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第 2 章 中国農村部における村幹部の歴史的変遷と仕事および役割

第 5 節 村幹部の動機づけおよびその影響要因

中国のデータベース「中国知網」を用いて,「村幹部」と「動機」をキーワードに検索し た結果,論文69本(うち学術論文27本,博士論文8本,修士論文34本),そのうちタイ トルに「村幹部」と「動機」が入っているものは3本であった.その内容をみると,村幹

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部の選挙の動機に関する論文2本,仕事の動機に関する論文1本であった.村幹部の動機 に関連する博士論文は甫永民(2008)があるが,これは現在,王征兵・甫永民(2009)の 著作として出版されている.

また,「村幹部」と「動力」(日本語訳,原動力)をキーワードに検索した結果,学術論 文73本,そのうちタイトルに「村幹部」と「動力」が入っているものは5本であった.そ の内容をみると,村幹部の仕事動機づけに関連する論文3本であった.同じキーワードで 検索し,博士論文は14本,そのうちタイトルに入っているものはなく,関連するものは郭 斌(2013)であり,学術論文の郭ら(2011)の内容が重なっている.以上の検索結果から,

これからは賀ら(2006),余ら(2008),王ら(2009)(第3節参照),郭(2013),張ら(2014)

を取り上げる.

賀ら(2006)は,村幹部の仕事の動機づけには社会的収益と経済的収益があり,社会的 収益とは「村幹部は役職によって得られる収益であり,具体的に,村内での声望・権威・

面子および個人の政治的抱負などが含まれる」ものとしている(賀ら2006:71).そのうち,

個人の政治的抱負(公務員へ昇格)はなかなか実現できないため,社会的収益は主に声望 と面子を指している.経済的収益とは,村幹部が役職によって一定の経済収入を得ること であり,正当な収入(手当補助)とグレー収入が含まれているとしている.

余ら(2008)は珠江三角州 9都市 3557郷鎮103村の93名の村幹部に調査を行い,村幹 部の動機づけと個人属性の差異を検討した.余ら(2008)は村幹部の動機づけとして①権 力動機〔a 政府からの支持,b 政府からの監督〕,②達成動機〔c趣味として村幹部を担当 する,d再任する〕,③帰属動機〔e村民からの支持,f村規からの制約〕の3因子を抽出 した.調査の結果では,権力動機が高くなる要因として男性,党員,書記,加齢が示され,

男性,非党員,主任,30-40歳の村幹部は達成動機が高いことがわかった.さらに,女性,

非党員,主任,加齢に伴い帰属動機が高くなることがわかった.

郭(2013)は陝西省合陽県10郷鎮110名の村幹部に質問紙調査を実施した.村幹部の動 機づけとして①声望・面子〔a村内での社会的声望を高める,b自分および家族の声望を高 める,c 村内での面子を保つ,d村内での社会的地位を高める〕,②達成動機〔e 村民のた めに仕事を行い,一定の達成感を得る,f 自分が村幹部を担当することができることを証 明する,g 趣味として村幹部を担当する〕,③金銭動機〔h 一定の手当補助を得る,i 一定

35 珠江三角州9都市は,広州,深圳,佛山,東莞,中山,珠海,恵州,江門,肇慶を指す.

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の在職消費36を得る,jその他の経済的収益(グレー収入)を得る〕,④権力動機〔k政府 からの支持を得る,l再任する,m政治的発展および学習訓練の機会を得る〕,⑤帰属動機

〔n村民から認められ,村への帰属感を得る,o 村民からの支持・擁護を得る,p 村民によ る監督・世論がある〕の5因子が抽出された.調査の結果では,地域経済の発展状況につ いて,経済が発展している地域における村幹部の動機づけは権力動機―帰属動機―達成動 機の順で強いが,経済の発展が遅れている地域における村幹部の動機づけは帰属動機―権 力動機―達成動機の順で強いことがわかった.性別について,男性は権力動機と達成動機 が高いが,女性は帰属動機が高いことがわかった.年齢について,加齢に伴い帰属動機が 高くなるが,加齢による権力動機が低下させていること,45歳を境として帰属動機は権力 動機より高くなること,達成動機は帰属動機と権力動機より低いことがわかった.役職(書 記,主任,その他)について,書記は権力動機が一番高いこと,その他の村幹部は達成動 機が一番高いこと,書記は主任より帰属動機が高いことがわかった.

張ら(2014)は村幹部の動機づけとして,①経済的収益動機〔a家庭収入を増やす,b家 庭の生活状況を改善する,c手当補助を得る,d老後の保障を得る,e 家族の保障を得る,

f快適な退職後の生活を望む,g他の収入を得る,h村の主要な資源を支配する,i村内の 発言権・決定権をもつ〕,②昇格動機〔j公務員に昇格する,k 政府に昇格する,l 政府の 役員と接して昇格の助けになる〕,③宗族37動機〔m宗族から村幹部を担当することを望ま れる,n宗族の代表として村幹部を担当しなければならない,o 宗族の利益を守ることがで きる〕,④貢献動機〔p 村民に貢献したい,q村民から能力を認めて,村幹部の担当を望む,

r 党員として村民に貢献すべきである,s 自らの力量によって村民を領導し共に裕福にな る〕,⑤名誉動機〔t村内での社会的地位を高める,u 宗族・家族の面子を保つ,v自分の 誇りになる,w多くの政府役員と接することができる〕,という5因子を抽出した.広東省 東莞と梅州の村幹部の調査結果から,男性は女性より名誉動機が高いこと,経済が発展し ていない地域の村幹部は経済が発展している地域の村幹部より昇格動機が高いこと,社会 的経験による宗族動機は農戸―企業の社長―国有企業の社員―前任村幹部の高い順となる こと,経験年数7-9年→4-6年→1-3年の順で村幹部は名誉動機が高くなること,動機づけ の5因子は貢献動機―昇格動機―経済的利益動機―宗族動機―名誉動機の順で強いことが わかった.

36 在職消費とは,手当以外の収益(グレー収入)を得ることである.

37 宗族とは,中国人社会によく見られる父系親族組織である(陳2014:138).

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