本調査では、高圧ガス保安規制において、従来からの保安水準の確保・向上、重大事故の 撲滅といった目標は維持しつつ、これらの変化に迅速・柔軟かつ効果的・効率的に対応でき るような「賢い(スマート)」規制へと進化させていくこと、そしてその一環として、自主 保安認定事業所制度などの制度の充実等に向け、必要な課題の抽出と対応案の検討を行った。
まず初めに、現行の認定事業所制度の現状を把握するため、認定事業所と非認定事業所の 事故発生件数推移等の比較等を行った。その結果、下記3点が示唆された(3章)。
認定事業所と非認定事業所では共に全体の事故件数は増加傾向にある。
認定事業所と非認定事業所では共に軽微な事故が大多数を占めている。
現認定事業所では重篤な事故に関する事故発生確率が認定取得後に低減している。
並行して実施した国内の主要関係業界の会員企業等へのヒアリングでは、高度な保安対策 の実現に向け、インセンティブとなる優遇措置や現行の認定事業所制度、新認定事業所制度 に対する意見・要望を抽出した(3章)。
特に新認定事業所制度のインセンティブに関しては「レピュテーションの向上がインセン ティブになりえる」「インセンティブと認定基準の間にはロジカルな整合性が保たれるべき」
といった意見、また認定要件に関してはリスクアセスメントの取り組み状況・体制に関して、
「リスクアセッサーの技量が重要」「先進技術はあくまでツール」などの意見を得た。
次に、国内のヒアリング結果をもとに、公的規格等の迅速対応に向けた課題と対応策につ いて整理した(5章)。
従来より、国内での許認可の手続きの迅速性や効率性に関する課題が指摘されていたが、
これらは現在検討されているファスト・トラック制度の導入において対応がなされる見込み となっている
一方、「国内の基準がグローバルスタンダードと異なることにより許認可が得られない」
といった指摘については、本調査において業界団体から活用を希望する具体的な規格内容の リストが提案されるなど、今後の対応・検討が期待されている。
また「例示基準に基づかない審査プロセスでは、高圧ガス保安協会または学識経験者によ る改めての判断が求められるため、逆にハードルを高める結果となっている」という指摘も なされた。海外では民間の認証機関等、十分な知見を有する第三者機関を機動的に活用でき るような環境が形成されており、欧州のような民間認証機関の活用による許認可体制の社会 的醸成は一つの選択肢であると考えられる。
インフラの維持・保守におけるロボット活用の状況等について、高圧ガス保安法適用事業 者を対象としたアンケート調査を業界団体を通じて実施することによって概況を把握した
(6章)。アンケート調査は個別技術の活用状況と活用意向に関して多肢選択型での調査を 実施した。
サーモグラフィ、リモートフィールドET、プラントシミュレータ(運転員訓練シミュレ ータ)については半数以上の企業、磁気飽和渦流探傷、HART通信については1/3以上の企 業が「運用・活用段階」と回答した。
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また、スマートバルブは活用意向が強いが必ずしも活用が進んでおらず、活用に向けた課 題を業界全体として解決していくニーズが大きいと考えられる。
各技術について活用が進んでいない理由としては、国内外ともに、個別の技術的な制約・
課題、費用対効果の不明確さ、代替手段の存在等が挙げられた。
一方でそれぞれの技術についてすでに活用している企業も存在することから、トップラン ナーとして活用に取り組んでいる企業の経験・知見を業界として共有することで、技術の普 及がはかられる可能性がある。また、技術の運用面のネックの解消、保安に対する効果の評 価・検証も必要である。
自主保安認定事業所制度の改定の参考とするため、海外規制機関の保安規制の考え方に関 して、アメリカ、ドイツ、シンガポールを対象としたヒアリング調査も併せて実施した(7 章)。海外における自主保安の考え方や実態等については、特徴的な点として以下の項目が 挙げられる。
①企業の自己責任、②リスクアセスメントの考え方、③リスクアセッサーの技量、④民間 活力の活用、⑤先進技術の活用
平成27年12月から翌年2月にかけて本調査で実施した3回の「高圧ガス保安規制のス マート化に関する委員会」では、新しい認定事業所制度に関して活発なディスカッションを 行った(4章)。
議論の冒頭では、認定事業所制度が目指すべき方向性として、「事業所において事故がな くなること」などの方針が確認された。
具体的な認定事業所制度の内容については、委員会で提示された事務局の骨子案に対して、
特に企業から、「インセンティブの魅力が少ない」「検査周期や検査手法に関する自主保安の 裁量を増やしてほしい」といったインセンティブに関する強い要望が出された。
また保安レベル維持の観点から認定要件とインセンティブの対応関係に関して保安レベ ルが低下していないかどうかの担保を求める意見や、新技術の活用によるメリットの計量化 に対する公的な支援を求める意見もあった。
リスクアセスメントの方法や考え方については、リスクベースドアプローチやALARP原 則の適用などに則ったリスクベースの考え方を新しい認定事業所制度に盛り込むことを求 める意見が多く聞かれた。また、リスクアセスメントにおいて、定量的方法と定性的方法は 相補的な位置づけとなること、リスクアセッサーのスキルレベルの重要性、自主保安認定取 得事業所の情報公開などの重要性が指摘された。
これら3回の委員会の議論を踏まえて、事務局としては下記のようなコンセプトを提案し、
これらを要件化することによる認定事業所制度による保安力向上の姿として、図 4-1 に示 すような論点の全体像を描画した。
①事業所の主体的な自主保安力の向上を促す制度
②保安力向上に資するノウハウの社会的普及を促進する制度
③社会全体の保安力向上をリードする企業を奨励する制度
さらに、これらの意見交換結果をもとに、経済産業省高圧ガス保安室において新認定事業 所制度に関する検討がなされ、最終的に、a.リスクアセスメント、b.教育・訓練、c.新技術 の活用、d.社外の知見の活用、e.適切に運転期間等を評価できる体制、などを要件とするこ
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とが提案された。特にe.については、本調査における各関係機関からの意見が考慮されたも のである。
平成28年3月9日に開催された「第10回高圧ガス小委員会」では、本業務の「高圧ガス 保安規制のスマート化に関する委員会」で議論された図 4-2、図 4-3、表 4-3、表 4-4、表 4-5 に示すような具体的な新認定事業所制度のインセンティブと要件を含む新認定事業所制度 の基本的な考え方が承認された。
添付資料1-1 高圧ガス保安規制のスマート化に関する委員会
第1回 議事録(案)
作 成 三菱総合研究所 開 催 日 時 2015年11月25日(水)10:00~12:00 次 回 日 時 2016年1月27日 AM 開 催 場 所 三菱総合研究所4F大会議室B 次 回 場 所 未定
1.開会
事務局より資料の確認を行った。
委員長として田村委員を選出した。
田村委員長及び各委員より自己紹介等を行った。
2.事業概要、検討の進め方について
事務局(三菱総研)より資料1-1、資料1-2に基づき説明した。
委員名簿について以下の修正を行った。
田村委員の所属について、「新領域創成科学研究科」を削除
和田委員の所属について、「安全化学」→「安全科学」
その他、次の質疑応答があった。
検討内容を持ち帰り、関係者で共有して議論することは可能か。
- 本委員会の検討は機微な内容が含まれるため、内容を関係者に共有する際は経済産業 省にご相談いただきたい。
3.認定事業所制度の概要について
事務局(三菱総研)より資料1-3に基づき説明した。(質問・意見なし)
4.事故の調査結果・分析結果について
事務局(三菱総研)より資料1-4に基づき説明した後、次の質疑応答があった。
本資料の分析は、事故を起こしたプラントが認定か非認定かを特定して実施しているの か。
- 認定か否かは事業所単位で特定できる。事故データは高圧ガス保安法事故が対象であ り、事業所単位のデータとなっている。
CCPS による事故分析は興味深いが、開示されているデータ項目のみによる適用は難し かったのではないか。
- 本来、CCPS では環境・経済などの観点も含めた評価を実施すべきところであるが、
事故データの項目の制約から、人的被害と現象のみで評価している。
年度別の事故件数の推移に対する解釈を要検討。例えば2008年には認定事業所の事故の 方が非認定事業所よりも多くなっているが、その背景要因を知ることが制度設計に資す ると考えられる。
5.新認定事業所制度について
事務局(三菱総研)より資料1-5、資料1-6に基づき説明した。
添付資料1