第 4 章 ハルトマン層を考慮した 300mmMCZ プロセスの解析
4.2 計算モデル
本章における計算モデルの指針は、結晶径300 mm 横磁場MCZプロセス中のシリコン 融液の熱・物質輸送環境を模擬しつつ、かつシリコン融液の境界近傍の現象を詳細に解析 することである。そこで、第 2章で用いた炉内全域の 3次元計算モデルからシリコン融液 部周辺のみを抜き出し、その部分のみを計算領域とした部分モデルを作成した。結晶径300 mm 横磁場MCZ プロセスの熱環境を模擬することは、第2章の計算結果からシリコン結 晶部およびシリコン融液部と接する境界部の熱・流動に関する境界条件を抽出し、部分モ デルの最外部境界に与えることで実現した。メッシュサイズは、現実的な計算負荷で実施 可能な限界までメッシュサイズを細かくすることで、壁近傍の現象の詳細を解析した。
本部分モデルで用いている数学モデルや物性値、解析手法は第 2 章と同じであるので、
本節での記載は省略する。本節では、ジオメトリ、メッシュサイズ、境界条件に関して記 載する。
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4.2.1 ジオメトリ・計算メッシュ
図 4-1に第2章本章で用いたモデルから抽出した計算領域の模式図を示す。図中赤線部 で示した領域を抽出した。抽出した領域はシリコン融液部に加え、結晶内電流の効果を確 認するためにシリコン結晶部と、シリコン融液の熱環境をより再現するために、石英ルツ ボ部とそれを保持するグラファイトサセプターの一部を領域に加えた。
図 4-1 部分モデルで抽出した領域 赤線で囲った領域を抽出した。
ハルトマン層の効果を考慮するため、石英ルツボとシリコン融液の境界メッシュを可能 な限り細かく設定した。本研究では現実的な計算負荷として、後述する計算機を使用して の 300 秒の非定常計算に計算時間 60 日間を上限とした。シリコン融液部のメッシュを図 4-2に示す。メッシュは第2章と同様にすべて六面体メッシュで構成されている。また、設 定した境界層メッシュのパラメータを、第 2 章の設定値と予想されるハルトマン層および 側壁厚と並べて表 4-1 に示す。メッシュのアスペクト比を保持するために内部のメッシュ サイズも小さくしており、全メッシュ数は約 22,000,000 個、シリコン融液部のみで約
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10,200,000個である。
図 4-2 石英ルツボ近傍のメッシュ構造 (a) 第2章で使用したメッシュ
(b) 本章の部分モデルで使用したメッシュ
表 4-1 境界層メッシュの設定パラメータ
本章の部分モデルでは、固液界面下および磁場と平行なルツボ壁に関しては側壁層厚と 比べ十分に細かいメッシュサイズとなっており、当該領域の影響は十分に正確に考慮でき ると考えられる。一方、磁場と垂直なルツボ壁に関しては設定した第一層メッシュ厚はハ ルトマン層厚の約 3 倍であり、本部分モデルにおいても十分には解像できていないが、本 部分モデルと第2章の結果を比較することでハルトマン層考慮の影響を確認した。
4.2.2 境界条件
本モデルの最外部境界の境界条件に関して示す。境界部は図 4-3 に示すように、5 つの 境界がある。境界値は第2章の計算結果の600 秒の時間平均値を参照計算結果とした。ま た、メッシュ形状の違いによる参照点の不一致は、逆距離加重補間法(参照点との距離と 反比例する重み付け係数を掛けた加重平均)で補正した。
(a) (b)
位置
第一層 メッシュ厚
(mm)
倍率 メッシュ数
第2章のメッシュ 固液界面下 0.6 ×1.2 5 ルツボ壁 1.5 ×1.2 5 本章のメッシュ 固液界面下 0.3 ×1.2 13
ルツボ壁 0.3 ×1.2 13
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図 4-3 部分モデルにおける最外周境界
4.2.3 熱的境界条件
Bの気液界面を除くA、C、D、Eに対しては、参照計算結果から同位置の温度を抽出し、
それを時間に依らない固定温度として境界条件に与えた。
Bの気液界面は、シリコン融液流動の時間変動に伴う温度の時間変化が大きく、固定温度 を与えることは不適である。そこで、輻射と熱伝導による熱流束を境界条件として与えた。
まず、参照計算結果から気液界面各位置における温度Trefと輻射による熱流束qrad、および 熱伝導による熱流束 qcondを抽出する。輻射の計算式から、その位置における参照温度 T∞
を下記式(4.1)から計算する。
4 4
T T
qrad ref (4.1)
qradおよび計算したT∞を時間に依らない固定値とし、その時の固液界面温度Tから固液界 面の総熱流束Qを下記式で計算し、与える。
condcond
rad q T T q
q
Q 4 4 (4.1)
これは、気液界面を通る熱流束qradを温度Tの関数として与えることに相当する。
A : 結晶表面
B : 気液界面
C : 石英ルツボおよび
グラファイトサセプターの上面
D : グラファイトサセプター側面
E : グラファイトサセプターの下面
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4.2.4 力学的境界条件
Bの気液界面を除くA、C、D、Eは固体境界であり、その境界の速度は設定したルツボ および結晶回転速度から一意に決まるので、それを固定値として与えた。Bの気液界面では アルゴンによるせん断応力とメルトのせん断応力、およびマランゴニ応力が釣り合う境界 である。今回は、参照計算結果のアルゴン流速を抽出し、それに応じたせん断力を B の気 液界面下の第一メッシュに体積力として与えた。参照計算結果では気液界面近くのAr流速 は時間変動せずほぼ一定であることから、上記のせん断力は時間に依らない固定値とした。
4.2.5 計算手順
第2章と同じく非定常計算を行った。第2章の非定常計算にて 300 秒の時刻における流 速・温度・圧力を抽出し、メッシュの違いを最小二乗法による一時補間で補正したものを 初期条件として与えた。そこから300 秒の非定常計算を行った。Timestepサイズはメルト 全域においてクーラン条件を満たすように設定した。クーラン条件は、TimestepサイズΔ t、流速u、メッシュ幅Δxで表す無次元数クーラン数C = uΔt/Δx が全領域において1.0 以下であることである。具体的に、Timpestepサイズを0.005 s に設定した。
計算機としてIntel Xeon E5-2687W(8 cores、3.10 GHz)を2枚、メモリを64GB搭載 したワークステーション2台を並列化したものを使用し、計32 coresのCPUを用いて並 列計算を行った。300秒間の非定常計算に約60日間を要した。