の式で表される。

τ = L/R,

L (H24): 事故点から見たインダクタンス

R (ohm): 事故点から見た抵抗

もしもこの時定数が十分短ければ、零点推移継続時間も短くなり、遮断器動作前にこの零 点推移状況が解消される。

限流リアクトルもそれ自体時定数を持っており、通常系統の時定数よりも遥かに長い。も しも限流リアクトルが系統に挿入された場合、直流成分の減衰時定数は長くなり、その結果 零点推移問題が発生するリスクが増えることになる。限流リアクトルを採用する場合には、

零点推移の解析を実施する必要がある。

24 ヘンリー、インダクタンスの単位

4-20

(2)系統分割

また、変電所及び発電所の設備を現状のままとすることを前提とした場合に、遮断機を開放 することで系統分割を行い、全ての発電機から事故点への事故電流の流入を抑制することが 対策の一つとして考えられる。次の図4-12から図 4-14に示すように、系統分割はいくつか のパターンに分類される。

図 4-12 ループ系統のイメージ

 系統分割による系統構成変更イメージ

(出典: 調査団により作成)

図 4-13系統分割による放射状系統のイメージ 図 4-14系統分割による独立系統25 のイメージ

(出典: 調査団により作成) (出典: 調査団により作成)

25 なお、図4-14に示される系統分断はそれほど一般的ではない。なぜなら2つの系統のそれぞれで需給バランス を取る必要があるため、特に発電所の経済運用の面で非効率的になるためである。

ループから放射状への系統構成変更

2系統に

分割

4-21

 変電所母線分割

過負荷の発生を抑制すると考えられる変電所内の遮断機を常時開放して母線分割をするこ とでも、事故電流対策につながる。図 4-15 は Gandul変電所における母線(Bus)分割のイ メージを図示26している。Gandul変電所の幾つかの遮断器をスイッチオフ(開放、下図白色)

することで、母線Aと母線Bは分割される。

図 4-15 Gandul変電所での母線分割イメージ

(出典: 調査団により作成)

26 青網掛けの四角は遮断器がスイッチオン状態になっている遮断器を、白抜きの四角は遮断器がスイッチ オフ状態になっている遮断器を表す。

4-22

また、図 4-16はGandul-Lengkong間送電線のうちの1回線(Lengkong S/S)で事故が発生 した条件での事故電流の流れのイメージを示したものである。母線Aと母線Bは分割されて いるため、事故電流は、変圧器#1及び母線Bからのみ流れ込み、母線A からは流れ込まな い。結果として、母線分割した場合に変電所に流入する事故電流は、全ての遮断器がスイッ チオンとなっている通常状態での事故電流よりも小さくなると考えられる。

図 4-16 Gandul変電所で母線分割する条件での事故電流の流れのイメージ

(出典: 調査団により作成)

4-23 2.事故電流レベル格上げ(63 kA)の場合

(3) 事故電流レベル格上げ(63 kA)27および系統分割

表 4-7 に挙げた変電所及び発電所の設備を63kAに格上げする必要がある。下図は、事故 電流を減らすためにKembangan-Gandul間送電線を開放した事故電流解析の一例である。

図 4-17 Kembangan-Gandul間の送電線を開放することでループから放射状に系統構成を 変更

(出典: PSS/Eによる事故電流解析結果)

図 4-9と図4-17を比較すると、Kembangan-Gandul間の送電線を開放する系統分割によ

り、KembanganとGandulの両変電所での500kV母線事故電流が減っている。しかし、Balaraja

変電所での事故電流はなおまだ63kA以上であった。Balaraja変電所での事故電流を減らすた めには、図 4-18に示すようなBalaraja変電所の母線分割が有効である。

27 IEC基準に事故電流レベルとして80kAが規定されているものの、どの系統にも500kV系統に80kAの遮

断器はまだ設置されていないため、本調査では80kAへの格上げは取り上げていない。

Suralaya (Lama)

#1-7 3,400MA Suralaya Baru

#8 625MA

Open

Kembangan

Gandul Substation A

4-24

 Balaraja変電所での母線分割

図 4-18に示されるように、幾つかの遮断器をスイッチオフすることで、Balaraja変電所の 母線Aと母線Bを分割することができる。青網掛けの四角は遮断器がスイッチオン状態にな っている遮断器を、白抜きの四角は遮断器がスイッチオフ状態になっている遮断器を表す。

図 4-18 Balaraja変電所での母線分割

(出典: 調査団により作成)

4-25

(4) 事故電流レベル格上げ(63 kA)、系統分割及び系統増強

ある一定の系統信頼度を確保しつつ500kV系統を含む系統分割を実施することにより事故 電流を63kA未満に減少させるために、事故電流レベル格上げ(63 kA)に加えて、より高 い電圧の送電システムを導入するか、または直流電線を導入することが考えられる。

図 4-19は、対策案(4)の例として、系統を分割してかつ 1,100kV 送電システムを追加し、

ある一定の系統信頼度を確保した電力系統を示す。

図 4-19系統分割するために高い電圧を導入するイメージ

(出典: 調査団により作成)

4-26

対策案(4)の別の例として、系統を分割してかつ高圧直流(HVDC28)送電システムを追加し、

ある一定の信頼度を確保した電力系統を示す。

図 4-20系統分割するために高電圧直流送電システムを導入するイメージ

HVDCシステムは、基本的に潮流(≒電流)を一定に保つ制御を行うため、事故電流を増加 させることはない。

このほか、バック・トゥ・バックステーション29による系統分割等が考えられる。

28 HVDC: High Voltage Direct Current, 高電圧直流送電線と交流-直流変換器等から構成される。

29 バック・トゥ・バックステーションは、交流から直流に変換する整流器と直流から交流に変換する逆変換 器が同じ場所にある直流連系システムである。

4-27

(5) 事故電流レベル格上げ(63 kA)、系統分割及び高インピーダンス変圧器の設置

63 kA への事故電流レベル格上げと系統分割に加えて、高インピーダンス変圧器を導入す

ることが考えられる。高インピーダンス変圧器により、限流リアクトルと同じ原理で事故 電流を低減できる。高インピーダンスは、限流リアクトルよりも、追加の設置スペースを 必要としないという点で優れている。

以上に示すとおり、事故電流対策には複数の選択肢があり、いずれも事故電流増加対策と して効果的な方法となり得る。前述した想定される事故電流対策とそれらに対する評価およ び課題について、表 4-8および表4-9にて示す。

1.事故電流レベル50kVを維持する方法

表 4-8 事故電流増加に対して候補となる対策の評価および課題 その1

対応方法 評価 課題

(1)限流リア クトル

 系統のインピーダンスを増加させ ることにより事故電流の増加を防 ぐと共に、格上げに比べ低コスト で対応可能なことから、短期的に は有効な対策となりうる。

 他国での導入実績がある。

 限流リアクトルが系統に挿入され た場合、直流成分の減衰時定数の伸 長による零点推移問題が発生し、事 故電流を遮断できなくなった結果、

変電所設備等に重篤な被害をもた らすリスクがある。また、系統安定 度が低下する可能性がある。

 電圧降下対策として併置する電力 用コンデンサ用地が新たに必要と なる。

(2)系統分割  現状の電力系統を前提として、一 部の遮断機を開放することによ り比較的容易に分割できるため、

追加のコスト無しで、又は最小の コストで、事故点への事故電流の 流入を抑制することが可能であ る。

 ループから放射状系統への系統 構成の変更や変電所内の母線分 割等、事故電流の発生状況に応じ た複数の対応策が存在する。

 多数の箇所で系統分割が必要であ り、系統信頼度が低下することによ り、停電リスクが大幅に増加する。

 実際の適用に当たっては、更なる系 統解析を行い、系統安定度等に与え る影響も含め、事前に実施可能性を 検討する必要がある。

(出典: 調査団により作成)

ドキュメント内 (1) (ページ 58-77)