第 3 章 研究Ⅰ 仕事場面の帰属要因モデル及びその規定要因に関する研究
④ 規定要因が帰属行動に及ぼす影響の検証
各変数の平均値、標準偏差及び変数間の相関は表3-7のとおりである。
努力&スキル要因帰属は教育水準が勤続年数、コスモポリタン志向、ローカル志 向並びに自己効力感との間の有意な相関関係が認められた。具体的には、まず、コ スモポリタン志向及びローカル志向のどちらも、努力&スキル帰属との間に、かな り強い正の相関が確認された。そのことから、後に述べるように、ローカル志向と コスモポリタン志向とは必ずしも二律背反的な関係ではなく、ローカル志向が高い 値を示すとコスモポリタン志向も高い値を示すという正相関の関係、もしくは無相 関の関係にある可能性も存在することを示したと言えよう。ただし、努力&スキル 要因帰属の場合においては、ローカル志向に比べ、コスモポリタン志向のほうの影 響力がやや大きいと言えよう。なお、上記 2 者ほど強くはないが、勤続年数(年齢)
及び自己効力感も努力&スキル帰属との間にも正の相関関係が見られた。一方、性 別、学歴、自尊感情と努力&スキル要因帰属との間に有意な相関関係は見られなか った。
性格的要因帰属は転職経験、コスモポリタン志向、自尊感情、自己効力感並びに 仕事達成不安との間に有意な相関関係が認められた。具体的に、まず、転職経験、
自尊感情及び自己効力感のそれぞれについて、性格的要因帰属との間の負の相関関 係が確認された。一方、コスモポリタン志向並びに仕事達成不安と性格的要因帰属 との間の正の相関も確認された。なお、他の帰属要因と比べるとさほど差は見られ ないものの、上記 5 つの変数のうち、コスモポリタン志向が最も強い影響力を持っ ているといえよう。他に、興味深いことに、4つの帰属要因のうち、ローカル志向と の有意な相関を示さなかったのは、性格的要因帰属のみであった。こちらに関して はまた後の節で詳しく分析する予定である。
組織的人的要因帰属は教育水準(大学院卒の場合)、コスモポリタン志向、ロー カル志向について、仕事達成不安との間に有意な相関関係が認められた。具体的に は、まず、仕事達成不安と組織的人的要因帰属の間に、かなりに強い正の相関関係 が見られた。また、仕事達成不安ほどではないものの、教育水準、コスモポリタン 志向及びローカル志向も、組織的人的要因帰属との間にほぼ同じ程度の正の相関を 示した。なお、教育水準に関しては、学歴大学院卒の場合のみ、性格的要因に帰属 する傾向が見られた。
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表3-7 変数の記述統計及び相関分析
N=310
性別(ダミー変数):0=女性、1=男性
平均値 標準偏差 1 2 3 4 5 6 7 8 9 10 11 12 13 14 15
1.性別 0.50 0.50
2.教育水準:短大卒 0.08 0.28 -0.23**
3.教育水準:大学卒 0.46 0.50 0.14* -0.28**
4.教育水準:大学院卒 0.06 0.23 0.11 -0.08 -0.23**
5.年齢 37.10 7.52 0.35** -0.05 -0.08 0.02
6.勤続年数 10.47 7.54 0.26** 0.03 -0.13* 0.03 0.64**
7.転職経験 1.31 1.78 0.06 0.04 -0.23** -0.08 0.21** -0.31**
9.コスモポリタン志向 3.12 0.82 -0.11* 0.09 -0.05 -0.05 0.01 0.10 -0.05
10.ローカル志向 3.60 0.98 -0.24** 0.08 -0.03 -0.03 0.02 -0.03 -0.02 0.67**
11.自尊心 3.53 0.69 -0.08 0.10 -0.04 -0.02 -0.16** -0.08 -0.03 0.22** 0.31**
12.自己効力感 3.41 0.82 -0.11 0.11 0.02 -0.04 -0.09 -0.03 -0.06 0.44** 0.59** 0.62**
13.不安 3.66 0.76 -0.07 -0.03 -0.02 -0.01 0.22** 0.07 0.05 0.23** 0.13* -0.43** -0.15**
14.努力とスキル要因帰属 2.79 0.81 0.10 -0.10 0.07 -0.03 0.14* 0.12* -0.04 0.42** 0.22** -0.03 0.12* 0.11
15.性格的要因帰属 3.12 0.92 0.00 -0.10 0.01 0.01 -0.01 0.06 -0.17** 0.21** -0.05 -0.17** -0.15** 0.20** 0.57**
16.組織的人的要因帰属 3.62 0.79 0.01 -0.03 -0.02 0.14* 0.01 0.04 -0.03 0.15** 0.12* -0.05 0.08 0.23** 0.26** 0.31**
17.非人的要因帰属 3.47 0.75 -0.05 -0.09 -0.04 0.10 -0.05 -0.05 0.01 0.13* 0.12* -0.16** -0.01 0.35** 0.25** 0.37** 0.56**
101 非人的要因帰属に関しては、コスモポリタン志向、ローカル志向、自尊感情並び に仕事達成不安との間に有意な相関関係が認められた。具体的に、まず達成不安は 依然として非人的要因帰属との間にも強い正の相関を示した。それに対し、自尊感 情はかなり強い負の相関を示したが、その影響力は仕事達成不安ほどではなかった。
また、上記の 2 つの変数と比較すると相対的に弱いものの、コスモポリタン志向及 びローカル志向もそれぞれ、非人的要因帰属との間に、有意な負の相関関係が見ら れた。
なお、4つの帰属要因の間にも有意な相関関係が見られた。特に注意を払わなけれ ばならないのが、努力&スキル要因帰属と性格的要因帰属との間(r=0.57、p< 0.01)、並びに組織的人的要因帰属と非人的要因帰属との間(r=0.56、p<0.01)に、
かなり強い正の相関関係が見られたことである。そのため、本研究では、4因子構造 の妥当性について改めて検討する必要があろう。それに関しては後の章で詳しく分 析する。
また、他の変数間にも幾つか有意な相関関係が確認された。
性別については、短大卒及びコスモポリタン志向、ローカル志向と負の相関、大 学卒及び勤続年数(年齢)と正の相関が有意であった。つまり、女性のほうは短大 卒が多く、そしてややローカル志向寄りであり、それに対し、全体の勤続年数は男 性のほうが長い傾向にあると言えよう。
教育水準について、学部卒の場合のみ、勤続年数並びに転職経験との間に有意な 負の相関が見られた。したがって、教育水準の上昇につれ、転職に対する態度が慎 重になる可能性が十分考えられる。なお、大学院卒の場合に上述した負の相関関係 が確認できなかった理由として、大学院卒の回答者が全体の 5.8%に当たる 18 名し かおらず、サンプル数の少なさが検証の結果に影響を及ぼしたことが挙げられる。
年齢と勤続年数との間には非常に強い正の相関が確認された(r=0.64、p<0.01)。
また、年齢と転職経験との間にかなり強い正の相関が存在するのに対し、勤続年数 と転職経験との間により強い負の相関関係を示した。これは、容易に理解できる結 果であろう。ただ、興味深いことに、年齢と自尊感情の間に負の相関(r=-0.16、p
<0.01)そして仕事達成不安との間に正の相関(r=0.22、p<0.01)が確認されたの に対し、勤続年数はこの 2 つの変数とは無相関であった。換言すると、年齢の増加 につれ、日本一般企業のホワイトカラー従業員は、自尊感情が減少する傾向にある 一方、仕事達成不安が増加する傾向にある。それに対し、勤続年数の積み重ねは、
自尊感情の醸成にも仕事達成不安の解消にも寄与しない。
102 そして、前述したように、コスモポリタン志向及びローカル志向の関係性につい て、先行研究では反比例、正比例並びに無相関の 3 つの可能性が存在するとしてい るが、本調査の結果では両者の間に非常に強い正の相関関係を示された(r=0.69、p
<0.01)。他方、他の諸変数のうち、自尊感情、自己効力感及び仕事達成不安との間 に、両変数とも有意な相関関係を示した。ただし、コスモポリタン志向が相対的に 仕事達成不安との間に強い相関関係を持ち、それに対しローカル志向が相対的に自 己効力感との間に強い相関関係を持っている。
最後に、①自尊感情と自己効力感の間に正の相関、②自尊感情と仕事達成不安の 間に負の相関、③自己効力感と仕事達成不安の間の負の相関関係の 3 点もそれぞれ 確認された。
103 努力&スキル要因帰属を従属変数とした重回帰分析の結果
努力&スキル要因帰属に各変数が与える影響を明らかにするために、努力&スキル 要因帰属を従属変数に重回帰分析を行った。なお、コントロール変数として、年齢、
勤続年数、教育水準(ダミー変数処理済み)、転職経験及び自己効力感を投入して いる。重回帰分析の結果は、表3-8 で示した通りである。
モデル 1 では、コントロール変数のみを独立変数として投入した。その結果、自 己効力感のみ、さほど強くはないが、努力&スキル要因帰属との間に有意な正の相 関を示した(β=0.14 、p<0.05)。また、モデル1は5%有意である。
モデル2では、性別に関する仮説 1-1の検証を行った。具体的には、コントロール 変数に加え、性別(ダミー変数)を投入した。その結果、モデル 1 で有意であった 自己効力感は依然として有意な正の相関を示した(β=0.14、p<0.05)。しかし、性 別と従属変数の間に有意な相関関係は見られなかった。したがって、仮説 1-1「ビジ ネス達成場面では、男性が比較的に自らの失敗を努力要因に帰属する」は否定され た。
モデル 3 では、コスモポリタン志向に関する仮説 4 の検証を行った。具体的には、
モデル 2 の変数を加え、コスモポリタン志向及びローカル志向の 2 つの変数を追加 投入した。その結果、モデル 2 まで有意であった自己効力感は有意でなくなった。
その代り、コスモポリタン志向と努力&スキル要因帰属の間に、かなり強い正の相 関を示した(β=0.49 、p<0.01)。つまり、コスモポリタン志向が強いほど、個人が 自らの失敗の原因を努力&スキルに帰属する傾向にある。なお、モデル2と比較する と、R2乗が上昇し、決定係数も1%有意であることから、仮説4「ビジネス場面では、
従業員のコスモポリタン志向が強いほど、自らの失敗を努力&スキル要因に帰属す る傾向にある」は肯定された。
モデル4とモデル5では、仮説 3-3、自尊感情と仕事達成不安の交差効果を検証し た。具体的には、まずモデル 4 では、上記の変数以外に、自尊感情および仕事達成 不安を投入した。その結果、コスモポリタン志向ほど強くはないものの、自尊感情 と努力&スキル要因帰属の間にも有意な正の相関が見られた(β=0.15、p<0.05)。
つまり、仕事達成不安が強いほど、個人が失敗の理由を努力&スキル要因に帰属す る傾向にあるが、その影響力は、コスモポリタン志向と比較すると弱い。一方、仕 事達成不安と努力スキル要因帰属の間には、有意な相関関係を示さなかった。そし て、モデル 5 では、上記の変数以外自尊感情×仕事達成不安の交差項を追加投入し た。仮説 3-3では、高自尊感情×低仕事達成不安の組み合わせが努力&スキル帰属に