4. 新認定事業所制度に関する対応案の検討
4.3 新認定事業所制度に関する対応案の検討のまとめ
4章における実施内容では、「高圧ガス保安規制のスマート化に関する委員会」を設置し、
平成27年12月から翌年2月にかけて3回に渡る委員会を開催し、新しい認定事業所制度 に関して活発なディスカッションを行った。
議論の冒頭では、認定事業所制度が目指すべき方向性として、「事業所において事故がな くなること」などの方針が確認された。
具体的な自主保安認定制度の内容については、委員会で提示された事務局の骨子案に対し て、特に企業から、「インセンティブの魅力が少ない」「検査周期や検査手法に関する自主保 安の裁量を増やしてほしい」といったインセンティブに関する強い要望が出された。
また保安レベル維持の観点から認定要件とインセンティブの対応関係に関して保安レベ ルが低下していないかどうかの担保を求める意見や、新技術の活用によるメリットの計量化 に対する公的な支援を求める意見もあった。
リスクアセスメントの方法や考え方については、リスクベースドアプローチやALARP原 則の適用などに則ったリスクベースの考え方を自主保安認定制度に盛り込むことを求める 意見が多く聞かれた。また、リスクアセスメントにおいて、定量的方法と定性的方法は相補 的な位置づけとなること、リスクアセッサーのスキルレベルの重要性、自主保安認定取得事 業所の情報公開などの重要性が指摘された。
これら3回の委員会の議論を踏まえて、事務局としては下記のようなコンセプトを提案し、
これらを要件化することによる認定事業所制度による保安力向上の姿として、図 4-1 に示 すような論点の全体像を描画した。
①事業所の主体的な自主保安力の向上を促す制度
②保安力向上に資するノウハウの社会的普及を促進する制度
③社会全体の保安力向上をリードする企業を奨励する制度
これら3回の委員会における意見交換をもとに、経済産業省高圧ガス保安室において新認 定事業所制度に関する検討がなされ、最終的に、a.リスクアセスメント、b.教育・訓練、c.
新技術の活用、d.社外の知見の活用、e.適切に運転期間等を評価できる体制、などを要件と することが提案された。特にe.については、本調査における各関係機関からの意見が考慮さ れたものである。
平成28年3月9日に開催された「第10回高圧ガス小委員会」では、本業務の「高圧ガス 保安規制のスマート化に関する委員会」で議論された図 4-2、図 4-3、表 4-3、表 4-4、表 4-5 に示すような具体的な新認定事業所制度のインセンティブと要件を含む新認定事業所制度 の基本的な考え方が承認された。
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図 4-1 認定事業所制度による保安力向上の姿
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図 4-2 新認定事業所制度の考え方
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図 4-3 新認定事業所制度の要件の全体像
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表 4-3 スーパー認定事業所の要件
○リスクアセスメント
項目 評価の視点 詳細確認事項
(これと同等の措置を行っている場合は、満たされるものとする)
高 度 な 人 材の確保
○ 多 様 な 立 場 か ら の関与
・保安管理組織、設備管理組織、運転管理組織のそれぞれか ら参加していること
○有資格者が参加 ・自社内に資格制度を構築すること、外部の資格制度を活用 すること又はこれと同等の取組を行っていること
高 度 な リ スク抽出
○非定常時の作業、
工程、運転等を含 め た リ ス ク ア セ スメントの実施
・非定常時の作業、工程、運転等を含めたリスクアセスメン トを主要な設備に対して実施していること
○ 新 た な 危 険 源 特 定のため、適切な 見なおし
・危険源の抽出は、適切に定期的に見直しを行うこと
・リスクアセスメントの見直しの際に、新たな有資格者を加 えたりするなど、リスク抽出の工夫がなされている
○ 設 備 変 更 に 係 る 成 熟 し た 評 価 の 実施
・変更管理におけるリスクアセスメントについて、内部組織 による第三者のチェックを行っていること
高 度 な リ ス ク 低 減 対策
○ 達 成 す べ き レ ベ ル ま で 適 切 に 低 減
・達成すべきリスク基準を明確にし、必要なリスク低減対策 を適切に実施していること
・結果を他部署とも共有し、各部署が適切なリスク低減対策 を実施していること
・リスク低減対策について不足した点がないこと
○IoT・ビッグデータ等の活用
項目 評価の視点 詳細確認事項
(これと同等の措置を行っている場合は、満たされるものとする)
新 技 術 の 導入
○IoT、ビッグデー タ 等 の 新 技 術 の 導入
・新技術に関して、積極的に検証又は導入していること
・導入した技術については、その効果を適切に検証し、改善 の取り組みを行っていること
・主要施設において、施設・設備保全に関する分野と運転に 関する分野のそれぞれについて①ビッグデータの収集、② ビッグデータの分析・未来予測、③ヒトに気づきを与え、
ミスを防ぐの観点から新技術の検証・導入を行っており、
新技術の検証・導入計画を定めていること
※6ヶ月程度以上の検証結果を審査
・外部からのモニターを受けていること
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○教育・訓練
項目 評価の視点 詳細確認事項
(これと同等の措置を行っている場合は、満たされるものとする)
高 度 な 緊 急 時 対 応 訓練
○ よ り 実 践 的 な 訓 練
・消防技能訓練等の緊急事態を想定した実践的な訓練を行っ ていること
・「防消火の指針・考え方」「想定リスクシナリオ」を保有し ており、これに基づいた適切な訓練を実施していること 高 度 な リ
ス ク ア セ ス メ ン ト 教育
○ リ ス ク ア セ ス メ ントの事例紹・実 践
・リスクアセスメント教育を適切に実施していること
・リスクアセスメントの基礎講座、事例紹介、実践講座等を とおして、事業所内で正しくリスクアセスメントを実施で きる人材を育成していること
高 度 な エ ン ジ ニ ア 育成・技術 伝承
○問題解決教育・事 故 事 例 教 育 等 に より、若手エンジ ニアを教育・資格 制度
・熟練従業員の引退や人事異動等に伴う保安力の低下を防ぐ ため、エンジニア育成・技術伝承等の適切な教育を実施し ていること
・問題解決教育、事故事例教育等を実施していること
・若手エンジニアを育成していること
・技術伝承について、熟練従業員が責任をもって取り組む姿 勢を明確にしていること(資格制度など)。
○ 個 人 毎 の 育 成 計 画 に よ る 技 術 伝 承
・個人の必要能力に応じた育成計画を作成するなど、必要に 応じた教育を実施していること教育していること
高 度 な 体 感教育
○実習プラント、危 険体感等の実施
・実習プラント、危険体感等を実施していること
○社外の知見の活用
項目 評価の視点 詳細確認事項
(これと同等の措置を行っている場合は、満たされるものとする)
社 外 の 知 見の活用
○ 安 全 工 学 会 等 第 三 者 機 関 の 保 安 力評価を受け、そ の結果を公表
○ 教 育 の 機 会 の 提 供、新技術等につ い て 良 好 事 例 と し て 他 事 業 所 に
• 安全工学会等の第三者機関の評価を受け、助言内容を踏ま えて、適切に改善策を実施し、その結果(対応状況等)を 公表していること
• リスクアセスメントに関しても評価を受けていること
• 教育の機会の提供、新技術等について良好事例として他業 所に展開するなど、自らが模範となり取り組んでいること
40 展開するなど、自
ら が 模 範 と な り 取 り 組 ん で い る こと
○適切に運転期間、検査手法を評価できる体制の整備
項目 評価の視点 詳細確認事項
(これと同等の措置を行っている場合は、満たされるものとする)
保 安 検 査 体制
○ 適 切 に 運 転 期 間 等 を 評 価 で き る 体制
<静機器(容器、配管等)に関して>
・KHK/PAJ/JPCA S0851 のFFS組織又はこれと同等な組織の 設置
・設定した検査手法、検査期間の評価者、承認者が(一社)
日本高圧力技術協会(HPI)の設備等リスクマネジメント技 術者資格又はこれと同等な資格を有する など
<動機器(圧縮機、ポンプなど)に関して>
・運転期間に応じて適切に予備機を配置している、有資格者
(機械保全技能士、JPI 設備維持管理士など)がいる など
<電気計装に関して>
・有資格者(電気主任技術者、(公社)石油学会(JPI)の設 備維持管理士など)がいるなど、適切に寿命評価を行える 体制になっていること など
・その他、保安防災設備(安全装置、インターロックなど)、
導管など保安検査対象となる上記以外の設備全般につい て、運転期間に応じた適切な改善が図られていること、有 資格者(技術士、など)がいること など
※具体的にどのような評価を実施したのかについては審査の 中で確認
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表 4-4 スーパー認定事業所(三つ星)のインセンティブ
インセンティブ 事業者のメリット 必要な要件
連続運転
※認定事業所と 同じ
○通常の事業所は法令に基づき、1 年毎に運転を停止し、保安検査を 実施
○運転停止に伴って損失が発生す るが、
連続運転が可能となることで、本 損失が発生しなくなる
・自主検査を実施できる検査組織を 設置すること
・検査組織以外の組織により検査管 理を行うこと
・機器の寿命管理が適切に実施でき ること
・開放検査の周期等を適切に設定で きること など
連続運転期間を 8年を限度に自 由に設定
( 認 定 事 業 所 は 、連続運 転 期 間を認定 時 に設定)
※認定事業所の 連 続運転は 原 則4年に制限
※8年間を限度 に、連続運転期 間 を 自 由 に 設 定 ・ 変 更 で き る。
○8年未満の場合、連続運転期間の 変更に係る審査等の対応が不要 となる
○具体的には、現行は、認められた 運転期間を変更する場合は再度 審査及び大臣の認定が必要であ るが、例えば、2年間連続運転の 予定だったものが途中でその期 間を延ばす場合、審査及び大臣の 認定はいらなくなる
・適切に運転期間を設定できる体制 を整備すること
(責任が明確化されている、資格所 有者が検査計画等の最終承認者に なっているなど、自社内で確実に 実 施 で き る 体 制 が 整 備 さ れ て い る、リスクベースドメンテナンス を実施できる者がいること等)
→<静機器(容器、配管等)に関し て>
・KHK/PAJ/JPCA S0851 のFFS組織 又はこれと同等な組織の設置
・設定した検査手法、検査期間の評 価者、承認者が HPI 設備等リスク マネジメント技術者資格又はこれ と同等な資格を有する など
<動機器(圧縮機、ポンプなど)に 関して>
・運転期間に応じて適切に予備機を 配置している、有資格者(機械保 全技能士、JPI 設備維持管理士な ど)がいる、など
<電気計装に関して>