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シャドーバンキングへの依存

第二章 中国金融市場の構造

第四節 シャドーバンキング問題

3. シャドーバンキングへの依存

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さらに銀行による信用仲介に対する影響も大きい。理財商品をはじめとするシャドーバ ンキングは資金を獲得するため,銀行の預金金利を大幅に上回る収益率を顧客に提示して いる。2014 年 5 月銀行市場において発売された 460 件の理財商品の収益率は 4.42%から 6.11%にわたり,平均して年率 5.22%であった40。これに対して銀行の 1 年もの預金金利は 3.38%とはるかに低い。これにより銀行から資金が流出する事態となり,銀行部門におけ る資金不足問題を引き起こしている。さらに毛・羅(2011)は,このような高い金利は最終 的に資金の需要者で企業の資金調達に対する負担を増大させている主因であるとしてい る。

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ストは大企業の 5 倍にも及ぶという結果がある(李ほか(2009))。そのため,銀行部門から みれば対中小企業向け融資はハイリスクであるにもかかわらず,低金利で融資することに なる。また,中国では法定準備金に金利はインフレ率を意識して,予め高めに設定されて いるため,金融機関にとって中小企業に融資するより中央銀行に預けた方が低リスクで安 定した利息を稼ぐことができる。さらに日米のような先進国でも中小企業への融資につい て,デフォルト率が高いことが指摘されているように42,中国は銀行借入を積極的に返済 しようとせず,債務逃れを図るケースが多く信用リスクは大きい。そのため,銀行部門か らみれば資金は同じリスクでもより高いリターンを得られるシャドーバンキングに向け ることになる。

(2) 銀行によるオフバランス取引のニーズ

中国では近年銀行に対する預貸率および自己資本に対する規制が厳しさを増しつつあ る43。これに対して中国の主要銀行の多くの自己資本比率は 10.5%よりわずかに上回る差 しかないケースが多く,これに対して理財商品をはじめとするシャドーバンキングへの取 引では元本非保証型ではリスクを投資者が負担し,銀行部門は手数料を取得するだけなの で,資産および負債ともにパランスシートに計上されない。銀行にとってリスク・ウェイ トの大きい貸付資産をオフバランスできる上に,利益を得られる形となり,魅力的である。

中国において約 35 兆元の資金がシャドーバンキングによって仲介され,これは銀行預 金の 30%,GDP の 59%に占める。資金がシャドーバンキングに流れたことにより金融市場 全体の資金固定化に繋げ,特に銀行部門による信用仲介機能を圧迫していると思われる。

さらに資金調達者である企業部門の視点から見ても,シャドーバンキングに依存した資金 調達方法はコストの増加に繋がり,企業経営を圧迫する。

中国のシャドーバンキングは欧米など先進国と異なり,その主な資金源は銀行部門によ るオフバランス取引によるである。その根本原因は金利制限や自己資本規制による銀行の オフバランス取引に対する大きなニーズである。これらのことが全体として資産固定化に 拍車をかける要因となった。しかし,その一方,銀行による信用仲介機能低下,株式市場

42 劉(2006)を参照した。

43 特に 2013 年から商業銀行自己資本比率規制に関して新しい規制を段階的に適用されことの影響は大 きい。これは,新しい規制はバーゼル銀行監督委員会が公表している「バーゼル 3」の銀行規制に対応 している。新基準は 13 年から段階的に導入され,19 年までに完全実施される予定であり,特に銀行の 自己資本比率を 10.5%以上に制限していることやリスク・ウエィトの加重が重くなることが特徴である。

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および債券市場の未発達による金融市場の企業部門への資金供給能力不足問題に対し,シ ャドーバンキングは市場機能を補う効果を果たしていることも否めない。

こうした中,特に銀行部門の信用リスク回避やオフバランス取引に対するニーズに関し,

シャドーバンキングの代替として証券化が注目されるようになりつつある。単純なオフバ ランス取引である理財商品,信託商品と比べ,証券化は SPV への真正売買による資産の特 産隔離措置や専門機関によるリスク評価,流動性・信用補完措置などが取られており,さ らにより流動性が高く,監督管理のしやすい証券の形で販売するため取引の透明性,オフ バランス取引の成熟性,監督管理のしやすさ,資産リスクの隔離などいずれの面において も現在中国で行われている銀行部門のオフバランス取引より優れていると思われる。また,

企業資産証券化は,新な融資手段を提供することにより企業と地方政府のシャドーバンキ ングに対する依存度を低下させる効果も期待できる。実際,政府報告においてたびたび証 券化によるシャドーバンキングシステムの代替可能性が議論されており,中国人民銀行が 発表した「中国金融穏定報告 2013」,中国社会科学院が発表した「中国金融監管報告 2014」

のいずれにおいても中国の金融市場において膨大な規模の銀行のオフバランス取引によ るシャドーバンキングが生まれた理由の 1 つとして中国の資産証券化市場が過小である ことをあげている。

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