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第四章 中国における証券化の効果

第二節 貸付債権証券化

3. 分析結果

以上の条件を基礎に,選出したサンプルを計算し,以下表 17 の結果を導き出した。

浦元 2007 工元 2007 工元 2008

資 産 の自 己 資 本比 率 規 制に 関 わ る所 要 自 己資

証券化 トランシェ 1A/AAA 4,183,821.67 トランシェ A1/AAA 2,415,000.00 トランシェ AAA/AAA 7,647,500.00 トランシェ 1B/A+ 982,946.11 トランシェ A2/AAA 1,380,000.00 トランシェ A/A 2,616,250.00 トランシェ 1C/BBB 1,436,613.35 トランシェ B/A 1,423,125.00 劣後 32,418,140.63

劣後 11,026,638.44 劣後 16,243,750.00 合計 42,681,890.63 合計 17,630,019.57

合計 21,461,875.00 貸付

債権

証券化前 504,074,900 462,415,000 921,269,025.00

貸 付 余力 の 増 加に 対 す る効

証券化 トランシェ 1A/AAA 3,452,016,688.33 トランシェ A1/AAA 1,992,585,000.00 トランシェ AAA/AAA 6,309,852,500.00 トランシェ 1B/A+ 323,816,638.89 トランシェ A2/AAA 1,138,620,000.00 トランシェ A/A 861,883,750.00 トランシェ 1C/BBB 235,916,896.65 トランシェ B/A 468,826,875.00 劣後 396,065,109.38 劣後 134,716,756.56 劣後 198,456,250.00 合計 7,567,801,359.38 合計 4,146,466,980.43 合計 3,798,488,125.00

貸付債権 証券化前 △504,074,900 △462,415,000 △921,269,025.00

RAROA 証券化 1.26% 5.51% 1.20%

証券化前 3.69% 3.69% 2.99%

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建元 2005 建元 2008 浙元 2008

資 産 の自 己 資 本比 率 規 制に 関 わ る所 要 自 己資

証券化

トランシェ A/AAA 3,070,229.18 トランシェ優先/AAA トランシェ A/AAA 3,070,229.18

トランシェ優先 /AAA トランシェ B/A 585,425.04 劣後 トランシェ B/A 585,425.04 劣後 トランシェ C/BBB 303,553.43 合計 トランシェ C/BBB 303,553.43 合計

劣後 6,504,733.36 劣後 6,504,733.36

合計 10,463,940.99 合計 10,463,940.99

貸付 債権

証券化前 346,918,560.87 1,098,300,052.95 80,082,550.00

貸 付 余力 の 増 加に 対 す る効

証券化

トランシェ A/AAA 2,533,206,045.83 トランシェ優先/AAA トランシェ A/AAA 2,533,206,045.83

トランシェ優先 /AAA トランシェ B/A 192,859,369.96 劣後 トランシェ B/A 192,859,369.96 劣後 トランシェ C/BBB 49,848,751.58 合計 トランシェ C/BBB 49,848,751.58 合計

劣後 79,470,872.74 劣後 79,470,872.74

合計 2,855,385,040.11 合計 2,855,385,040.11

貸付債権 証券化前 △346,918,560.87 △1,098,300,052.95 △80,082,550.00

RAROA 証券化 3.46%74 -33.45% 5.82%

証券化前 2.39% -37.11% 5.00%

74 未発生のコストと収益については発行前のコストと配当に対する概算に基づき算出している。

表 17 概算分析の結果 (単位:元) (出所)筆者により作成

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以上 6 つの銀行債権資産証券化による銀行資産に対するオフバランス効果についてま とめると,以下の表 18 のようになる。結果から見ると,6 件の証券化により,銀行はそ れぞれ原債権の 94.47%,94.47%,94.65%,27.02%,94.63%,94.14%の貸出余力を証券化 が行われた時点で得たこととなる。さらに,証券化による現金の回収に加え,債権資産の オフバランス効果によっていずれの案件も自己資本比率負担分は原債権の 0.5%にとどま っており,証券化前の原債権に対する 10.5%-11.5%の自己資本比率負担分が証券化により 大きく節約されている。

単位:百万元 工元 2007 工元 2008 建元 2005 建元 2008 浦元 2007 浙元 2008 債権総額 4,021.00 8,011.04 3,016.68 9,550.43 4,383.26 696.37 証券化前の債

権に対する自 己資本比率負 担分

462.41 921.27 346.92 1,098.30 460.24 73.12

証券化後の資 産に対する自 己資本比率負 担分

21.46 42.68 10.46 46.68 16.10 6.01

証券化による 貸出余力の増 加額

3798.49 7567.80 2855.39 2580.07 4148.00 655.54

証券化による 自己資本比率 負担節約額

440.95 878.59 336.46 1,051.62 444.14 67.11

原債権に対す る貸出余力増 加の割合

94.46% 94.47% 94.65% 27.02% 94.63% 94.14%

証券化前の RAROA

1.26% 1.20% 3.46% -33.45% 0.40% 5.82%

証券化後の RAROA

3.69% 2.99% 2.39% -37.11% 3.69% 5.00%

表 18 証券化によるオフバランス効果と RAROA の変化 (出所)筆者により作成

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つまり証券化のオフバランス化により,銀行はいずれも原資産の 9 割以上の現金資産と し,資産の流動化を実現した。ただ,建元 2008 年第 1 期不良資産証券化の案件について は原債権の 27.02%しか回収できていない。その原因は,原資産が不良債権であるため,

市場において証券価額に対する評価が低いことにある。しかし,高リスク資産の一部でも 現金化できたことの意義は大きい。これに対して一般債権資産の証券化では,証券化によ る現金の回収に加えて債権に対する 10.5%-11.5%の自己資本比率の負担軽減分で,いずれ も原債権のほとんどが現金化されている。この結果は先行研究にあった深浦(2003)のニュ ーマネーの獲得による資産に対するオリジネーターの裁量が拡大するという議論を裏付 ける。

この結果は,資産が固定化された中国の銀行部門さらに銀行に対する自己資本比率規制 の面においても極めて大きな効果があると考えられる。特に中小企業への貸付債権を証券 化した浙元 2008 は他の証券化商品に遜色ない貸出余力の増加を見せており,中小企業債 権資産証券化のリスクに対する市場の評価は一般債券と同様であることが分かる。そして このことは,銀行の中小企業への貸付を躊躇う要因の 1 つが解消できると考えられる。

なお,工元 2007,工元 2008 を除き,浦元 2007 はいずれも証券化せずに債権を通常と おり回収した場合の利潤より証券化後の利潤が低い。一方,本論文において,証券化によ って回収された資金の再貸出,または再証券化について利潤の測定は不可能であるが,得 られた資金で再貸付または債務の返済に利用すれば証券化しない場合より高い利益率を 得られるが,運用方法を誤れば逆に証券化しない場合の利益率を下回る可能性もある。こ の 3 つの証券化商品はいずれも企業に対する一般貸付債権を原債権とした証券化商品で あり,単なる証券化によって利潤を獲得することは不可能である。銀行の資金運用能力に よって証券化後の獲得する利益の多少が決まることになるが,これは深浦(2003)が導き出 した結論と同じものである。

一方個人住宅ローン貸付債権を原資産とする建元 2005,小企業貸付を原資産とする浙 元 2008 では,証券化後の時点で RAROA が証券化しない場合より上回っている。これは証 券化商品に対するこれらの商品の利回りが実際貸付債権の利鞘を下回っていることが原 因である75。つまり銀行は原債権の高い信用評価によって,証券化によってより利潤を得 た。小企業に対する貸付債権でこのような結果が得られたことは銀行部門の小企業への貸

75 建元 2005 の原債権予定 NIS は 3.06%に対して,証券化商品の加重利率は 2.56%,浙元 2008 の原債権予 定利鞘は 5.0%に対して,証券化商品の加重利率は 2.1%といずれも証券化商品の利率が原債権の利鞘を下 回っている。

113 付に対するインセンティブになる。

また,不良債権を原資産とする建元 2008 でも証券化した場合の RAROA が証券化しない 場合より約 3%上回っており,これは銀行が負うはずの信用リスクの一部が投資家に移転 されたことを示しており,オフバランス効果とあわせ銀行の不良債権処理策の 1 つとして 証券化の可能性を示したものとなっている。