第 5 章 ハルトマン層を考慮した 300mm MCZ プロセスにおける
5.5 考察
5.5.1 流動・ドーパント濃度の分布
計算結果の一例として、結晶回転速度と磁場強度それぞれの変更幅の中間である条件5
(結晶回転速度:5.0 rpm、磁場強度:0.25 T)におけるメルトの流動分布、およびドーパ ント濃度分布を下記に示す。
まず、中心軸を通る磁場に平行な面、および垂直な面の流動分布を図 5-6に示す。なお、
流速の絶対値はベクトルの色のみで表し、各ベクトルの長さは流速によらず一定として表 示している。本章では以下同様である。
図 5-6 シリコン融液の鉛直断面の流動分布 (a) 中心軸を含む磁場に平行な鉛直断面 (b) 中心軸を含む磁場に垂直な鉛直断面
鉛直下から固液界面へ流入し、固液界面にて外周方向に流出している。固液界面下では、
磁場に垂直かつ外周方向の流速が大きく、逆に磁場に平行な方向の流速は小さい。一般的 に、横磁場印加下では磁場に垂直方向に流れが形成され、平行方向の流れは小さくなるこ
磁場に平行な面
磁場に垂直な面 (a)
(b)
B
B
Velocity
(m/s)
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とが知られており、その特徴と一致する。つまり、固液界面下にて周方向に非対称な流れ が形成されている。
次に、固液界面下の流動を詳細に見るために、固液界面直下、界面下1 mm, 2 mm, 3 mm のそれぞれの水平断面における流動分布を真上から見た図を図 5-7に示す。
図 5-7 シリコン融液の水平断面の流動分布 (a) 固液界面下0.001mm
(b) 固液界面下1 mm (c) 固液界面下2 mm (d) 固液界面下3 mm
まず、図 5-7(a)の固液界面上断面を見ると、メルト流動は回転している結晶速度と同一 である。なお結晶は真上から見たときに時計回りに回転している。これは流体力学の原則 にて、層の境界にて両層の速度が一致することが求められることによる。(b)の1 mm下を 見ると、渦の形が磁場印加方向に長い楕円形になっている。固液界面上と比較すると全体 の流速が低下しており、特に磁場に垂直方向の流速が低下していることから磁場方向に縦 長の楕円形の渦となっている。(c)の2 mm 下を見ると、固液界面下の図中上と下の領域に
(a) 固液界面直下 (b) 固液界面下 1mm
(c) 2mm (d) 3mm Velocity
(m/s)
B
98
おいて、結晶回転と逆方向かつ図中横方向(磁場と垂直方向)の流れとなっている。(d)の3 mm 下ではその流れがさらに強くなっており、固液界面下の図中右と左の 2 領域を除いて ほとんどの領域において結晶回転と逆方向かつ図中横方向の流れとなっている。これら流 動分布は第 2 章に記載したように、結晶とメルトを行き来する電流によるローレンツ力に 起因するものである。このローレンツ力は大きく、固液界面直下の結晶回転に引きずられ る流れから、数 mm下においてそれと逆方向の流れを形成する。このように、固液界面下 には、結晶に引きずられる粘性力と、回転と逆方向に発生するローレンツ力により、急峻 な速度勾配が存在する。またローレンツ力は磁場と垂直方向にのみ発生し、かつ位置によ り大きさが異なるため、固液界面下流動は非軸対称な分布となる。
固液界面からさらに外側の流れを見ると、図 5-7(a)から(d)まで全てにおいて、図中右上 と左下の計算領域境界から流入し、左上と右下の計算領域境界から流出する流れである。(d) を見ると、右上から流入した流れはローレンツ力に起因する右から左へ向かう流れに乗り、
左上へと流出している。このことから、この流れの駆動力は結晶下のローレンツ力である。
次に固液界面のドーパント濃度分布を図 5-8に示す。
最外周部を除いてほぼ結晶回転軸を軸とした軸対称の分布であり、中心から外周に向か うにつれて濃度が上昇する。最外周部では、図中右上と左下にて急激な濃度の落ち込みが 存在する。それぞれが、本節で記載した抵抗率分布の 2 つの特徴、①中心から外周に向け てゆるやかな減少傾向、②最外周近傍で急激な増加傾向、に該当するものと考えられる。
ここで、ドーパント濃度と抵抗率は逆数の関係であるため、大小関係は逆転する。
以下では混乱を避ける意味で、ドーパント濃度と抵抗率の内、ドーパント濃度のみに着 目し、ドーパント濃度の中心から外周に向けてのゆるやかな上昇と、最外周近傍での急激 な減少に分けて考察する。
図 5-8 固液界面のドーパント濃度分布 規格化した
ドーパント濃度
B
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