第五章 中国証券化市場の課題
第二節 再証券化の可能性と問題点
3. CDO 証券のリスク
以上のように CDO 証券は中国において不良債権処理の有効な方法であることが分かっ
91 中国建投投資研究院による「中国投資発展報告(2014)」を参照。
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た。加えて本論弁で議論したように,CDO を含め証券化金融市場,銀行部門に存在する諸 問題を処理も期待されている。
しかし,かねてから CDO 証券は原資産の不透明さや流動性の低さなどのリスクが存在す ると言われている。藤井,竹本(2009),稲村,白塚(2008),北見(2010)は,CDO 証券の持 つ問題が 2007 年の米国サブプライムローン問題発生の要因であることを前提にした研究 であり,特にサブプライム層への住宅ローンなどを裏付けとする RMBS を原資産とする CDS のリスクについてそれぞれ分析を行っている。
2007 年の米国のサブプライムローン問題を引き起こした要因として指摘されるのが,
サブプライム層への住宅ローンなどを裏付けとする住宅ローン担保証券(RMBS),さらにそ れらを組み合わせた債務担保証券(CDO)である。それらの損失は,CDO の損失を中心に 9800 億ドルと証券商品全体の約 3 分の 2 を占めている。 残高に対する損失見込額の比率では,
72.5%となる RMBS-CDO がもっとも高く,RMBS を中心とする ABS 証券でも残高の 2 割近く に及ぶ損失額が見込まれている。サブプライムなどの住宅ローンを裏づけとする RMBS を 元に作られた CDO である RMBS-CDO の損失見込額残高が約 7 割ときわめて高い(藤井,竹本 2009)。今回のサブプライムローン問題は RMBS だけでなく, 金融システムに与える影響 度が見えにくかった点ではむしろ RMBS 以上に,RMBS を裏付資産とする RMBS-CDO の問題 が大きいことが伺える。
北見(2010)は研究の中において,CDO 証券のリスクは裏付け資産の透明性が低いことに あると主張している。CDO 証券は裏付資産の移転を伴うキャッシュ CDO と,リスクの移転 を伴う合成 CDO があるとし,北見によればサブプライムローン問題を引き起こした RMBS-CDO は前者のカテゴリーに属する。すなわち,MBS を裏付資産とするもので,具体的に は,そのままでは投資家に対して販売しにくいトリプル B 格程度の格付の RMBS のトラン シェを裏付けとして他の金銭債権と合わせた裏付け資産プールを作成し,それを優先劣後 トランシェに切り分けた CDO 証券が組成される。この CDO 証券についても,優先劣後構造 を採用することにより 70〜80%程度の最優先部分がトリプル A の CDO になる。こうして,
複数の RMBS を束ねることで住宅ローンの地域分散などが期待できることを主たる理由に,
卜リプル B の RMBS がトリプル A の CDO になるというものである。
このような仕組みの RMBS-CDO については,まず,①RMBS の裏付資産となっているサブ プライムローンの焦げ付きが,損失としてどの程度 RMBS のエクイティ・トランシェ,メ ザニン・トランシェを侵食しているのか,次に,②サブプライム ローンを裏付資産とす
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る RMBS について,そのパフォーマンスがどの程度悪化し,RMBS-CDO にどのような影響が 出ているかが外部から分かりにくいことが,RMBS-CD の時価評価の際に深刻な問題となっ た。加えて,CDO 証券の価格評価については,市場取引が小さいこともあって市場価格が 存在せず,時価評価にはプライシング•モデルによる理論値を使わざるを得なかったが,
理論値は現実との乖離が大きかったこともサブプライムローン問題の一因になったと主 張している。
さらに CDO 証券化商品は複数の ABS のメザニンを集め,再度証券化したものから,リス クなどを分散することでリスク許容性を高めるという理論に対して,藤井・竹本(2009) は想定リスクを超過する事象が生じた際には,特に下位トランシェにおいて,同時に,か つ,急激に元本が毀損するようなシステマティック・リスクが存在すると主張している。
これを証明するために藤井・竹本(2009)は RMBS におけるデフォルトモデルを用いて証明 した。
分析では CDO 証券の構成をシニア・トランシェ 80%,メザニン・トランシェ 10%,エ クイティ・トランシェ 10%と設定し,この指標を基本とし,リスク可能性を微増させて いくと,エクイティ,メザニン,シニアの順に急激な元本毀損の比率が上昇することとな った。
つまり,トランシェによって優先劣後関係が生じているために,通常のポートフォリオ においては,100 億円のポートフォリオにおける 1 億円の損失は 1%の毀損であるが,証 券化におけるエクイティ投資家にとっては 10%の損失となる。そして 15 億円の損失は,
同様のポートフォリオでは,15%の損失に過ぎないはずが,エクイティ投資家にとっては 100%の元本毀損,メザニン投資家においても,50%の毀損となる結果が得られている。
また CDO においても,分散化されるメリットと表裏の関係で,リスク感応度を上げ,外 部環境によるデフォルト相関が上昇した場合など同様のリスクが顕在化した際,組成され ている担保証券全てのリスクが上昇するため,急激な価格下落に見舞われることとなる。
藤井,竹本(2009)は,2007 年に発生したサブプライムローン問題においては実際にこの 問題が起こったと主張している。
このように,CDO 証券という仕組み自体は投資の機会の創出や原資産保有者の財務指標 改善,信用リスク軽減などに対して効果があるが,CDO 証券は前回の米国サブプライムロ ーン問題の波及を大きくした一因であることも確かであり,その仕組み上幾つかの問題点 が存在する。まず CDO の複雑な仕組みが,投資家からみた追跡可能性•透明性の欠如に繋
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がっており,実際にサブプライムローン問題を引き起こす主因となった。さらに事後対応 の構築そのものを難しくしている。また,証券化市場の拡大に向けて CDO 証券に対する情 報開示に向けて監督管理の強化を検討される必要があるが,流動性が低いため時価評価が 難しい。この問題に対して CDO 証券に対する清算機関を設置することで解決に繋がると考 えられる。