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4. 塩化物イオンに起因する鋼材腐食の予測法

4.3. RC 部材の鉄筋腐食の予測解析

4.3.1. 解析条件

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図 4-4 有限要素モデル

図 4-5 境界条件の模式図

400 mm

20(純かぶり50mm)

塩水,空気

空気 塩水

Case0およびCase1

上面:全面が塩水に接して いて,酸素も供給され る状態

下面:塩水,酸素の供給が ない状態

Case3

上面:部分的に塩水,空気 の供給がある状態 下面:塩水,酸素の供給が

ない状態 Case2

上面:全面が塩水に接して いる状態

下面:全面が空気に接して いて.酸素が供給され る状態

空気 塩水

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表 4-1 境界条件

ケース O2 H2O Cl

-上面 下面 上面 下面 上面 下面

Case0 0.0113 - 136 - 13.0 -

Case1-1 0.0113 - 136 - 13.0 -

Case1-2 0.00376 - 136 - 13.0 -

Case1-3 0.0113 - 136 - 3.9 -

Case2 - 0.0376 136 - 13.0 -

Case3 0.0113

0.0376 - 136

- - 13.0

- -

単位:kg/m3 注1:「 - 」は濃度流束ゼロ.

注2:上面の上段は塩水供給箇所,下段は空気供給箇所.

本解析では,既往実験12)を参考にコンクリートの空隙率を0.136ml/mlと算出し て境界条件を設定した.O2の境界条件は酸素分圧から空気と接する場合のO2量 を0.0376kg/m3とした.なお,塩水の影響がある場合は,その30%である0.0133 kg/m3または10 %である0.00376 kg/m3と仮定した.H2Oの境界条件は塩水に接す る場合は飽和状態を仮定して136 kg/m3とし,他は流束ゼロとした.Cl-の境界条 件は海水を想定した13 kg/m3 7)とその30 %である3.9 kg/m3を設定した.なお,境 界における流束を規定する方法や,境界と外部の濃度差に比例した流束を規定 する方法を用いる事例もあるが,本解析では濃度を規定することとした.

コンクリートのpHは12.7として,O2の拡散係数は946 000 mm2/年13),H2O の拡散係数は 3 150 mm2/年14)とした.これらの拡散係数はコンクリートの含水 率により相互に影響するものであるが,本研究は手法の構築を目的とするため,

拡散係数の非線形性考慮は今後の課題として一定値を用いることとした.また,

Cl-の拡散係数は水セメント比の関数と仮定して133 mm2/年とした7)

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本解析では外部から供給される腐食原因物質に起因する鉄筋腐食を予測する ため,コンクリート中に初期から存在するO2,H2O,Cl-は解析に考慮せず,初期 条件は全ケースでO2,H2O,Cl-はすべてゼロと仮定した.本解析では,既往の検 討たとえば10)を参考に表 4-2に示す定数を用いた.なお,標準電極電位は理科年表 を参考にし,活量係数は簡単のため1を仮定した.

コンクリート中であることの影響を考慮する腐食速度の補正係数は,小林・

下村10)の研究を参考に1/5とした.同研究では,枝広・依田15)の既往実験で,水 酸化カルシウム飽和溶液中の鉄筋の腐食速度がセメントペースト上澄み液中と 比較して約1/5であった事実に基づいて,コンクリート中の腐食速度を1/5とし ている.なお,枝広・依田は,この原因としてセメントペースト中に含まれる水 酸化アルカリによる不動態化の影響を指摘している.

表 4-2 解析に用いた定数

項目 値

標準電極電位に対応する電流密度(Fe) i0Fe 0.01 A/m2 交換電流密度(O2) i 0O2 1.00E-08 A/m2 交換電流密度(H2) i 0H2 0.001 A/m2

Tafel勾配(Fe) bFe 0.059 V/decade

Tafel勾配(O2) bO2 -0.059 V/decade

Tafel勾配(H2) bH2 -0.118 V/decade

ファラデー定数 F 96,485 sec A/mol 腐食速度の補正係数  1/5

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