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第 4 章 研究Ⅱ 組織的努力がモチベーションの持続性に及ぼす影響に関する研究

② 調査の概要

上記の仮説 5~8 に対し、日本国内でアンケート調査を行い、データを収集し、定 量的仮説の検証を試みた。具体的には、調査はマクロミル社を通じ、日本在住の会 社員に対しインターネットアンケートを実施した。なお、研究Ⅰの仕事場面帰属要 因モデルとその規定要因に関する研究との整合性を配慮し、調査対象は、研究Ⅰと 同じく、一般企業に所属し、日常業務において様々な達成場面に遭遇することが多 く、且つ直属の上司からの影響も大きいと考えられる部長未満のホワイトカラー従 業員とした。なお、本研究でのホワイトカラー従業員とは、事務職、販売職、営業 職などの製造に直接関わらない業務に従事する従業員のみならず、製造業の製造管 理・生産管理などの業務管理者及び開発職も該当する。なお、ランダム性を保つた め、性別や年齢、出身地等の割合については一切調節しなかった。調査は2014年12 月 22日から同 23日にかけて実施した。最終的に収集されたデータは 518名であり、

有効回収率は62.2%であった。

また、全回答者 518 名のうち、71.4%に当たる 370 名が男性で、28.6%に当たる 148名が女性である。平均年齢は43.31歳であり(Min=20歳、Max=65歳)、

平均勤続年数は 13.47年である。また、教育水準については、高校・専門学校卒

が30.7%(159名)、短大卒が5%(26名)、大学卒が53.5%(277名)、大学院卒

が 10%(52名)である。なお、全ての回答者の職業は正規雇用のホワイトカラー従

業員であり、そのうち事務系が 45.8%(N=237)、技術系が 36.3%(N=188)、そ

の他が18%(N=93)である。役職について、同51.7%に当たる268名が一般社員で、

26.3%にあたる 126名が係長・主任クラスで、22%にあたる 114名が課長・次長クラ

スである。58.11%の回答者(318 名)が転勤経験を有し、(転勤する経験のない者 を含む)平均転職回数は1.42回である。

140 4×3 Between-subjects Factorial Design

研究Ⅱの仮説(仮説 5~8)を検証するために、Boichuk 、 Bolander 、 Hall 、

Ahearne 、 Zahn 、 & Nieves(2014)のフィードバック方式及びリーダーシップスタ

イルが新規雇用のセールスマンのパフォーマンス志向性に与える影響の研究に用い られる手法を参考にし、それと同じく場面想定法を使用し、4(失敗原因帰属:努力

&スキル要因 vs. 性格要因 vs. 組織的人的要因 vs. 外的非人的要因)×3(フィードバ ック方式:失敗回避志向 vs. 失敗奨励志向 vs. フィードバックなし)の無作為割り当 ての被験者間要因変動モデルをデザインした。

具体的な操作手順は下記通りである。

ⅰ.4つの失敗原因帰属場面の提示

ここではまず 4つの失敗原因への帰属場面のうち、1つがランダムで回答者に表示 される。

場面の作成については、研究Ⅰと同じく、回答者に自分がある大手電気メーカ ーの営業マンであると想像してもらい、そして、それぞれの 4 つの失敗原因に帰属 させるような誘導的な描写(ここでは区分するため、太字で表示するが、実際のア ンケート調査では同じフォントを使用した)を加えた。なお、第 2 段落が明確な失 敗を定義する文章であり、4つの帰属場面において共通である。

a.努力&スキル帰属

あなたは今、某大手電気メーカーの営業マンであると想定してくださ い。入社して一年を経とうとしていますが、いまだに得意先に対し、マ ニュアル通りの対応しかできません。それは、努力が足りないからだと 自分でも思っていますが、どうやって努力すればいいかはいまいち分か らないとあなたは感じています。

そんなあなたは、7~9月期の売上目標を達成できませんでした。しか も、全員の売上高がランキング形式で部門内に公表され、あなたの順位 は全体の下位25%に入っていました。

141 b.性格要因帰属

c.組織的人的要因帰属

d.外的非人的要因帰属

ⅱ.原因帰属の操作確認

なたは今、某大手電気メーカーの営業マンであると想定してくださ い。あなたは、今年で入社2年目になり、いままでずっと同じ部門に所 属しています。しかし内気なあなたは、自分が営業と言う仕事に向いてな いのではないかと感じ、悩んでいる日々が続いています。

そんなあなたは、7~9月期の売上目標を達成できませんでした。しか も、全員の売上高がランキング形式で部門内に公表され、あなたの順位 は全体の下位25%に入っていました。

あなたは今、某大手電気メーカーの営業マンであると想定してくださ い。あなたは、自分がとても努力しているものの、上司はそれをきちん と評価をしてくれませんでした。また、会社も自分に対し、十分なチャ ンスを提供してくれなかったと感じています。

そんなあなたは、7~9月期の売上目標を達成できませんでした。し かも、全員の売上高がランキング形式で部門内に公表され、あなたの順 位は全体の下位25%に入っていました。

あなたは今、某大手電気メーカーの営業マンであると想定してくださ い。今年に入ってから市場全体の不況が継続しており、契約を取るのが 以前に比べて難しくなっています。

そんな中であなたは、7~9月期の売上目標を達成できませんでし た。しかも、全員の売上高がランキング形式で部門内に公表され、あな たの順位は全体の下位25%に入っていました。

142 1つの失敗原因帰属場面を提示した後、回答者がどれぐらい「誘導」されたかを確 認するため、その失敗が提示された原因とどの程度関係あるかを 6 段階で評価させ た。質問例は下記の通りである。

(努力&スキル要因帰属の操作確認質問)

上記の質問に対し、3点以上の評価を示した回答者は、「誘導成功」だと判断し、

該当回答者の結果データを計上し分析に用いる。一方、3点以下の評価を示した回答 者は「誘導失敗」だと判断し、仮説検証には用いない。上記の努力&スキル要因帰属 の操作確認質問の例で説明すると、操作確認質問の得点が 3 点もしくはそれ以下と いうことは、失敗の原因が努力不足だと連想させる文章があるにもかかわらず、本 人の性格や価値観等の様々な要素の影響により、結局、努力&スキル要因に比べ、他 の要因がより大切だと認識されている。したがって、特定の失敗原因への帰属を前 提条件とする研究Ⅱでは、操作確認をパスできなかったデータを排除する必要があ る。なお、1人の回答者に対し、ランダムで2つのシチュエーションが提示される。

その結果、努力&スキル帰属の場合 n=158、性格的要因帰属の場合 n=167、組織的 人的要因帰属の場合n=135、そして最後に外的非人的要因帰属の場合n=158という ように、サンプルの収集ができた。

ⅲ.3つのフィードバック・スタイルの提示

次に、3つのフィードバック・スタイルからランダムに1種類が表示される。

前述したように、本研究では失敗回避志向的なフィードバック、失敗奨励志向的 なフィードバック及びにフィードバックなしの 3 つの状況での失敗原因帰属とモチ ベーションの持続性の相関関係の変化を検討する。また、フィードバックを細分化 し、失敗回避志向及び失敗奨励志向の効果を比較する研究が欧米ではよく見られる が、日本では殆ど前例はない。例えば、Keith&Frese(2008)は、失敗奨励志向の中

では、あなたがこの営業マンだったとして、売上目標を達成できなか った原因は、「努力不足」とどの程度関係があると思いますか。

(「1.全く関係ない」~「6.非常に関係している」の6段階で評価し てください。)

【売上目標が達成できなかった原因は、私の努力が足りなかったこと と...】

143 核となる発想を下記のように指摘した。フィードバックの提供者(即ち上司)が部 下が失敗する際に「失敗をすればするほど、学べるものも多くなる!」あるいは

「失敗した?よかった!それであなたはきっと何かに気づいたでしょ!」といった ような会話を繰り返し強調することが大事であると述べられた。ただし、上記のよ うな誇張的で感情を煽るような表現を日本語に訳し、そのまま通用するとは考えに くい。文化の差異への配慮が必要であろう。

したがって、本研究では Boichuk ら(2014)の開発した失敗奨励志向的なフィー ドバク(error encourangement feedback) 及び失敗回避志向的なフィードバック

(error avoidance feedback)の場面提示文章を日本語に訳した後、日本人の言語習慣 に合わせ、重複した文章を削除し、またストレートな表現を曖昧化するなどの作業 を行い、日本語ネイティブのホワイトカラー会社員にチェックしてもらい、下記の2 つのフィードバック・スタイルの場面を作成した。

a. 失敗回避志向的なフィードバック(error avoidance feedback)

b. 失敗奨励志向的なフィードバック(error encourangement feedback)

この結果に対し、上司はあなたにこう言いました。「顧客の意思を間 違って読み取ったことが、あなたが売上目標を達成できなかった主な原 因です。だから、今のあなたにとっては、いかにそういったミスを回避 し、顧客ニーズを正確に読み取ることが大切です。いいですか、来月か らは同様のミスを減らすことを心がけてください。そうすることで、あ なたはきっといい営業になれると思います。」

この結果に対し、上司はあなたにこう言いました。「顧客の意思を間 違って読み取ったことが、あなたが売上目標達成できなかった主な原因 です。しかし、あまり心配はいりません。むしろ今のあなたにとって、

こう言うミスを経験することがいいことです。だから、次からもミスをす ることを怖れないでください。それであなたはきっといい営業になれる と思います。」

ドキュメント内 失敗のモチベーション に対する影響について (ページ 140-148)