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第 5 章 総合的考察

第 1 節 各時期における村幹部の主な仕事内容と役割

郷村政権期,政社合一期,郷政村治期という3つの時期における村幹部の主な仕事内容と 役割は表5-1に示した.各時期の社会変動,村の管理体制,土地所有制度などに基づいた村 幹部の主な仕事内容と,学界で代表的な村幹部の「二重役割」を用いて各時期の村幹部の役 割を考察した.

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1.郷村政権期における村幹部の主な仕事内容と役割

郷村政権期(1949-1957年)の土地改革段階(1949-1953年)における村の管理体制について,

行政組織である行政村と自治組織である農民協会が当時の農村社会を管理していた.土地 の所有制度について,土地改革の実施によって土地の所有権が地主から農民に変わった.当 時の農民は土地の所有権と経営権のすべてを有していた.この段階の村幹部は地主の土地 を農民に分配するような土地分配を中心的な仕事内容として担っていた(第2章).「二重役 割」からみると,土地改革段階における村幹部は「政府の代理人」と「村民の代理人」の役 割を果たしていた(第2章).

郷村政権期の農業合作化運動段階(1949-1957年)における村の管理体制について,行政組 織である行政村と経済的組織である合作社が当時の農村社会を管理していた.土地の所有 制度について,土地の所有権は農民が有していたが,土地の経営権は農業合作化運動によっ て集団に移行した.この段階の村幹部は合作社の生産活動の管理を中心的な仕事内容とし て担っていた(第2章).一方,村幹部による農民の生活課題への対応は文献から読み取れな かった.それは当時,農民の生産と生活が切り離されており,生産活動への管理は村幹部に

時 期 段 階 社会変動 村の管理体制 土地所有制 村幹部の主な仕事内容 二重役割 土地改革段階

(1949-1953年) 土地改革

農民協会 (自治組織)

  と 行政村 (行政組織)

土地の所有権と経営

権がすべて農民所有 土地分配

農業合作化運動段階

(1949-1957年) 農業合作化運動

合作社 (経済的組織)

 と 行政村 (行政組織)

*土地所有権は農民が 有していた

*土地経営権は農民か ら集団に移行した

生産の管理と経営

政社合一期 (1958-1982年)

人民公社

(1958-1982年) 人民公社

生産大隊 (村レベルの行政組織)

 と 生産隊 (組レベルの行政組織)

土地の所有権と経営 権はすべて集団が有 していた

*生産大隊は大隊内の工 業,農業,商業,教育,

民兵を一体化して管理し ていた

*生産隊は隊内の生産活 動の実施,社員に報酬の 分配を実施していた

「政府の代理人」

「村の管理人」

村民委員会の創設段階

(1983-1987年) *土地請負制度の実施

*「村民委員会組織法」

*社会治安の維持

「政府の代理人」

「村民の代理人」

村民委員会の普及段階 (1988-1998年)

*農業税費の徴収

*計画生育政策の実施

*改革開放

*義務教育

*農業税費の徴収

*計画生育政策の実施

*村経済の発展

*村務の実施状況の公開

「政府の代理人」

「村民の代理人」

「私利を謀る代理人」

村民委員会の展開段階 (1999年-現在)

*農業税費の廃止

*新型農村合作医療保険

*農村最低生活保障

*新型農村社会養老保険

*高齢問題の深刻化

*孤独問題

*失地農民の問題

*家族扶養の問題 など

*社会保障制度の実施

*土地徴用の実施

*村幹部の経済責任の監

*家族扶養問題の調停

*高齢問題への対応

「政府の代理人」

「村民の代理人」

「私利を謀る代理人」

表5-1 各時期における村幹部の主な仕事内容と役割

郷村政権期 (1949-1957年)

村民委員会 (自治組織)

*土地の所有権は集団 が有する

*土地の経営権は農民 が有する

郷政村治期 (1983-現在)

「政府の代理人」

「村民の代理人」

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よって行われていたが,生活課題は家族と近隣の互助によって対応されていたと考えられ る.「二重役割」からみると,農業合作化運動段階における村幹部は「政府の代理人」と「村 民の代理人」の役割を果していた(第2章).

2.政社合一期における村幹部の主な仕事内容と役割

政社合一期(1958-1982 年)における村の管理体制について,(郷・鎮レベルの行政組織で ある人民公社と)村レベルの行政組織である生産大隊と組レベルの行政組織である生産隊 が農村社会を管理していた.土地の所有制について,土地の所有権と経営権はすべて集団が 有していた.この時期の村幹部の主な仕事内容について,生産大隊は大隊内の工業・農業・

商業・教育・民兵を一体化して管理していた.つまり生産大隊は大隊内のすべてことを管理 していたといえる.また,生産隊は隊内の生産活動の実施と労働報酬の分配を中心的に実施 していた(第2章).当時,農民は集団として組織され,生産隊の一員として,生産と生活の すべてが集団に統合されていた.そのため,生産大隊・生産隊は農民の生産活動の管理のみ ならず,農民の生活課題に対応していたと考えられる.「二重役割」からみると,政社合一 期における村幹部は「政府の代理人」と「村の管理人」の役割を果していた(第2章).

3.郷政村治期における村幹部の主な仕事内容と役割

郷政村治期(1983-現在)における村の管理体制について,自治組織である村民委員会が 農村社会を管理している.土地の所有制度について,1978年から土地請負制度の実施によ って土地の経営権は集団から農民に移行したが,土地の所有権は相変わらず集団が有して いる(第2章).土地所有制の変化によって,農民の生産と生活が切り離されるようにな り,生産活動は農民に任せられているため,村幹部による農民の生産活動の管理機能は政 社合一期(人民公社)に比べて弱くなっていると考えられる.さまざまな法律(「組織法」

「憲法」など)で村幹部は自治機能を果たすべきであると定められているため,村民の生 活課題に対応することが村幹部の主な仕事内容だと考えられる.

郷政村治期は「村民委員会組織法」の改正によって村民委員会の創設段階,村民委員会の 普及段階,村民委員会の展開段階,の3段階に分けられる.各段階の社会変動にともない村 幹部の主な仕事内容と役割は変化している.

まず,村民委員会の創設段階(1983-1987年)では,人民公社が解体された直後に農村社会 の秩序が混乱した背景の下で設置された村民委員会は,社会治安の維持を主な仕事内容と して担っていた.「二重役割」からみると,村民委員会の創設段階における村幹部は「政府

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の代理人」と「村民の代理人」の役割を果していた(第2章).

また,村民委員会の普及段階(1988-1998年)において,土地請負制度の実施に伴って農民 には国家への農業税費の納付が義務付けられ,また,計画生育政策の実施,さらに,改革開 放の実施によって計画経済体制から市場経済体制に転換することが求められていた.この 背景の下で,村幹部は農業税費の徴収,計画生育政策(「一人っ子政策」とも呼ばれる)の 実施,村経済の発展を主な仕事内容として実施していた.農業税費の徴収によって村幹部は 金銭との接触機会が増えたため,村幹部には村務の実施状況の公開が求められるようにな った.「二重役割」からみると,村民委員会の普及段階における村幹部は「政府の代理人」

と「村民の代理人」と「私利を謀る代理人」の役割を果していた(第2章).

さらに,村民委員会の展開段階(1999-現在)において,2006年の農業税費の廃止によって 村幹部の農業税費徴収の業務がなくなった.2015 年の計画生育政策の改正によって村幹部 の「一人っ子政策」の実施業務が少なくなってきた.

一方,2003年から新型農村合作医療保険,2007年から農村最低生活保障,2009年から新 型農村社会養老保険など社会保障制度の実施によって,村幹部には社会保障制度の対応が 求められるようになった(第1章).また,農村出稼ぎ人口の増加とともに「空巣老人」の増 加(序章)や留守児童の問題などの課題(第 1章),家族扶養の課題,高齢者の孤独問題(第1 章),農村部の都市化の進行による土地徴用の課題が多発している(第1章).このような村 民が抱えている生活課題に対応する役割が村幹部に強く求められている.これについては 本章の第2節と第3節で詳しく検討していく.

村民委員会の展開段階において,「二重役割」からみると,村幹部は「政府の代理人」と

「村民の代理人」と「私利を謀る代理人」の役割を果している(第2章).村幹部はどのよう にこれらの役割を果たしているかが本章の第4節で詳しく検討していく.