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塩化物イオン濃度の現状調査

3. マクロマネジメントのための補修量予測法

3.2. 鉄道地下 RC 構造物の現状分析

3.2.2. 塩化物イオン濃度の現状調査

51 t:経年[年]

調査データのばらつきを考慮するために,その95 %を包括する安全係数を算定 すると2.6となる.

図 3-4 調査データと中性化深さの予測値の関係

52

向があり,コンクリート表面では0 ~ 40 kg/m3の範囲に分布していることが分か る.

図 3-5 塩化物イオン濃度の調査データ

開削トンネルでは,感潮河川付近等で地下水が塩分混じりとなり,それが主に 打継ぎ目に生じる貫通ひび割れから漏水することで塩害が生じることが知られ ている.そこで本研究では,塩化物イオンが内空側のコンクリート表面から拡散 すると仮定して分析する.

塩化物イオンの拡散には,式(3.3)のFickの法則に従う予測式5)が提案されてお り,実務でも広く用いられている.

 

1 2

2 1

, C

t D erf x C

t x C

c

 

 



 

 

(3.3) 0

10 20 30 40

0 50 100 150 200 250

塩化物イオン濃度[kg/m3 ]

コンクリート表面からの深度[mm]

No.1 No.2

No.3 No.4

No.5 No.6

No.7 No.8

No.9 No.10

No.11 No.12

No.13 No.14

No.15 No.16

No.17 No.18

No.19 No.20

No.21 No.22

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ここに,C(x,t):深度x[mm]経年t[年]における塩化物イオン濃度[kg/m3] C1:コンクリート表面の塩化物イオン濃度[kg/m3]

C2:初期塩化物イオン濃度[kg/m3] Dc:塩化物イオン拡散係数[mm2/年]

塩化物イオン拡散係数Dcは主にコンクリートの配合等によって決まる係数で あり,コンクリート表面の塩化物イオン濃度C1(以下,塩化物イオン表面濃度C1) は主に構造物が置かれる環境条件の影響を受ける値である.これらの値を調査 データの最小二乗法でフィッティングして,地上構造物と比較することで,開削 トンネルにおける塩化物イオンの拡散の特徴を把握する.

地上構造物を対象とした算出手法はいくつか提案されており,たとえば鉄道 の新設構造物の設計6)では,塩化物イオン拡散係数Dcは水セメント比が55 %の

場合は229 mm2/年と算出される.塩化物イオン表面濃度C1は海中や干満帯で一

般に13 kg/m3と定められる.また,飛来塩分でS2地域かつ海岸線からの距離が

0.0 km,調査対象トンネルの平均経年である経年32 年では5.1 kg/m3となる(以

下,これらを設計値とする).

b) 分析結果

塩化物イオン拡散係数Dcの頻度分布を図 3-6に示す.その値は3 ~ 282 mm2/年 の範囲に分布しており,正規性の検定によると歪度は3.99,尖度は2.12で,非対 称な対数正規分布に近い形状である.その中央値は29.8 mm2/年であり,多くが 設計値よりも小さいことが分かる.

塩化物イオン表面濃度C1の頻度分布を図 3-7に示す.その値は0.3 ~ 45 kg/m3

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の範囲に分布しており,正規性の検定によると歪度は4.82,尖度は2.16で,非対 称な対数正規分布に近い形状である.中央値は3.2 kg/m3であり,干満帯および飛 来塩分の設計値よりも低いことが分かる.

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図 3-6 塩化物イオン拡散係数Dcの頻度分布

図 3-7 塩化物イオン表面濃度C1の頻度分布 0

4 8 12

0~20 20~40 40~60 60~80 80~100 100~120 120~140 140~160 160~180 180~200 200~220 220~240 240~260 260~280 280~300

頻度

塩化物イオン拡散係数Dc[mm2/年]

29.8(調査データ中央値)

229(設計値)

歪度=3.99 尖度=2.12

0 4 8 12

0~3 3~6 6~9 9~12 12~15 15~18 18~21 21~24 24~27 27~30 30~33 33~36 36~39 39~42 42~45

頻度

塩化物イオン表面濃度C1[kg/m3] 5.1(飛来塩分設計値)

3.2(調査データ中央値)

13(干満帯設計値)

歪度=4.82 尖度=2.16

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c) 開削トンネルにおける塩化物イオンの拡散の特徴

調査データと鉄筋位置塩化物イオン濃度の予測値の関係を図 3-8に示す.な お,予測値は鉄道開削トンネルの設計7)を参考にして,初期塩化物イオン濃度C2

は0.3 kg/m3,設計かぶりは50 mm,施工誤差は10 mmとして算定したものである.

調査データは,塩化物イオン拡散係数Dcおよび塩化物イオン表面濃度C1に,その 中央値を用いた予測値よりも広く分布していることが分かる.これより調査デ ータを包括する予測を行うためには,そのばらつきを考慮する必要がある.

そこで,次式のように塩化物イオンの拡散に対する安全係数cを考慮する.

 

1 2

2 1

, C

t D erf x C

t x C

c

c



 



 

 

 

(3.4)

ここに,C(x,t):深度x[mm],経年t[年]における塩化物イオン濃度[kg/m3]

c:安全係数

C1:コンクリート表面の塩化物イオン濃度[kg/m3] C2:初期塩化物イオン濃度[kg/m3]

Dc:塩化物イオン拡散係数[mm2/年]

調査データのばらつきを考慮するために,その95 %を包括する安全係数 cを 算定すると4.9となる.なお,この安全係数cを用いた予測値は,干満帯の設計 値と飛来塩分の設計値の中間を推移することが分かる.

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図 3-8 調査データと鉄筋位置塩化物イオン濃度の予測値の関係