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実践5年  手紙の定型 で書く力を育てる            岡本  祐子     『国語に関する世論調査』 (文化庁,H14)は,子どもの「考えをまとめ文章を構成する

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− 「書くこと」を意識した授業へのアプローチ −

4  実践5年  手紙の定型 で書く力を育てる            岡本  祐子     『国語に関する世論調査』 (文化庁,H14)は,子どもの「考えをまとめ文章を構成する

能力」(書く力)が低下していると報告した。この「書く力」を育てる授業開発を研究し  たい。加えて,何事にも「無関心」な学級の関心・態度の改善も意図していく。 

構成は,(1)子どもの実態  (2)授業開発の実際  (3)  手紙文の定型を手だて  とした。 

(1) 子どもの「書けない」実態 

  ①  子どもの「書けない」実態    下表は,学級(35 人)の「書くこと」の実態であ     る。この特徴から,子どもの「書けない」実態がわかった。 

1  日  記  3人の字数が著しく少ない。A君 47 字,B 君 100 字,C 君 135 字(4月) 

2  作  文  6人が一言も書けない。(課題「最近あった悲しい出来事」)(10 月) 

3  読書感想文  28人が文章構成できない。(9月) 

②  「書くこと」嫌いの原因 

子どもの実態(下表左)は,鶴田清司(都留文化大学)の「書くこと」嫌いの原因

(下表右)に結びつけると以下のようになる。 

  子どもの「書く力  ※鶴田「書くこと」嫌  いの原因    特    徴  書けない子どもの意識  原   因    1  字数が著しく少ない  長く書くのがめんどう  作品主義・大作主義  2  一言も書けない  書き方がわからない  作文技術の曖昧さ  3  文章構成できない  書くことがない  出来事・行事作文中心 

※(鶴田清司著『21世紀授業づくり75  国語の基礎学力を育てる』より) 

  鶴田は,この「書くこと」嫌いな原因について,次のように指摘している。 

○  長く書くのがめんどう  →大量な文章を書かなければならないという義務感。 

○  書き方がわからない  →自分の日常にテーマを見つける目を持っていない。 

○  書くことがない    →作文技術が習得できていない。 

  このことから,「書く力」を育てる授業開発の視点を次の3点に絞った。 

③ 「書く力」を育てる授業開発の要点  a  長く書く必要がない。 

b  子どもの日常にテーマを見つける。 

c  「書き方」を明確  (2)  手紙文を用いた授業開発  

   手紙文は,前述のa〜cを満たすことができる。さらに,d相手意識・目的意識が  明確であり,eコミュニケーションの楽しさを知り得る,という利点もある。 

   そこで手紙文を使った実践として,「心を結ぶ手紙文をつくろう〜お世話になった人  に感謝の気持ちを伝えよう〜」という授業を計画した。 

授業では, 書く手立て を明確にするため,手紙文の定型を用い,次頁のようなワ  ークシートを使った。 

①  授業で用いたワークシートと短冊 

  ワークシートは,手紙文の定型と慣用形式をヒントに作成した。 

(ワークシート)       (短冊)      

        

     

        

   

     

     指導にあたって次のことを工夫した。上記のワークシートと短冊の実践で示す。 

②  授業開発の要点(「書くこと」嫌いを克服するための手立て) 

1  長く書く必要がない(「長く書くのがめんどうな」子どものために) 

  ○ワークシートに短冊を貼っていく方法。短冊は1枚につき4行までとした。(注1) 

2  子どもの日常にテーマにする(「書くことがない」子どものために) 

  ○「お世話になった人」は誰か発問し,黒板に例示した。相手が決められない児童には 例示した中から選ぶよう助言した。 

○  前文・末文は内容を自分で選択し,チェックを入れながら書かせた。(注2)   

3  「書き方」を明確に(「書き方がわからない」子どものために) 

○  ワークシートで「前文・主文・末文」という手紙文の定型を示した。 

○主文の「感謝〜」は,「いつ・どこで・だれが・何を・どうした」を書く。(注3) 

   この実践を通じて,前月の作文で一言も書けない 6 人全員が書けるようになった。 

(3)   手紙文の定型と「書く力」 

①  Aさんの手紙文  一言も書けない6 人のうち,顕著なAさんの事例を示す。 

【Aさんの手紙文】  以下は,一言も書けなかったAさんの手紙文を 定型 , 文節(a〜 

) に分けたものである。 

お母さんへ 

前文  a  落ち葉が多くなり,くりやいもなどたくさんの食べ物がおいしくなりましたね。 

    b  体の調子はどうですか?わたしは元気です。 

主文1  c  毎日家でお母さんはごはんを作ってくれます。 

主文2  d  わたしは,そんな時「お母さんがいてよかったな。」と思います。ほかにわたしがねつを出し  た時,いろいろと世話をしてくれて,あの時はねつがひいていくようで気持ちがよかったです。 

末文  e  これからも体に気をつけて元気でいて下さい。 

    f  あと,お返事も下さい。(Aより)    (「前文,主文,末文」およびa〜fは引用者)       

︵あて名︶ 

末文 

  □相手を気づかう言葉   □また会いたい気持ち   

︵注

2︶    □今後のお願い     伝えたい感謝の気持ち 

  主文         

︵注3︶

 

  感謝している出来事 

  前文 □季節のあいさつ 

□相手を気づかう言葉

   

︵注

2︶ □お礼 □おわび 

           

︵注1︶

   

書き上げるごとにワー クシートにはっていく

この「書けた」実際を分析する。 

【Aさんの手紙文の分析】  Aさんは、「書くこと」嫌いを手紙の定型によって克服した。 

前文  a  自分の体験から作った季節のあいさつ文。 

    b  相手を気づかう言葉。 

主文1  c  感謝している出来事。「いつ,どこで,だれが,何を,どうした」を明確にした文章。 

主文2  d  伝えたい感謝の気持ち。 

末文  e  相手を気づかう言葉。 

    f  今後のお願い。 

  この手紙の定型が 授業開発の 3 つの要点 の手だてに,有効であったことを考察する。 

②  手紙の定型 の有効性   

「書けない」子どもの手だてを考察する。下記に「書けない」子どもの変容を示した。 

1「長く書くのがめんどう」(字数が著しく少ない3人)      

  ○  短冊の文字数は3人とも21〜81文字書いた。○  一番長く書いた子は手紙全文 で194文字書いた(A君)。  ○  最も書けない子が81文字書いた。 

2「書くことがない」(一言も書けない6人)      

○  文節(a,c,d)が自分の生活体験から書かれている。 

○  6人を含め35人全員が,自分の生活にテーマを見つけて書いた。 

3「書き方がわからない」(文章構成ができない28人)        

○  「手紙の定型」(a〜f)で,「書き方」がはっきりしたため,できなかった28人 を含め,35人全員が書けた。 

  この変容から「書けない」子どもが「書ける」ようになったことがわかった。短冊, 

自分の生活にテーマを,手紙の定型の手だてが有効であったと言える。特に,顕著な手  だてとして,手紙の定型があげられる。 

(4)  まとめにかえて  「書けないことからの脱却」 

「書く力」を育てる授業開発の3要点から,具体的には ワークシートの短冊 と 手  紙の定型 で実践した。その結果を整理すると次のようになった。 

○  長く書く必要がないワークシートの短冊は,「長く書くのがめんどう」な子に有効。 

○ 手紙文の定型は,「書き方がわからない」子どもに有効。 

これは,子どもの「書けない」ことから,「書けるようになった」実践である。それは, 

「書けないことからの脱却」の過程であった。 

①  「書けないことからの脱却」(実態の特徴の変容からみた成果) 

【字数が著しく少ない3人の変容】       

   事前(4月の日記)  事後(1月の日記) 

O君  47字  151字  Y君  100字  208字  H君  135字  279字 

左表は、字数著しく少ない3人 が、長く書くのがめんどうを克服し た変容である。 

特に作文嫌いだった3人は、少し ずつ長い日記を書くようになった。

  【一言も書けない6人の変容】    

Mさん  195字  Y君  191字  A君  250字  H君  120字  H君  83字  G君  169字 

 

【構成が出来ていない28人の変容】 

構成ができなかった28人は,「書き方がわからない」ことを克服して,全員ができた。 

②  手紙の定型を用いた授業開発 

上述の3つの成果の中で,特に「構成が出来ていない」は,手紙文の「前文・主文・ 

末文」という定型が文章構成の「始め・中・終わり」の理解に役立ったようだった。 

授業で構成について学習した後だったとはいえ,9月の時点で構成ができていない児  童が28人だった実態を考えると,大きな成果である。 

  ③「書けないことからの脱却」(まとめにかえて) 

今年度の取り組みを通して,書くことが苦手な子でも簡単に文章が作れるようにな  った。このことから,本年度の「手紙」を用いて,授業開発から「書けないことから の脱却」が実践できたと考える。 

次年度は,さらに,手紙文の学習を総合的な学習ともからめながら,帯単元として扱う  ことを考えていきたい。形式から始めた手紙文が,学習者個人の思いあふれる,人の心を  うつものへと発展していくような取り組みを研究していきたいと思う。 

 

5  おわりに 

今年度の研究は,「書くこと」を意識した授業へのアプローチであった。学年は違っても  学習者の感性を大事に育てたいという思いは一致した。 

実践をとおして,学習の手だての模索では,次のことが有効であった。 

【実践1年】  言語の入門期のことから,言語活動が好きになるような手だてを講じた。「一  言感想」が自他ともに「ことば」への興味を持たせた。色分けしたカードが活かせた。

「音律」がこころをゆさぶった。 

【実践4年】  言語に関心が高いということから,より高次な言語活動を試みた。他者へ  の「一口感想」が,より表現の理解に活きた。感動を結び目として,読書感想とポエ  ム(詩)のドッキングを試みた。「散文詩」の表現と音律が心豊かにした。 

【実践5年】  何事にも 無関心 で 書くこと も嫌いな子どもが変わった。ワ−クシ  ートの短冊と手紙の「定型」が文章の構成や理解にも活きた。全てに積極的になった。 

研究の途上で,野口シカ(野口英世の母)の手紙が話題になった。話題の中心は, 

書き手は,定型も構成も文法も無関係なのに,なぜ読み手の心を打つのか。 

という1点である。国語教師として,永遠の課題であり一度は取り組みたい課題である。 

次年度は,野口シカの手紙文を手掛かりに,この課題に取り組む。    (以  上) 

左表は、一言も書けない(0字)6人が「書 くことがない」ことを克服した変容である。 

○ 日常生活を課題にした作文が書けなかっ  が、自分の生活を見つめ,全員手紙文を書  き上げることが出来た。

ドキュメント内 Taro13-紀要表紙.jtd (ページ 124-128)