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空気供給装置の設計検討

ドキュメント内 九州大学学術情報リポジトリ (ページ 32-47)

本節では,空気潤滑システムの開発に関して,船底の開孔から吹き出す空気量のばらつきを抑え ることを目的として取り付ける空気供給設備の設計検討結果について述べる。

3.3.1 開孔模型からの空気吹き出し状況確認試験

(1)開孔形状の設計手順

まず,開孔設計時に着目した点について述べる。十分な空気潤滑効果を得るためには,吹き出し た空気と船体表面の接触を十分に確保することが主要なポイントであると考えた。吹き出された空 気の挙動は,吹き出す際の勢いに密接に関係していると考えられ,勢いが大きいと空気は吹き出し た直後から船体から離れてしまうことになる。したがって,開孔から吹き出す際の空気の勢い(吹 き出し速度)を適切に制御することが必要である。この勢いの強弱は,ホースで水をまく際にホー スの口を押さえて勢いを大きくするように,空気供給量と開孔の大きさの関係で決まるので,勢い を表す指標として,(3.1)式で定義される局部空気厚さtaを定義し,この指標を用いて開孔形状を 設計する方法を検討した。ここで,Qa は空気供給量,Bo は開孔部の船幅方向長さ,U は船速で ある。

ta= Qa

BoU (3.1)

第2章において,空気潤滑システムを設計する際に,摩擦抵抗低減率と船底を覆う相当空気厚さ tb の関係を示す実験式を用いた。この式から,設計船速U と船底の空気で覆われる幅Ba を与え て,相当空気厚さtbを設定すると必要空気量Qaが得られる。

得られた必要空気量Qaに対して,taが決められると(3.1)式の関係からBo が求められる。こ のtaについて,空気が船底表面から離れないように上限(しきい値)を定めることができれば開孔 部の設計が可能となる。しかし,taに相当するような調査事例や実験などの先行研究例はないこと から,本研究においてtaのしきい値について新たに設定することとした。

これまで,海技研を中心とした研究グループは空気潤滑の研究に先行して取り組み,さらに実船 試験において省エネルギー効果を確認していた。児玉ら [49]は,既存のセメント運搬船を用いて 空気潤滑の実船試験を実施し,バラスト状態および満載状態の平均で正味5%を超える省エネル ギー効果が確認されたと報告している。そこで,この実船試験結果を参考にtaのしきい値の検討 を実施した。セメント運搬船の試験結果から試験条件を追計算すると,局部空気厚さがta=17 mm であったので,これをしきい値として開孔幅Boを求め,隣接する開孔が近づき過ぎないようにバ ランスを考慮して,開孔の形状(幅)と配置数を決定した。

設計検討対象船の設計船速を13 knとして,相当空気厚さを7 mm,被覆幅を30 mとした場合 の空気供給量(船底)Qa=84.3 m3/minとなり,(3.1)式からBoは12.36 mと求まる。ここで,

一つの開孔の幅を50 mmとすると開孔は247個必要である。

(2)開孔模型と使用試験設備

開孔の形状や大きさの妥当性を確認するために,実船を想定したサイズの開孔模型を用いて水流 中へ空気を吹き出して拡散状況を観察した。Fig.3.1に実船(設計検討対象船)に対して設計した

開孔を,Fig.3.2に開孔模型の製作図と写真を示す。製作した開孔模型は三つの開孔が千鳥配置状

に設けられているが,ここで実施した試験では,隣り合う開孔で挟まれる部分が気泡で覆われるこ とを確認するために,真ん中の開孔を塞いで横ならびに配置された二つの開孔から空気を吹き出 し,発生した気泡の状態と流れる状況を観察した。

水流中へ空気を吹き出す試験は,Fig.3.3に示す三菱重工業(株)長崎研究所の空洞水槽を利用 した。この空洞水槽の中央平行部の上部に,開孔模型を取り付け空気を送り込んだ。この時,水槽 内は減圧せずに試験を行った。すなわち船底部に設ける開孔が受ける静水圧を無視していることに なるが,吹出した空気の挙動を観察することが目的であり圧力の影響は小さいと考えた。

Fig.3.1: Dimension of air hole.

Fig.3.2: Model of air blowing hole.

Fig.3.3: Arrangement of cavitation tunnel.

(3)空気吹き出し試験条件

試験条件として,開孔2個当りの空気量Qa2を求める。Bo が12.40 mの条件で,開孔設計に用 いたta=17 mm,U=13 knに加えて,船速を小さくした10 kn,11 kn,12 knを加えた。また,13 knの場合のみtaが10 mm25 mmの場合の条件を加えて,taがしきい値から離れている場合の 影響を確認した。試験条件の一覧表をTable 3.1に示す。

Table 3.1: Condition of air blowing test in the cavitation tunnel.

U(kn) Qa2(m3/min)

ta=10 mm ta=17 mm ta=25 mm

10 - 0.527

-11 - 0.580

-12 - 0.632

-13 0.403 0.685 1.007

(4)空気吹き出し状況観察結果

空気吹き出しの状況をFig.3.4に記す。写真の上部に設けられた開孔から空気が吹き出し,計測 胴の下流(写真下部)に向かって流れている。吹き出し状況の観測結果を以下にまとめる。

開孔より吹き出した空気は水流によりせん断され気泡を形成し筋状に流れ出ている。本試験 では,2個の開孔から空気を吹き出したので,2本の筋状の気泡の流れが確認された。

exp.36855exp.36858に示した計測胴上方からの写真より,ta=17 mm (船速範囲;U=10

〜13 kn)では気泡の拡散状況は良好で,いずれも開孔の後方1m付近でシート状の気泡流に

なることが確認された。 

U=13 knで空気量を変化させたexp.36859 (ta=10 mm)exp.36855 (ta=17 mm)

exp.36860 (ta=25 mm)において,計測胴上方からの写真における気泡の拡散状況は良好で

あり,この試験条件においても開孔の後方1 m付近でシート状の気泡流になることが確認さ

れた。exp.36860 (ta=25 mm)の場合,空気供給量が多いため,シート表面が気泡の筋状跡 に沿って若干隆起し,シート表面がコブ状になっていた。 

計測胴下部から見た状況写真(Bottom view)のように,気泡は後方に流れながら船幅方向 に拡散し,開孔から約1 m付近流れたところで隣の気泡と合流し,シート状の気泡流を形成 していることを確認した。

exp.36855;U=13 knta=17 mm exp.36859;U=13 knta=10 mm

exp.36856;U=12 knta=17 mm exp.36860;U=13 knta=25 mm

exp.36857;U=11 knta=17 mm U=13 knta=17 mm (Bottom view)

exp.36858;U=10 knta=17 mm

Fig.3.4: Photograph of air blowing situation.

Fig.3.5: Air blowing and diffusing situation.

Fig.3.5に計測胴下方からの観測結果に開孔位置を記載して示す。実施した試験条件内では,開

孔より筋状に流れ出た気泡流は,後流側1m付近で合流しシート状の気泡流となることが確認でき た。隣り合う開孔の中心間隔(試験モデル:120 mm)と合流地点長さ(試験時:1 m)の位置関係か ら,気泡の幅方向の拡散角度は約1.5 deg程度となり小さいことがわかる。開孔の間隔を大きくす ると,気泡の合流が後方に延びてしまい気泡に覆われない部分が大きくなるので,開孔間隔はここ で計画した値(実機サイズ:111 mm)として検討を進めることとした。

3.3.2 チャンバ内部拡散板の検討

前節の開孔模型からの空気吹き出し試験に続いて,開孔の配置検討を行うために,空気吹き出し 部のチャンバ(空気室)の模型試験を実施した。このチャンバは,船底をチャンバ底面とし,底面 には小判型形状の開孔を有する箱である。

本船の空気吹き出しは,船底をまんべんなく気泡で覆うために,バラストタンク内の船幅方向に チャンバを複数配置して船底に多数の開孔を並べる方式を採用した。この時,主に工作上の観点か ら,それぞれの開孔に空気を供給する配管を取り付けることは現実的でなく,本システムではチャ ンバ上面に1本の空気供給配管を導設した。さらに,空気供給配管と開孔の位置関係で圧力の差に よる空気吹き出しの偏りが生じることから,チャンバ内で空気を十分に拡散させて,吹き出し空気 を均一な流量分布とするために内部に付加物(拡散板)を取り付けた。

ここでは,吹き出した空気が均一な流量分布になるような拡散板の構造を実験的に決定すること を目的として,実機相当のスケールでチャンバと拡散板のモックアップ模型を製作し,空気中で開 孔から吹き出される空気量を計測した。

(1)チャンバ模型

ここで実施する試験は,数種類の拡散板を交換しながら拡散板の効果を確認するため,チャンバ 模型は作業時間を短縮するためにダンボールで製作した。模型サイズは実船相当とし,底面には小 判型の開孔を111 mmピッチで千鳥配置状に16個設けた。Fig.3.6にチャンバ外形図を,Fig.3.7 にチャンバ模型の内部を示す。

実船では,Fig.3.6に示すサイズのチャンバをバラストタンク内に15個配置する計画である。こ の時,本船のロンジフレーム間隔が1 mであることから,Fig.3.6に示すように,ロンジフレーム を避けてチャンバ長手方向の中央から200 mmずらした位置にϕ150 mmの空気供給管を取り付 けた。

Fig.3.6: Outline drawing of chamber model.

No baffle plate With baffle plate Fig.3.7: Inside of the chamber model.

(2)拡散板模型

チャンバの空気吹き出し試験はTable 3.2に示す拡散板をチャンバ内に取り付けて,吹き出し量 が均一となる形状について調査を行った。この時,拡散板はチャンバ内に1段設置とした。拡散板 はプラスチックダンボールで製作し試験結果を評価しながら形状を改良・変更した。試験に用いた 拡散板の外形図をFig.3.8に示す。

Table 3.2: List of baffle plate.

Model Type Devise Aperture ratio

A None none 100 %

B

Slit

slit-1 33 %

C slit-2 29 %

D slit-3 24 %

E

Plate

plate-1 70 %

F plate-2 50 %

G plate-3 25 %

H

Perforated panel

perforated panel-1 5.6 %

I perforated panel-2

(upside-down) 5.6 %

J perforated panel(half)-3 53 %

K perforated panel(half)-4

(upside-down) 53 %

L Cup cup 0.5 %

N Combination Model I + Model L 5.6 %

Fig.3.8: Test Model of Baffle plates.

Model Aは,拡散板を取り付けていない場合で,拡散板を取り付けた場合の吹き出し状況との比

較に用いた。以下に,各拡散板のTypeの形状の意図および概略について説明を行う。

Slit

チャンバ長手方向に幅200 mmの平板を取り付けて空気の流れを止めることで長手方向へ の拡散を図り,空気は上下方向に空けられた50 mm 幅のスリット部を抜ける構造とした

(Model BModel Cは,その改良型として,50 mm幅の短冊を117 mm間隔で11本取り 付けたものである。Model Dでは,さらに空気供給管直下の空気が吹き出す付近を全て塞い だものである。

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