第五章 中国証券化市場の課題
第二節 再証券化の可能性と問題点
4. 証券化市場政策に対する提言
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がっており,実際にサブプライムローン問題を引き起こす主因となった。さらに事後対応 の構築そのものを難しくしている。また,証券化市場の拡大に向けて CDO 証券に対する情 報開示に向けて監督管理の強化を検討される必要があるが,流動性が低いため時価評価が 難しい。この問題に対して CDO 証券に対する清算機関を設置することで解決に繋がると考 えられる。
138 (2) 法律および会計基準の制定
第二節においては証券化に関する法律の未整備や法規が下位法に属する問題から,証券 化の取引に不確定性が生じることや上位法との衝突により,証券化の各参加者の権益が損 害される恐れがあることが確認できた。そのため証券化の通常業務化に向けて立法機関に よる統一的な立法が必要である。大陸法系に属する中国も同法系の他国と同じく証券化取 引上に及ぶ全ての取引において明文化した法律が不可欠である。
証券化はその考え方からこれまでの伝統的な金融手法とは一線を画する金融手法であ る。そのため,証券化と関係する既存の「信託法」や「証券法」さらに「会社法」などに ついては証券化と衝突すると考えられる部分について修正を行う必要がある。これにより 証券化に対する各参加者の顧慮がなくなり,今後の取引活発やトラブルの回避に大いに役 立つと考えられる。
また会計基準についても証券化と衝突する部分の改正はもちろんであり,リスク・経済 価値アプローチから財務構成要素アプローチへの転換が必要である。近年,金融において 証券化をはじめとしてファクタリングや ABS などこれまでと異なる金融手法が出現して いる。中国も金融市場の発展につれ金融手法の多様化は避けられない。そのためこれまで に用いできたリスク・経済価値アプローチによる資産委譲に対する認識はすでに金融市場 の実情に合わず証券化以外の認識においても矛盾は発生すると考えられる。日,米などの 経済先進国がリスク・経済価値アプローチから財務構成要素アプローチへ転換したことは その表れである。中国も国際会計とのコンバージェンスの視点からも早急に会計アプロー チの変更が必要であると考えられる。
(3)証券化市場に対する監督管理
最後に,資産証券化の通常業務化に向けては米国のサブプライムローン危機の経験と教 訓を十分にくんだ上で,証券化市場を発展させると同時にそのリスクを十分に予防しなけ ればならない。
まず,証券化商品の透明性の向上が挙げられる。サブプライムローン問題では証券化に 対する批判として商品が過度に複雑でリスクが見えにくいという指摘が多く見られた。そ のため,特に証券化に関する経験が浅い中国では証券化商品の簡素化に努める必要がある。
主に過度の複雑なトランシェは望ましくない。これに加え再証券化商品やシンセティック
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CDO 商品についてはそのリスクが見えにくいことから発行については慎重であるべきだ。
また,監督管理の面においても厳格化する必要がある。特に信用評価機関についてはその 規範や法的責任をしっかりと明記し,主管部門による定時的な監査なども取り入れる必要 がある。さらに,投資家に対する情報開示とオリジネーターおよび各参加者のリスク留保 に対しても監督管理を厳格化することや価格形成仕組みの検討,格付けだけでない評価基 準の策定などの予防策を講じる必要がある。
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終章
第一節 本研究の結論
本論文ではまず中国の金融市場における企業部門への資金供給不足の問題に着目し,金 融市場に存在する問題について論じた。その結果,金融市場において銀行部門による信用 創造能力の不足と証券市場,債券市場の不成熟の問題が存在することが明らかになった。
特に金融市場の中心的な立場である銀行部門では,自己資本規制の厳格化と予貸期間のミ スマッチなどによる資産の固定化が存在し企業への資金供給を圧迫した。これらの原因に より金融市場の企業への資金供給機能はシャドーバンキングに依存せざるをえなく,金融 市場の安定や企業の資金調達に大きな影響を及ぼしている仕組みを解明した。
中国では近年における著しい経済成長につれて,金融市場も急速に規模の拡大がされて いる。しかし,短時間のうちに急速成長したことにより,以前から存在している欠陥が修 正されずに,むしろ拡大し続けている。そのため,現在の金融市場は,市場の構造がアン バランス的かつ市場機能も十分とはいえない。こうした状況を打開するためには金融市場 における構造改革を進める一方で,新しい金融手段による市場機能の保管も必要である。
本論文では次にこうした金融市場の諸問題に対する証券化の役割について議論を行っ た。証券化は新しいアセット・ファイナンスとして,企業が保有する一部の資産を裏づけ として資金調達を行うことから,伝統的なコーポレート・ファイナンスとは一線を画すも のである。対象資産の信用を裏づけとするため,中小企業にとって,企業全体の信用に依 存する資金調達手法より容易かつ低コストに資金調達でき,中国の金融市場の企業部門へ の資金供給能力不足を補う効果がある。
また,証券化はその取引上の特殊性により,資産のオフバランス効果が期待でき,銀行 資産固定化の改善や自己資本規制対策の問題に対する効果もあることを明らかにした。証 券化による銀行資産固定化の改善や企業資金調達方法の確立の効果について実例による 概算分析と財務分析において確認した。さらに,今後の中国経済を考えると金利の自由化 の進行につれ銀行の利潤の低下や経済成長の減速による大量に発生すると見込まれる不 良債権問題もある。証券化はこれらの問題に対しても一定的な効果を発揮すると見込まれ る。そのため,中国における証券化の通常業務化と証券化市場の拡大は不可避である。
しかし,中国におけるこれまでの証券化市場は市場の未発達や法律,会計基準の整備不
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足の問題により,本来証券化に期待される効果の低下や取引上に存在する不確実性を生じ,
これは証券化の通常業務化に向けては放置できない問題である。加えて,米国で起こった サブプライムローン問題から見て,CDO 証券を含めた証券化商品はその仕組み上一定のリ スクを有することが分かる。
以上から,証券化に対して,期待されたような効果を挙げるためには,当局による証券 化市場の整備,法律・会計基準の修正と設定,さらに監督管理の強化が不可欠な条件であ る。これらの点についてはこれまでに証券化をより長く進めてきた日米欧などの先進国の 経験を参照しつつ,中国の実情に当てはめることが最良であると考える。
第二節 本論文の貢献
本論文ではまず中国の金融市場における企業部門への資金供給不足の問題に着目し金 融市場に存在する問題について研究を行った。その結果,金融市場において銀行部門によ る信用創造能力の不足と証券市場,債券市場の不成熟の問題が存在することを明らかにし た。また,これらに問題に対して証券化による銀行資産固定化の改善や企業の資金調達に 関する効果について確認を行った。本論文の主な貢献は以下の点にある。
1. 金融市場の資金供給機能の解明
企業への資金供給問題については,これまで単一市場もしくは企業の資金調達という視 点からの分析が主であった。それに対して本論文では金融市場全体に着目し,銀行市場,
株式市場,債券市場のそれぞれの企業部門への資金供給が低下する要因について分析,解 明を行った。さらにこれらを現在問題となっているシャドーバンキング問題と関連づけて 分析を行った。
2. 金融市場の問題と証券化の関係
本論文では証券化のメカニズムから金融市場の問題に対してどのような役割を果たす かについて詳細に議論を行った。中国では現在証券化導入の初期段階であり,証券化の効 果に対する研究が多いものの実際の金融市場の問題に対応して証券化の効果について行