(2) 実践事例2 ひとりはみんなのために,みんなはひとりのために
−Aさんとともに−
大庄小学校 6年 1.実践の動機
新年度になって,クラス替えがあった。5年生の時から担任しているAさんがとて も気になっていた。それは,友だちとの関わりが大変薄いということからである。そ こで,Aさんを中心に学級づくりを実践することとした。
Aさんの様子は次の通りである。
・ 話すこと 「書くこと」などの自己表現が不得手「 」
・自分から友だちに声をかけることがない
・友だちから声をかけられても応えない
これらの背景にある状況として ,自己表現力・コミュニケーション力の不足が考え, られた。
そこで,手立てとして 今月のイベント」
・「
毎月,学級会の時間を利用して,誕生月の児童が企画・運営するイベント。自己 表現につながる場として設定した。
構成的グループエンカウンター」
・「
自己表現力・コミュニケーション力を培い,仲間づくりにつながる活動として取 り組んだ。集団学習体験をとおして,行動の変容と人間的な自己成長をねらいと する活動である。★1
以上の2つを柱として,実践した。
2.実践(取り組み)
①自己表現力・コミュニケーション力向上のための計画
「 」 「 」 。
上段が 今月のイベント 下段が 構成的グループエンカウンター の例である
「構成的グループエンカウンター」については,集中的に実践することが有用と考 え,10月から12月にかけて道徳の時間や学級会の時間をつかって取り組んだ。
月 10月 11月 12月
大鬼ごっこ 体育館かくれんぼ
今月のイベント 長なわ
エンカウンター 無人島SOS 私は誰でしょう WANTED バースデーライン 名探偵ゲーム
以下には,「今月のイベント」と「構成的グループエンカウンター」の取り組みの 中から,Aさんの様子に変化が見られた顕著なものを挙げる。
②Aさんとともに
(ア)「長なわ」を通して
「今月のイベント」の中で,最も友だちとの関わりがもてたのが「長なわ」であ る。その関わりの様子を表情・行動・声で表す。
様子 Aさん 友だち(Aさんに対して)
・うつむいている・なわを見る ・気にかかるようにちらちら見る
表情
・笑顔なし ・笑顔なし
・参加しない
・立つ ・手をとって一緒に立つ
・顔をあげる
・参加する(列にならぶ) ・跳ぶタイミングを手拍子で教える
・跳ぶ *3 *1
・失敗する ・跳び方の見本を示す(Kさん)
・跳べた・・・・・・・・・ *4
・拍手
なし ・「みんなで跳ぼう」
声
・ いっしょにやろう」「
・ 失敗してもええやん」「 *2
・ がんばれ」「
・ こうやって跳ぶねんで (Kさん)「 」
・ やったー」「
・ すごいやん」「
「長なわ」を通して,Aさんは周りの子ども達と深く関わりができた。
友だちの励ましの行動(*1)や言葉かけ(*2)により,Aさんは跳ぼうと し(*3),そして跳ぶことができた(*4)。
このことより,Aさんにとって 「長なわ」は,友だちとの関わりの契機にな, ったといえる。
(イ) Kさんの登場
(ア)の「長なわ」の活動においても「こうやって跳ぶねんで」と見本を示してく れたKさんを中心に,実際にエンカウンターをした時の様子を紹介する。
(凡例)
Aさんの行動あり
Aさん Kさん ○
Kさんの行動あり バースデーライン(10月) WANTED(12月) バースデーライン WANTED ☆
お互いの関わりなし
表情 × ○ × ☆ ×
お互いの関わりあり
行動 × ◎ *5 × ◎ ◎
× × × ☆
声
Aさんの行動の変容とKさんの関わりを図で示すと以下のようになる。
<Aさん>
10月(バースデーライン) 12月(WANTED)
動かない サインする
↑
<Kさん>
:笑顔 表情
机の横に行く 目線を合わせて話しかける 質問を指さす 行動:: Aさん,サインして」
声 「
「机の横に行く 「目線を合わせて話しかける」などの思いやりあふれるKさんの」 働きかけがAさんの行動(サインする)を引き起こすきっかけとなった。それまで,グル ープエンカウンターで,友だちに話しかけられても応えないAさんにとっては初 めての大きな変化になった。このことより,Kさんの行動がAさんを動かしたと 言える。
③「ひとりはみんなのために,みんなはひとりのために」
(ア) Aさんを囲んだ女子同士の話し合い
「長なわ」の後,Aさんのことについて「女子だけ集まって話し合いたい」と申 し出があった。女子の中で,Aさんのことを「何とかしたい」という気持ちが高
まってきた。Aさんが変わるチャンスと捉え,子どもたちを信じ,託した。
残念ながら,Aさんに変化は見られ Aさん 友だち(Aさんに対して)
なかった。しかし,女子が問題意識を
表情 ・うつむいている
持って行動を起こしたことは,価値の
行動 ・じっとしている ・輪になる
あることであり,仲間意識の高まりが
声 ・なし ・ なんで話さへんの」「
感じられる。
・ このままやったら困るで「 」
Aさん (イ) 授業(社会科)の中で
11月まで 12月
授業で発言することはもとより,
・なし ・なし
本読みさえできなかったAさんが社 表情
・発言しない ・発言する
会科の時間に指名され発言した。 行動
・なし ・「ドイツ,イタリア」
その時の様子は右の通りである。 声
長い間発言のなかったAさんがいきなり発言し,驚く児童も多かったが,喜び 合う姿は見られなかった。子ども達に何故か聞いたところ,「Aさんの性格やか ら,やりすぎてまた言われへんようになったらあかんと思ったから」とのこと であった。「やっと言えたなー」と感心している子も多数いた。このことから,
Aさんの様子をよく観察・理解し,思いやりをもって,Aさんに合った対応を しようとしていることが伺える。
3.考察
友だちから声をかけられても目線を合わせず応えないAさんが友だちと関わるきっ かけとして有効であったのは,「今月のイベント」の(長なわ ・ 構成的エンカウンタ)「
ー」の(WANTED)であった。特に,長なわの授業では,女子が中心となってA
, 。 ,
さんに声をかけあい,励まし みんなと共に活動できるまでに至った Aさんはまだ 困難なことに立ち向かったり,自分から関わりを持とうとしたりするところまではい かないが,助け舟を出す子が増えてきていることから,周りの子ども達の成長を感じ る。一人ひとりの存在を認め合える雰囲気が少しずつ培われつつある。
<参考文献>
★1 國分 康孝「エンカウンターで学級が変わる」p.20 図書文化 1996
(3) 実践事例3 笑顔があり,仲よくできる学級づくり
水堂小学校 6年 実践の動機
1.
新年度,子どもたちの思いや実態をつかむため,そして,1年間の自分の学級作り の柱を決めるために,学級目標づくりを実施した。子どもたちの話し合いの中で出た 自分たちに欠けている点と願いから以下の5点があがった (複数回答可)。
「 」 以下は① 明るく楽しいクラス について,具体的なイメー ジ を 聞 い た も の で あ る 。
(複数回答可)
笑いのあるクラス・・・13人 愉快なクラス・・・・・10人 雰囲気の良いクラス・・8人 何でも言えるクラス・・4人 友だちのいるクラス・・1人 安心感のあるクラス・・0人 4月当初の学級は,なじめない雰囲気の中 「明るくない 「けんかが多い」等の, 」 様子(実態)であることが,子どもたちの意見を通して見えた。
そこで,子どもたちの実態と意見をふまえ,具体的な達成目標として,研究テーマ を「笑顔があり,仲良くできるクラス」と設定した。
実践 2.
このテーマに迫るため,様々な手だてを講じてきたが 「給食の時間」についての, 取り組みを報告する。
【笑顔を育む給食の時間】
昔から「寝食を共にする」ということは,親しくなるための条件のように言われて いる。寝ることと食べることの内の1つである「食」を共にする給食の時間は,子ど も達にとって,人とのかかわりが密になる時間であると考える。加えて,毎日の3食 のうちの1食を,教室で友だちと共にするのであるから,そういう給食の時間は,笑 子どもの意見 顔を育む最適の時間と考え,以下の3点に留意して実践した {。 }内,
①生活班で食べる
生活班とは,一定期間,学校生活の大半を共にする集団である。そこで,生活 班を 「寝食を共にする感覚」につながる集団と考えた。,
・班が自由だと,一人で食べる子ができたり,友だちの取り合いが起きたり するから良くない。
・生活班で食べると,話す機会も増えて,より仲よくなれる。
生活班で食べることは,一人で食べる子を作らず,話す機会が増えて仲よくな れる。このような子どもの声より,生活班で給食を食べることは,心の解放や安 心感につながったと考える。
②担任は生活班に入って食べない
担任が生活班に入って一緒に食べるのか,生活班に入らないのか,どちらも利 点があると思われる。以下,その利点をあげてみる。
担任が班に入って,一緒に食べる利点 A
子どもとの何気ない会話より,子どもの日常に触れる良い機会となる。
◎
子どもが興味や関心をもっている事項が見える。
◎
子ども同士の会話等から,人間関係を見ることができる。
◎
【学級目標づくりにおける願い(4月)】
4
8
12 13
19
0 5 10 15 20
⑤いじめのないクラス
④元気なクラス
③けんかのないクラス
②仲の良いクラス
①明るく楽しいクラス
(人)