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企業部門への資金供給不足問題に対する影響

第四章 中国における証券化の効果

第三節 企業資産証券化

3. 企業部門への資金供給不足問題に対する影響

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役割を果たしている。リース債権を証券化により現金化することで企業の負債比率が下が り,加えて資産の流動性指標の改善にも繋がった。これは企業が伝統的な金融手法で資金 調達の際の信用評価を改善すると考えられ,結果的により優遇された条件での融資を可能 にする。

しかし,Schwarcz(1994)が指摘したように,証券化による資金調達コストの引き下げ効 果を達成するにはある程度(Schwarcz(1994)の場合は下限 500 万ドル)の発行規模が必要 である。つまり中小企業などが単体での小規模融資を行った場合,証券化の手数料や発行 費用などの固定費用の高騰により,逆に資金調達コストが増加する恐れがある。

以上,企業による資産証券化の効果について「中国聯通 CDMA 回線リース費用収益計画」

を例に案例分析を行った。その結果,リース債権の証券化により企業の資産構成に変化が 生じ,結果企業の収益性および安全性指標の改善が見られた。また調達コストの面からも CP 発行より高いが,銀行融資より著しく低いことが分かった。

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部の資産を証券化するために,企業の資産規模に関係なく,中小企業は大企業と平等的に 資金調達を行うことが可能である。これに加え,対象資産の特定化,当該資産の信用リス ク分析,信用補完を通じるリスク分担関係,借手情報が明瞭な形で投資家に伝達されるた め,企業発行の社債と比べて,収益生成構造の単純透明性及び本体企業の事業展開からの 切離しによる収益安定性という点で優れている。企業の一部資産のキャッシュ・フローを 裏づけとする証券化を直接行うことでこれまで主な直接金融手段である株式,社債に加え,

新たな直接金融手段となり,資本市場における直接融資手段の欠如の改善に繋がると予測 できる。さらに本節において調達コストに対する分析では,証券化は調達コストの面から CP 発行より高いが,銀行融資より著しく低い結果を得たことから,証券化による資金調 達は企業の資金調達コスト節約に繋げる可能性も示した。

また,中国においてこれまで企業資産の証券化が数件行われてきたが,中小企業がオリ ジネーターとなるケースは未だにない。しかし,将来的に中小企業の資産を証券化する可 能性については幾つか挙げることができる。

まず 1 つ目は未収金および売掛債権資産の証券化である。近年では製造業において,サ プライ・チェーン・マネジメントが普及され,大量生産体制を支えるためにメーカー主導 の垂直的な流通統合が形成されてきた。多くの中小企業が大手メーカーの下請け,部品メ ーカー,販売業者などの役割を担っている。そのため消費者から商品代金が回収される期 間が必然的に長くなり,中国において特に売掛債権や未収金が回収される時間差によって 中小企業の経営が圧迫されるケースが普遍的になっている。この問題に対して資産証券化 を行うことで売掛債券などの資産の流動化に繋げ,企業の財務上の普段を軽減させること ができる。さらに証券化対象資産のオフバランス効果を利用し,財務体質の優良化にも繋 がり,銀行からの融資を取り付けやすくなるなど,融資困難の問題に対し効果的な解決策 になると考えられている。

次は知的財産の証券化である。統計によると中国では 2012 年企業が取得された特許の 約 97%が中小企業によるものという事実がある。近年,中国においても特に核心的技術を 持つ中小,ベンチャー企業が急速的に増えている。しかし,これらの企業のほとんどは規 模が小さく,財務基盤が弱いなどの特徴を持つ。こうした企業に対して伝統の銀行業は貸 し渋る傾向が強く,さらに中国にはベンチャーキャピタル企業がほとんどないため,金融 市場から資金を調達することは困難と考えられる。しかし,知的財産が生み出されるキャ ッシュ・フローをベースに証券化することは,対象資産の隔離,当該資産の信用リスク分

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析,信用補完を行うことで当該企業への融資リスクを下げ,投資家によるこれらの企業へ の融資を可能にさせる効果が期待できる。

小括

本章では貸付債権証券化と企業資産証券化の効果について実証研究を行った。

貸付債権証券化については銀行に与える影響概算分析により以下の 3 つの点から確認 を行った。①証券化のオフバランス効果による銀行資本構成の改善および当局が目標とす る貸出余力増加の確認,②オフバランス効果による銀行に対する自己資本比率規制資本の 節約効果,③証券化による銀行への収益の変化,である。その結果いずれの案件も債権に 対する 10.5%-11.5%の自己資本比率負担分が証券化により大きく節約され,さらに債権を 証券化したことによるニューマネーの獲得により,債権資産の約 9 割を現金化することが できた。一方,証券化によって獲得する利潤について一般貸付債権を原資産とするものに ついては証券化しない場合よりわずかに低い結果となった。本論文においては,証券化に よって回収された資金の再貸出,または再証券化について利潤の測定はなく,得られた資 金で再貸付を行うことで証券化しない場合より高い利益率を得られると推測できる。さら に不良資産を原債権とする建元 2008 でも証券化した場合の RAROA が証券化しない場合よ り約 3%上回っている,これは銀行が負うはずの信用リスクの一部が投資家に移転された ことを現れている。オフバランス効果とあわせ銀行の不良債権処理策の 1 つとして証券化 の可能性を示したものとなった。

次に企業資産証券化の効果について,①企業資本構成の改善,②資金調達コストの節約 の 2 点から確認を行った。まず,証券化による資本構成の改善については安全性指標,収 益性指標,効率性指標のいずれも改善している結果となった。また,資金調達コストの確 認では銀行融資,CP 発行,証券化の 3 つのコストを比較した結果,証券化は CP 発行より わずかに高いが,銀行融資より大幅に資金調達コストが節約されたことが分かった。

以上の結果により,証券化は銀行資産固定化の問題,自己資本規制対策,企業の新たな 資金調達の確保の面において一定的な役割を果たしていることが分かる。しかし,銀行の 証券化によって回収された資金の再貸出,または再証券化について利潤の測定ができなか った点や企業資産証券化のケーススダディ対象が 1 企業のみであった点から,証券化の効

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果を説明するには比較的に説得力が乏しい点があることも事実である85

85 特に企業資産証券化のケーススダディについては,論文執筆時の 2013 年 4 月までに行われた 9 件の企 業資産証券化のうち上場企業の資産を対象としたのは「中国聯通 CDMA 回線リース費用収益計画」のみで あるため,現状としてケーススダディが 1 件だけとなった。これは市場全体に対する影響を明らかにす る分析結果とは言い難く,あくまで証券化のひとつの可能性を示した結果となった。

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