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第 5 章 総合的考察

第 1 節 本論の結論

ここでは,本論の研究目的にそって本論の結論を論じる.具体的には,①各時期における 村幹部の主な仕事内容と役割,②農村部高齢者が直面する課題に対する村幹部の支援実態,

③支援実態からみた村幹部の役割・機能,④村幹部の機能に影響を与える要因,の4点につ いてである.

文献研究を通して,村幹部の郷村政権期,政社合一期,郷政村治期の3つの時期における 主な仕事内容と役割を確認した.まず,郷村政権期の土地改革段階において村幹部は土地分 配を主な仕事内容として実施し,「政府の代理人」と「村民の代理人」の役割を果たしてい た.郷村政権期の農業合作化運動段階において村幹部は農民の生産活動の管理を主な仕事 内容として実施し,「政府の代理人」と「村民の代理人」の役割を担っていたことが確認さ れた.

政社合一期において村幹部は生産大隊内のすべてのことを管理し,生産隊内の生産活動 の管理と労働報酬の分配を主な仕事内容として実施し,「政府代理人」と「村の管理人」の 役割を果していた.

郷政村治期の村民委員会の創設段階において村幹部は社会治安の維持を主な仕事内容と して実施し,「政府の代理人」と「村民の代理人」の役割を果していた.また,村民委員会 の普及段階において村幹部は農業税費の徴収,計画生育政策の実施,村経済の発展を主な仕 事内容として実施し,「政府の代理人」と「村民の代理人」と「私利を謀る代理人」の役割 を果たしていたことが確認された.さらに,現在に至る村民委員会の展開段階において村幹 部は社会保障制度に関する対応,土地徴用の実施,生活課題に関する対応を主な仕事内容と して実施することが求められており,村民委員会の普及段階に引き続き「政府の代理人」と

「村民の代理人」と「私利を謀る代理人」の役割を果すと予測される.

農村部高齢者が直面する課題に対する村幹部の支援実態を図6-1に示す.

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農村部高齢者が直面する課題(図6-1の左部分)について,文献研究を通して(第1章), 農村部における新型農村社会養老保険,新型農村合作医療保険,農村五保供養制度,農村最 低生活保障制度,農村医療救助,農村部高齢者福祉などの社会保障制度実施上の課題および 社会保障諸制度上に定められる村幹部への要請を確認した.また,農村部高齢者が直面する 家族扶養の課題,社会参加の課題,子女の出稼ぎによる特殊な課題,失地農民の課題等の生 活課題および生活課題に関連する諸制度上に定められる村幹部への要請も確認した.

村幹部による農村部高齢者の多様な課題に対する支援実態(図6-1の右部分)について,

調査研究(第3,4章)を通して,村幹部は社会保障の対応,家庭紛争の調停,環境・組織 の整備,緊急時の対応,土地紛争の調停という5つの支援を行っていることが明らかになっ た.

これらの支援について農村部高齢者の社会保障制度実施上の課題の解決に着目すると,

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農村部高齢者が直面している社会保障制度実施上の課題の一部を解決していることが確認 できたが,一部の課題は依然として残されている.また,社会保障諸制度上に定められる村 幹部への要請の一部には応えることができていたが,一部の要請については応えきれてい なかった.具体的には以下の6点が明らかになった.

第1に,村幹部による社会保障の対応によって,新型農村社会養老保険制度実施上の課題 については認識の低さや高齢者の不信感等が緩和されていたが,保障機能の弱さや財源不 足等の課題が残されている.制度上の要請については実施状況の公開と村民からの監督に よって応えていたが,保険料の拠出には応えられていなかった.

第 2 に,新型農村合作医療保険制度実施上の課題については村民の認識の低さや健康管 理の不足等が緩和されていたが,保障機能の弱さや資源の不足等の課題が残されている.制 度上の要請については財源拠出に応えられていなかった.

第 3 に,農村五保供養制度実施上の課題については日常生活上の世話の軽視や扶養方式 に関する共通認識の欠如等が緩和されていたが,対象認定の難しさや五保内容の未遂行等 の課題が残されている.制度上の要請については申請の受理・初回審査や分散扶養五保老人 の日常生活上の世話等に応えていたが,拠出金の支給には応えられていなかった.

第 4 に,農村最低生活保障制度実施上の課題については認識の低さや諸制度との棲み分 けが無い等の課題が緩和されていたが,対象認定の難しさや保障水準の低さ等の課題が残 されている.制度上の要請については申請の受理・初回審査や郷・鎮政府への協力・報告に 応えていた.

第5に,農村医療救助制度実施上の課題については認識の低さが緩和されていたが,対象 認定の厳しさや利用率の低さ等の課題が残されている.制度上の要請については申請の受 理・書類確認や郷・鎮政府への協力・報告に応えていた.

第6に,農村部高齢者福祉の課題は解決されず,村に高齢者施設が極めて少ないことや利 用の選択肢が限られている課題が依然として残されている.関連する制度上の要請につい ては高齢者活動場の設置と高齢者組織の設置に応えていたが,養老財源の補助や高齢者施 設の設置等に応えられていなかった.

また,農村部高齢者の生活課題の解決に着目すると,農村部高齢者が直面している生活課 題の一部を解決していることが確認できたが,一部の課題は依然として残されている.また,

関連する諸制度上に定められる村幹部への要請の一部には応えることができていたが,一 部の要請については応えきれていなかった.具体的には以下の4点を明らかにした.

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第1に,農村部高齢者が直面している家族扶養の課題については,村幹部による家庭紛争 の調停と緊急時の対応の一部としての高齢者虐待の調停によって,日常生活上の世話や精 神的な慰藉,高齢者虐待等の課題がある程度解決されたが,経済的扶養に関する課題が解決 できていなかった.また,関連する諸制度上の要請については高齢者合法権益の擁護や家庭 暴力・虐待への制止・調停等に応えていたが,高齢者ニーズの把握や社区サービスの発展等 に応えられていなかった.

第2に,農村部高齢者が直面している社会参加の課題については,村幹部による環境・組 織の整備によって解決されず,活動の指導・企画が少ないことや社会参加の軽視等の課題が 依然として残されている.関連する諸制度上の要請については組織づくりと活動場の設置 に応えていたが,体育活動の開催と教育活動の推進に応えられていなかった.

第3に,農村部高齢者が直面している子女の出稼ぎによる特殊な課題については,村幹部 による緊急時の対応によって,農作業の重い負担と村内治安の悪化等が緩和されていたが,

留守児童の教育・しつけと留守児童の日常の重い支出の課題が残されている.

第4に,農村部高齢者が直面している失地農民の課題については,村幹部による土地紛争 の調停によって,余暇時間の無駄な過ごし方が緩和されていたが,生存難・家族関係の悪化 や社会保障体制の未整備,土地補償等の課題が残されている.関連する諸制度上の要請につ いては(土地徴用の補償金)使用・分配案の決定や運営・管理の監査等に応えていたが,費 用の横領・流用禁止に応えられていなかった.

社会保障制度実施上の課題と生活課題の一部が解決できないあるいは制度の要請に応え られない現象が起きた理由は,村幹部に十分な権限がないことと,制度の要請が村幹部の能 力を超えているからであると考えられる.

村幹部は先行文献で触れられていなかった課題に対しても支援を行っている(図 6-1 の 赤い部分)ことが明らかになった.村幹部は,社会保障の対応として社会優恤制度の実施,

環境・組織の整備として法律の宣伝,環境の改善,村の経済発展,税費徴収,緊急時の対応 として自然災害後の安否確認と高齢者急病時の連絡,土地紛争の調停として村民どうしの 間で起こった畑境界の紛争調停と村民・村の間で起こった自留地の紛争調停,などの支援を 行っていた.

村幹部による農村部高齢者に対する5つの支援は制度レベル,地域レベル,家族レベルの 3つのレベルに整理できる.まず,村幹部は制度レベルでは社会保障の対応と土地紛争の調 停の一部としての土地徴用の調停を行っていた.また,地域レベルでは土地紛争の調停の一