第 2 章 炉内 3 次元モデルによる 300 mm 横磁場 MCZ プロセスの解析
2.6 考察
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51 発生するするローレンツ力である[11]。
図 2-11に結晶内に発生する電流の軌跡と、固液界面直下に発生するローレンツ力を示す。
図 2-11(a)の結晶内の電流分布では、磁場に平行な面に半月状の軌跡を描き、y > 0の領域 でz軸正方向に、y < 0の領域でz軸負方向に流れている。磁場はy軸正方向に印加してい るので、この電流に起因して発生するローレンツ力は、y > 0の領域でx軸負方向、y < 0 の領域でx軸正方向であり、これは結晶回転と逆方向、つまり回転を制動する方向である。
結晶はこの制動力を受けながらも強制的に回転させられているため、結晶内部では常に電 流が発生し、これらの電流の一部が固液界面を横切ってSi融液側に流れる。この電流に起 因して固液界面直下のSi融液にローレンツ力が発生し、その方向は上記の説明のとおり、
結晶回転と逆向きになる。固液界面直下0.3 mmのシリコン融液に発生するローレンツ力に 関して、x、y 成分の分布を図 2-11(b)に示す。確かに結晶回転と逆方向にローレンツ力は 発生しており、またその大きさは、結晶回転の速度成分のうち磁場と直交する x 方向成分 が大きいほど大きくなっている。それが駆動力となり、Si 融液の結晶下にて結晶回転と逆 方向の流動が形成される。特に y軸上の結晶端においては x軸方向に非常に速い流動が形 成されている。これにより、図 2-9(g)で見られた小さな渦が形成されると考えられる。こ のローレンツ力はシリコン融液に発生する外力の中で最も大きいものであるため、この効 果によりシリコン融液の対流は不安定化されたと考えられる。
過去報告における結晶径300 mm MCZプロセスを対象とした熱・対流シミュレーション では、いずれも結晶は絶縁体として扱っており、その結果として z 軸に対して2 回の回転 対称な流動・温度分布が得られた。しかし、上記のように結晶を導電体として扱うことに より、固液界面下に非常に強いローレンツ力が発生する。従来、外部静磁場の印加に対し ては、シリコン融液の流動を抑制する効果のみが着目されてきたが、結晶下においては逆 にシリコン融液を不安定にする効果を発生させることを明らかにした。
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図 2-11 結晶内の電流分布と固液界面下シリコン融液に発生するローレンツ力 (a) 流線で表された結晶内の電流分布
(b) 気液界面下0.3 mmの水平断面に発生するローレンツ力の面への射影図
B
[A/m2]
シリコン 結晶
シリコン 融液
[N/m3]
B
固液界面 (a)
(b)
結晶回転方向
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2.6.3 流動の時間変動のメカニズム
4.5.2.2に示した通り、シリコン融液の流動は170.6 秒周期で周期変動した。このメカニ
ズムを推定する。
図 2-10 において、まず370 秒では全体として一つの渦流が主流である。410 秒におい て、固液界面下から下方向の流速が発生し、それにより 2 つの小さな渦流が形成される。
同時刻の温度分布を見ると下降流発生個所の温度が低いことから、これらは固液界面で冷 却され温度が低下したシリコン融液が重力によって下降したことに起因すると考えられる。
この挙動はコールドプリューム(Cold Plume)の形成過程と同じである。430 秒から470 秒 にかけて、形成したコールドプリュームは、ルツボ外周を回る一つ渦流によって図中を右 から左へ、かつ重力により鉛直上から下へ輸送される。490 秒にて、輸送されたコールド プリュームはルツボ壁近傍へ到達する。本系ではルツボの周囲に設置したヒーターが熱源 であるため、ルツボ壁からは絶えず熱流束がシリコン融液内部へ流れ込む。ルツボ壁近傍 においてコールドプリュームは加熱され、その形成の駆動力であった鉛直方向の温度差は 低下し、コールドプリュームは530 秒にて消滅する。530 秒での流動・温度分布は370 秒 での分布と近似しており、同じ状態に戻ったと考えられる。このような挙動から、シリコ ン融液流動の周期変動は、熱対流に起因したレイリー・ベナール不安定性によるものと推 定される。
次に、コールドプリューム形成時の詳細を確認する。固液界面下には図 2-9(g)ので示し た小さな渦が形成され、図 2-10を見るとこの小さな渦は流動の周期振動中も絶えず存在す る。4.6.2項に示したようにこの小さな渦は、固液界面下に発生する結晶回転と逆方向のロ ーレンツ力による外向きの流動と、大きな一つ渦の中心に向かう流れが衝突することで形 成され、小さな渦の下では 2 つの流れが交互に流れる強いせん断流れが存在する。このせ ん断層の不安定性により渦列が形成され、それが一つ渦の中心に向かう流れにより図中右 から左へ輸送される。その渦列による鉛直方向の速度変動がトリガーとなり、コールドプ リュームが形成されると推定される。