3.4 数値計算による空気吹き出し配管の流量分配解析
3.4.2 解析結果
(1)全バルブ全開モード
船体傾斜がない状態で,全てのバルブを全開(バルブ開閉角度0 deg)にした場合の流量分配解 析を行った。全枝管において,出口背圧が同じなため,流量分配は各管路の圧力損失のみに依存す る。したがって,Fig.3.20に示すように船体外側に出口を持つ配管(8,9,10,11,12,13,14,15)は,管 路長が長く,曲がり継手の数も多いため,圧力損失が大きくなり分配される流量が少なくなってい る。一方,船体中央に出口を持つ配管(1,2,3,4,5,6,7)は,管路長が短いため圧力損失が小さく,分 配される流量が多くなる結果となっている。
Fig.3.20: Analytical result of flow rate distribution (All valves are fully opened).
(2)最低圧損モード
前記のモードを基に,各枝管でバルブの圧損が最も小さい状態,すなわち空気供給のエネルギー が最も少ないモードで流量が等分配されるバルブ開閉角度を予測した。その結果をFig.3.21に示 す。各配管の圧力損失の差をバルブによる抵抗で補う必要があるため,船体中央に出口を持つ配管 においてはバルブが閉まる傾向にある。流量分配解析プログラムによる検討の結果,バルブ開閉角
度をFig.3.21に示す程度の範囲で調整することにより流量分布(等分配された場合を0 %とする)
は,±2 %以内に抑えられると予測された。
Fig.3.21: Analytical result of flow rate distribution (Flow rate is equally distributed under minimum valve pressure loss).
(3)バルブ開度調整モード1
出口背圧は船体の横傾斜に大きく影響を受けると考えられるので,ここでは,バルブ開閉角度を 調整して船体が傾斜した場合においても,できるだけ流量が等分配されるバルブ操作について検討 する。
まず,傾斜がない状態で流量が等分配になるように調整したバルブ開閉角度(最低圧損モード) で左舷側に3 deg傾斜した場合では,Fig.3.22に示すように傾斜して沈み込んだ側の配管で逆流が 起こるという結果になった。一方,反対の舷側では出口背圧が減少するため,配管に流れる流量が 増加している。ただし,流量分配解析は逆流が発生した時点で計算が終了するので,流量の値に確 度はなく現象の傾向を示すのみであることに留意が必要である。なお,結果は割愛するが右舷側に 傾斜した場合も同様の現象が発生している。
傾斜した状態で各配管の流量を等分配に近づけるためには,沈み込む側の出口背圧が高くなって いることからバルブを開けて背圧を下げ,逆舷の浮き上がる側の配管ではバルブを閉めるような 調整が必要であることがわかる。ここで,左舷に3 deg傾斜した状態でバルブの開閉角度を調整し た流量分配解析結果をFig.3.23に示す。最大63 degのバルブ開閉角度で,流量分配のばらつきが
±3 %以内にできることがわかった。
バルブ開閉角度を大きくする(弁を閉める)と,バルブによる圧力損失が管による損失よりも支 配的になるため,各配管形状の違いの影響が小さくなる。そのため,流量分配が均一化される傾向 になる。すなわち,バルブを全体的に閉めるほど,流量分配は改善する。
Fig.3.22: Analytical result of flow rate distribution (Heel angle is 3degrees (port side down)).
Fig.3.23: Analytical result of flow rate distribution (Valve opening is adjusted as the distri-bution of flow rate becomes even).
続いて,上記の考え方に基づいて全バルブの開閉角度を60 degに固定した設定で左舷側に傾斜 した場合の流量分配の検討を行った。その結果をFig.3.24に示す。バルブ開閉角度を一律に設定 すると傾斜時に流量のアンバランスが生じているが,一律なバルブ開閉角度にもかかわらず,傾斜 した場合の流量分布のばらつき(均等に分配された場合に対する誤差)は±30 %程度にできるこ
Fig.3.24: Analytical result of flow rate distribution (All valve openings are 60 deg).
とが予想される。一律なバルブ開閉角度で弁を絞った設定としておくだけで,傾斜時にも全枝管か ら空気が供給されるため,簡便で有効なバルブ調整法であると評価できる。
(4)バルブ開度調整モード2 (バルブ開度制御)
Fig.3.24に示した“バルブを一律の開閉角度に固定して調整する方法”に対し,傾斜によって調
整バルブの開閉度を比例ゲインを与えて制御し,傾斜の影響を抑制する検討を行った。ここで,バ ルブ開閉角度は一律のバルブ開閉角度60 degをベースに,傾斜によって沈み込む左舷端のバルブ
を6 deg開けて,浮き上がる右舷端のバルブを6 deg閉めた。両端の間にあるバルブの開閉角度は
船幅方向の位置に比例して与えた。この条件で流量分配解析を行った結果をFig.3.25に示す。均 一のバルブ開閉角度であったFig.3.24では,傾斜によって浮き上がる右舷の流量が増加し,左舷側 の流量は減少していたが,Fig.3.25では左舷側の流量分布が均一化している。右舷側は徐々に流量 が少なくなっており絞り込み量が大き過ぎたと考えられる。全体的にはバルブ開閉角度を調節した
ことで,Fig.3.24に比べて流量が改善されており,左右舷端の開閉角度を調整すればさらに改善さ
れるものと考えられる。
Fig.3.25: Analytical result of flow rate distribution (Valve opening are linearly varied from starboard to port).
3.4.3 流量分配解析に関する考察
配管を一次元的に表現した管路網解析ソフトウェアを用いて,船体傾斜,喫水条件を変更し流量 分配シミュレーションを実施した。
傾斜がない状態では,弁を全て全開にした状態においても,流量分配の偏りが生じるものの,全 配管から空気が吹き出される結果を得た。船体が傾斜した場合でも,弁の調整により流量をほぼ等 分配できることが検討結果から示された。
しかし,特定の傾斜角について弁開度を調整した状態で,傾斜角が変化あるいは逆舷側に傾斜す ると,空気の出口圧力の変化によって,一部配管で空気を吹き出せなくなることが予測される。そ こで,傾斜に対する空気吹き出しのロバスト性を確保し,さらに弁開度の調整を少なくする方法を 検討した結果,全配管を一律の開閉度で閉める方法,または配管出口位置に対して比例ゲインを与 えて弁開度を調整する方法により,全ての配管で均一な空気流量を確保できる見通しを得た。