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第3章 中国農村部の高齢者に対する村幹部の支援実態および役割・機能 ―インタビュー

第3節 調査結果

逐語から作成した130のラベル(表3-2)は,{1.システムの問題},{2.制度の解決策},

{3.制度の困難性},{4.地域の問題},{5.地域の解決策},{6.地域の困難性},{7.虐 待の問題},{8.家庭問題の解決策},{9.家族の困難性},{10.社会の冷たい目},{11.

党員からの補助},{12.使命・やりがい},{13.制度への期待},{14.地域への期待},{15.

家族への期待}という15の「島」40に形成された.

1.村幹部の語りに関する全体図解

村幹部の語りに関する全体図解は図3-1に示したとおりである.村幹部は農村部の高齢 者問題に対して{システムの問題},{地域の問題},{虐待の問題}があると意識し,それ らに対応するために,{制度の解決策},{地域の解決策},{家庭問題の解決策}を講じ,{制 度の困難性},{地域の困難性},{家族の困難性}を抱えている.

一方で村幹部は{使命・やりがい}を得て,長期目標として{制度への期待},{地域へ の期待},{家族への期待}をしている.{使命・やりがい}はそれぞれの解決策に肯定的な 影響を与えている.

困難性は解決策を阻害し,{システムの問題},{地域の問題},{虐待の問題}を起こす.

{社会の冷たい目}は{虐待の問題}を抑制し,村幹部の{家庭問題の解決策}を支持し ている.党員は村幹部の解決策の実行を補助している.

40 「グループ編成を何段階まで進めたらよいか.これについては,最終の束(一匹狼も一束 と同格として扱う)が数束以内であること,いくら多くても10束以内であること」(川喜

田1986:154)というKJ法のルールがある.しかしながら,本論では15の小さい島が形成

され,さらに統合すれば7の大きな島に統合される.つまり,1,4,7を{Ⅰ高齢者の生活 問題}とし,2,5,8を{Ⅱ村幹部の解決策}とし,3,6,9を{Ⅲ困難性}とし,10を

{Ⅳ社会の冷たい目}とし,11を{Ⅴ党員からの補助}とし,12を{Ⅵ使命・やりが い},13,14,15を{Ⅶ今後の期待}とし,7つの大きな「島」に統合した.本論では15 島の結果に基づいて研究を進んでいく.

100

村幹蹄は'f‑主主高齢者に対して.拳せな老雄生活ができるようと期待している。@・・・

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101 2.各島の叙述

{1.システムの問題}

{1.システムの問題}は図3-2に示したとおりである.〖農村部高齢者の日常的な生活 を支えているシステムが不十分である〗ことは,<農村部高齢者の生活は苦しい>こと,

高齢者が経済的な困難を抱えていること,医療が不便であること,≪特定の高齢者は日常 的な世話の担い手がいない≫こと,<村の道路未舗装のため,交通が不便である>こと,

である.

経済的な困難について,現在の農村部では新型農村社会養老保険が実施されているが,

<高齢者は基礎養老金がもらえても生活費が足りない>.高齢者は元気なうちに農作業を 行っているが,<農業は収入にならないため,高齢者は経済的な困難を抱えている>.企 業や政府が農民の土地を徴用する場合,補償金を支払うが,<契約どおりに補償金を支払 わないため,土地徴用された高齢者は経済的な困難を抱えている>.農村部における特困 戸では,<子女が親不孝のため,特困戸の老親は経済的な困難を抱えている>.

医療の不便について,新型農村合作医療保険の改正にともない,裸足医者(日本語訳,

資格のない医者)や個人医療所,衛生室での点滴が禁止されており,村の衛生室が合併さ れたため,特に慢性病のある高齢者にとっては医療が不便である.外出できない高齢者に 対して訪問診療サービスがあるが,訪問診療の費用が高い.

≪特定の高齢者は日常的な世話の担い手がいない≫ことについて,農村部の<「空巣老 人」は老老介護が一般的である>.彼らの子女が都市へ出稼ぎにいったことと,彼らは都 市の子女と同居を望まないため,「空巣老人」の日常的な世話の担い手がいない.また,<

配偶者が亡くなった高齢者は日常的な世話をしてもらえない>ことと,<末期患者老親を 看取る子女がいない>こと,<孤独な高齢者は経済的問題だけではなく,日常的な扶養が 必要である>などの例がある.

102

{2.制度の解決策}

{2.制度の解決策}は図 3-3 に示したとおりである.{1.システムの問題}に対して,

〖村幹部は鎮の指示に従い,社会保障制度を実施している〗.まず,新型農村社会養老保 険について,村幹部は高齢者に新型農村社会養老保険の説明・申請を行ったり,村の新型 農村社会養老保険の実施状況を鎮政府に上申したり,新型農村社会養老保険に加入してい ない村民に加入させるように働きかけたりする.

社会救助について,村幹部は経済的困難な家庭を農村最低生活保障制度の対象と判断し

103

たり,政府の救済金を特困戸の現状に応じて分配したり,特困戸を敬老院(鎮民政所の所 管する高齢者入所施設)に入所させたり,年末・緊急時・葬式の際,特困戸に村の慰問金 を渡したりする.

<村の衛生室は高齢者の日常的な健康管理を指導している>ことと,<村幹部は高齢者 に健康診断の情報を知らせている>ことのように≪村(幹部)は高齢者の健康を支えてい る≫.

村幹部は国家に貢献した高齢者に村の慰問金を渡し,老党員を見舞う時も慰問金を渡す.

{3.制度の困難性}

{3.制度の困難性}は図3-4に示したとおりである.村幹部は{2.制度の解決策}を 講じた後,≪農村最低生活保障制度や農村五保供養制度の実施が難しい≫と感じている.

近年,農村最低生活保障制度の申請・審査が厳しくなっており,また,<娘や養子が息子 と同様に老親を扶養するという農村最低生活保障制度の基準の実施が難しい>.また,<

分散扶養の五保老人は村での生活が大変であるが,敬老院への入所は望まない>.