3. マクロマネジメントのための補修量予測法
3.4. ばらつきを考慮した補修量予測法
3.4.1. 予測手法
本研究で構築した手法は,調査データのばらつきが正規分布に従うと仮定し て補修量の推移を予測する手法である.または,調査データが正規分布に従うこ とを判断しがたい場合には,中央値等に安全係数を乗じることでばらつきを考 慮する.『3.3節』では,ひび割れ幅0.1mm以下であれば,丸鋼の付着強度は異 形棒鋼の設計値程度が期待できることを示した.また,実務での簡便さを重視し た一次元ばねモデルの簡易なひび割れ発生時の鋼材腐食量の予測法を構築した.
本節の補修量予測ではその簡易法を用いるため,ひび割れ発生時に補修を行う とすることで安全側の予測を行うこととした.
予測手順は図 3-18に示すように2段階に分類される.第1段階では,中性化 の進行または塩化物イオンの拡散を予測し,鉄筋位置の深度が腐食開始の限界 値(以下,発錆限界)を超過するか否かを判定する.第2段階では,腐食原因や 漏水状態を考慮して鉄筋腐食の進行を予測し,ひび割れ発生限界の腐食量を超 過するか否かを判定する.なお,本手法は地下RC構造物の表面積を評価の単位 とする手法である.
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図 3-18 ばらつきを考慮した将来予測法の手順
ここでは中性化を例に構築した将来予測法について述べる.予測手順を図 3-19 に示す.まず,かぶりコンクリート表面からの中性化進行を予測して,発 錆限界超過割合を予測する.発錆限界超過割合の算定方法を図 3-20に示す.か ぶり,中性化深さのばらつきにそれぞれ正規分布N(cov, cov2),N(car, car2)を仮 定する.このとき,その差である正規分布 N(car-cov, car2+cov2)は中性化残り が0 mm以下の割合であり,これを中性化による発錆限界超過割合とする.その 割合は次式で表される.
2 cov car
cov car
2 cov car
car
x x
f
2
2
2 exp 2
2 1
(3.10)
ここに,car:中性化深さの平均値[mm]
中性化の進行 または 塩化物イオンの拡散
発錆限界超過
鉄筋腐食の進行
ひび割れ発生割合 Yes
No
ひび割れ発生時期超過 Yes
No ばらつきの考慮方法
A. ばらつきに正規分布を仮定して考慮 B. 中央値等に安全係数を乗じて考慮
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cov:かぶり深さの平均値[mm]
car:中性化深さの標準偏差[mm]
cov:かぶり深さの標準偏差[mm]
car-cov:中性化残りの平均値[mm]
上式により中性化の進行速度にばらつきを考慮することが可能になった.
次に,鉄筋腐食の進行を予測してひび割れ発生割合を予測する.腐食開始から の経年と腐食量の関係を図 3-21に示す.ひび割れ発生時期の算定において鉄筋 腐食速度は,鉄道のコンクリート維持管理標準6)に示される値を準用した.また,
既往研究16)を参考に,漏水がない箇所の鉄筋腐食速度は0.1倍と仮定した.
また,同図には腐食生成物の体積膨張率rを2.5として『3.3節』の手法によ り算出したひび割れ発生時期を示す.なお,かぶりは調査データの平均値である
55.1 mm,コンクリートの設計基準強度は 24 N/mm2とした.一般的な体積膨張
率rである2.0 ~ 3.0に対して,提案した算定法によるひび割れ発生時の腐食量
は22.7 ~ 42.1 mg/cm2となる.
図 3-19 中性化によるひび割れ発生割合の算出手順 かぶりコンクリート表面から中性化進行
発錆限界超過
鉄筋腐食の進行
ひび割れ発生割合 Yes
No
ひび割れ発生時期超過 Yes
No
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図 3-20 中性化による発錆限界超過割合の算出方法
図 3-21 腐食開始からの経年と腐食量の関係 コンクリート表面からの深度
確率密度
発錆限界超過割合
(中性化残り0mm以下の割合)
調査データによる かぶりの分布 調査データによる
中性化深さの分布
0 20 40 60 80 100
0 20 40 60 80 100
腐食減少量[mg/cm2 ]
腐食開始からの経年[年]
外的塩害
中性化(漏水あり)
中性化(漏水なし)
15.0 18.6
ひび割れ発生(r= 2.5 )
150 ひび割れ発生(r= 2.0 ~ 3.0)
塩害
腐食量[mg/cm2 ]
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