• 検索結果がありません。

計算モデル

ドキュメント内 九州大学学術情報リポジトリ (ページ 94-99)

第 5 章 ハルトマン層を考慮した 300mm MCZ プロセスにおける

5.2 計算モデル

本章における計算モデルの指針は、結晶径300 mm 横磁場MCZプロセス中の固液界面 下流動およびドーパントの輸送現象を解析することである。これをシミュレーションにて 扱うに当たっての課題は、境界層の解像である。考慮すべき境界層は速度境界層と濃度境 界層の2つであるが、一般にこれら境界層は融液全体の厚みに対し非常に薄く、このこと が計算を困難にする。

両境界層の厚みを見積もることとする。まず速度境界層に関しては、前章に記載した通 り固液界面下においては5.91 mm の速度境界層が存在すると見積もられる[5, 6]。ただし、

この値は絶縁壁の場合であり、上述の通り結晶内を通る電流により結晶直下の融液には非 常に強いローレンツ力が発生するため、実際の濃度境界層厚みはさらに薄いことが予想さ れる。濃度境界層厚は速度境界層厚よりさらに薄いことが推定される。濃度境界層厚は無 次元数であるSchmidt(シュミット)数により速度境界層厚との比率として概算できる。

ドーパントとしてリンを想定すると、下記になる。

Sc

ion concentrat

velocity

(5.1)

ここで、

)

velocity :速度境界層厚(m

89

)

ion

(m

concentrat

:濃度境界層厚

) (

2 .

15 :シュミット数 無次元

D Sc

) / ( 10

53 .

2 

3

:シリコンメルトの密 度 kg m

3

 

) / ( 10

30 .

2

8

m

2

s

D  

:リンの拡散係数

固液界面下の速度境界層厚5.91 mmを代入すると、

) ( 10 389 .

0

3

m

Sc

parallel ion

concentrat

 

(5.2)

以上より、固液界面下には0.389 mm程度の濃度境界層が存在すると概算される。

一般に境界層を直接解像するには境界層内に20メッシュが必要とされる。しかしながら、

第 2章で用いた炉内全領域3次元析モデルでは、計算負荷を現実的な値に抑えるため、境 界第一層メッシュ厚は1.5 mmが限界である。また、第4章の部分モデルにおいても、第 一層メッシュ厚は0.3 mmが限界である。

そこで本章では、横磁場下での固液界面直下の速度・濃度境界層の挙動を確認すること に特化し、固液界面近傍のみを計算領域とした部分モデルを構築した。具体的には、第 2 章で用いた炉内全域の 3 次元計算モデルから固液界面近傍のみを抜き出し、その部分のみ を計算領域とした部分モデルを作成した。計算領域を狭めることで計算負荷を低減し、境 界近傍のメッシュを細かく設定することができる。融液内部のドーパント濃度は、5.1節に 記述した仮定2が成立すると仮定し、濃度が均一となった融液が固液界面下の計算領域に 流れ込むとした。

また、横磁場下における固液界面下流動の理解を最優先する目的から、それ以外の要素 を省いた理想的な系を仮定した。流動、電流、ドーパントの輸送を扱い、温度は全領域を 融点で固定とし、計算は行わない。また、定常計算を行い、時間変動は考慮しない。

本部分モデルで用いている数学モデルや物性値、解析手法は第 2 章と同じであるので、

本節での記載は省略する。異なる点として、流動に関して、本系では温度を考慮しないた め、温度差に起因する浮力、およびマランゴニ応力は発生しない。また、アルゴン流れは 考慮せず、これにより融液にアルゴン流れによるせん断応力は発生しない。

電流はシリコン融液、シリコン結晶を導電体として扱う。シリコン結晶の電気伝導度は 温度依存性があるが、温度を融点に固定しているため、結晶全域にて融点における電気伝 導度を与える。この仮定は、結晶の電気伝導度は温度低下により急激に減少するため、実 現象と比べ電流を大きく見積もることを意味する。

本節の以下では、ジオメトリ、メッシュサイズ、ドーパント輸送モデル、境界条件に関 して記載する。

90

5.2.1 ジオメトリ、物性値

図 5-1に本章の部分モデルの概要と、ジオメトリを示す。理想化のため、結晶直径は300

mm、固液界面形状はフラット、3 重点近傍のメニスカスは存在しないと仮定した。また、

Ar流れは考慮せず、計算領域から除外した。

座標は、固液界面の中心位置を原点とし、鉛直上方向をz軸、水平にx,y軸とする右手系 とする。横磁場は均一静磁場をy軸正方向に印加する。

図 5-1 抽出領域の概要図

固液界面下および気液界面下のメッシュは図 5-2 に示すように、第一層厚を 0.050 mm とし、倍率1.2倍で25層のメッシュを形成した。これは概算した濃度境界層厚0.389 mm を5メッシュで分解することを意味する。これは理想とされる20メッシュと比較すると不 十分だが、計算負荷を考慮した限界であること、および 5 メッシュでも不完全ながら傾向 は再現できると考えられることから、上記のように設定した。

図 5-2 部分モデルのメッシュ構造

150 50

50

50

(単位:mm) Si結晶

Si融液

Ar部は 計算せず

断面図

俯瞰図 界面近傍のメッシュ形状

固液界面下第一層メッシュ厚:50um

91

物性値は表5-1のように設定した。また、ドーパントはリンを想定した。

表5-1 物性値の設定値

物質 物性値 単位 値

Siメルト 密度 kg/m3 2.53×103

Siメルト 粘性係数 Pa・s 8.85×10-4 Siメルト 電気伝導度 S/m 1.23×106 Si結晶 電気伝導度 S/m 3.33×104 P(Siメルト中) 拡散係数 m2/s 2.3×10-8 P(Siメルト中) 偏析係数 - 0.35

5.2.2 ドーパント輸送の数学モデル

ドーパントの輸送は下記の移流拡散方程式を解く。

 

u C

DC

(5.3)

5.2.3 境界条件

本系では境界として、計算領域内に固液界面が存在し、計算領域の境界には気液界面、

結晶の側面、結晶の上面、シリコン融液の側面、シリコン融液の下面が存在する。それぞ れの境界と、そこにおける流動、電流、ドーパント輸送の境界条件の模式図を図 5-3 に示 す。下記では、それぞれに関して詳細を記述する。

5.2.3.1 流動

シリコン融液流動の境界条件に関して、固液界面は滑りなし(No slip)条件として、結 晶回転速度を与える。気液界面は完全すべり(Slip)条件とする。流体の計算領域の境界は、

Pressure Inletとする。これは内部の圧力を保つために流出・流入する境界条件である。シ

リコン融液は非圧縮であることからシリコン融液内部の圧力差は十分小さく、この条件は 実質的に質量保存測を満たすための自由流出・流入である。つまり、結晶回転およびロー レンツ力により計算領域境界から流出した分を、その他の計算領域境界から流入すること を意味する。

92

図 5-3 境界条件設定の概要図

(a) 流動、(b) 電流、(c) ドーパント輸送

5.2.3.2 電磁場効果

電流の境界条件は、固液界面にて電流保存を満たすように(5.4)、(5.5)式に示すスカラー ポテンシャルの値を与える。計算領域の境界にて(5.6)、(5.7)式に示す絶縁壁と設定するが、

これは厳密ではない。正しくは、電流は本検討の計算領域外を含めたシリコンメルト・結 晶の全体で保存する値であるため、それら全体を考慮する必要がある。今回は、部分モデ ルの限界として計算領域内で電流が保存するように上記のように設定した。一般に電流は 保存則を満たすために境界近傍の極薄い領域に集中するため、本モデルの計算領域の境界 近傍では実際と異なる電流値となるが、本検討で着目する固液界面からは十分離れており、

そこに与える影響は小さいと考えられる。

固液界面(導電壁):

n j n

j

melt

 

crystal

   

(5.4)

No Slip + 結晶回転速度

Slip

Pressure Inlet

導電壁

絶縁壁

偏析によるFlux

濃度1.0

(a) 流動 (b) 電流

(c) ドーパント濃度

93

   





   









   



crystal

crystal crystal

melt melt

melt u B n

n n B n u

 

 

 

 

(5.5

ここで、

(大きさは

:境界の法線ベクトル 1 . 0 n

計算領域境界(絶縁壁):

 0

n j

(5.6)

u B

n

n

 

 

 

 

(5.7)

5.2.3.3 ドーパント輸送

ドーパント輸送の境界条件は、固液界面にて偏析で吐き出される分をフラックスとして

(5.8)式のように与える。また、計算領域の境界では(5.9)式に示すように濃度1に固定する。

これは5.2節の仮定2を反映するもので、計算領域に流入するメルトは、計算領域外でよく 混ざり合い、規格化した濃度1.0になっていることを意味する。

固液界面:

k

vC n

D C

Flux  

 

 1 (5.8)

ここで、

:偏析係数 k

) / ( m s v :引き上げ速度

計算領域境界:

0 .

 1

C

(5.9)

ドキュメント内 九州大学学術情報リポジトリ (ページ 94-99)