若者のキャリア形成支援に
第 3 章
(1)男女共同参画の視点に立った若者のキャリア形成支援の枠組
男女共同参画の視点に立った若者のキャリア形成支援にかかわる取組を企画・
実施する場合には、まず、それぞれの地域における若者の実情やニーズを把握し、
おもな対象や目的を絞ることが必要であろう。図表3-1は、自治体の男女共同参 画担当部局(以下、「担当部局」)や女性/男女共同参画センター(以下、「センター」)
における若者支援の取組状況を参考にして、取組の枠組(対象、目標の志向およ びプログラム例、連携先)を整理したものである。ここでは、おもな対象を、比 較的実施実績の多い「①学生」、その他の若年男女(働く女性、働く男女等)を 示す「②社会人」、多様かつ特別なニーズをもつ「③様々な生活上の困難に直面 する人」の3つにわけている。③には、現在の社会的課題として、あるいは男女 共同参画推進の視点から、支援の必要度が高い、無業女性、非正規雇用女性、シ ングルマザー、DV被害者等の対象が考えられる。この他、相談事業の個別の主 訴から共通する困難を掘り起し、講座等の取組につなげる場合もある(本調査研 究のアンケート調査では、DV被害者女性や、母娘関係に問題を抱えた女性、未 婚者の親等のニーズに対応する取組があげられた)。
図表の縦軸には、取組の目標の志向の目安として、「社会に参画する」「社会と つながる」「働く」の3つを示した。「社会とつながる」は、人や地域とつながっ たり、社会の現状・課題について知る、理解するといった、段階的には初期ある いは基本の目標といえる。これを中間に置き、より地域や社会に参画することを 志向するか、就労や働くことを志向するかによって、対象ごとにプログラム例を
若者のキャリア形成支援に かかわる取組事例
第 3 章
取組の枠組および事例の読み方
1
第3章 若者のキャリア形成支援にかかわる取組事例
位置づけている1)。図表の下段には、対象ごとの連携先例をあげている。
以下①~③の3つの対象ごとに、取組の枠組を簡単に説明する。
①学 生
大学生を対象とした取組は、担当部局やセンターでの実施実績も比較的多い取 組である。担当部局やセンターで独自に講座を企画し、公募で若者の参加者を集 めるのは難しくても、近隣の大学・短大・専門学校等、若者が集まる学校と連携 して事業を実施すれば、多くの学生の参加が期待でき、男女共同参画や推進拠点 について知ってもらう機会にもなる。プログラム例としては、大学の授業やゼミ の一環として、あるいは一般市民も参加できる公開講座等として、男女共同参画 やデートDV防止の啓発等についての講座が実施されている。また、中高生に対 する学習支援やデートDV防止啓発講座等を、大学生が主体となって行う活動を センターが支援し、社会に参画するための力量形成や、男女共同参画にかかわる 気づきを促す取組も行われている。より「働く」ことを志向する取組としては、
就職活動にあたって生涯を見据えたライフプランニングについて考える機会を提 供したり、インターンシップを受け入れて、センターの事業へのかかわりを通し て、働くことや男女共同参画について意識醸成を図っている。
これらの取組は、学生が、これから職場や地域、社会に参画していくにあたり、
男女共同参画社会づくりの次世代の担い手になり、自身のキャリア形成を長期的 に捉えながら主体的に行動していくための支援として考えることができるだろ う。
②社会人
この対象は、「働く女性」や「おおよそ18 ~ 35歳の男女」といった広く若者 を対象として実施されている取組を示している。女性は、企業等において就労を 継続していくにあたり、男性に比べて職業能力形成の機会や身近なロールモデル が少ないことが指摘されている。そのため、担当部局やセンターが、働く女性の キャリア形成を支援する役割を担うことは重要であり、企業等との連携を図りつ
1) 図表の整理の上では、各プログラムの主要な目的の志向を区別するために「社会に参画する」と「働 く」を分けているが、実際にはもちろん、2つのカテゴリーは重なり合っている。
ている。
一方、働く女性も含め、広く若年女性を参加対象とし、まちづくりや地域活性 化にかかわる企画を通して次世代リーダーの育成に取り組む地域もある。これら の取組は、個人としての主体的活動や力量形成、男女共同参画の意識醸成を図る とともに、女性の社会参画や意思決定過程への参画、男女共同参画の地域づくり をめざすものであるといえよう。
③様々な生活上の困難に直面する人
③を対象とした取組は、特に女性が直面しがちな様々な困難を、社会的課題と して捉え支援するものである。シングルマザーや無業女性を対象とした取組は、
「働く」ことを目標としていても、就労にはすぐにつながらないケースも多く、
このような場合は、精神的な回復や生活自立、社会とつながる支援がまず最初の 目標になろう。この他、パソコン等のスキルアップの講座や、当事者が語り合う 場の提供、自助グループ運営の支援、就労体験等、対象のニーズに合わせた取組 を、庁内や若者サポートステーション等、効果的な事業実施が期待できる関連機 関と連携して行っている。
他部局や他機関で実施されている若者支援の取組との大きな違いは、これらの 個人(参加者)への支援によってめざしているのが、男女共同参画の社会(地域)
づくりである点にある。取組を企画・実施する支援者は、常に取組状況を俯瞰し、
女性の社会参画やエンパワーメント、意思決定過程への参画、性別役割分担意識 の解消、様々な人が生きやすい社会(地域)づくり等がめざされているか、効果 がでているかを確認しつつ、取組を進めていくことが重要であろう。
第3章 若者のキャリア形成支援にかかわる取組事例
(2)取組事例の読み方
図表3-2は、本章次節に掲載されている若者を対象としたキャリア形成支援の 取組事例の一覧である。担当部局やセンターにおける14の取組事例について、3 つの対象別に、タイトル(取組の特徴を示す見出し)、事業名、目標の志向(前 出図表3-1参照)、機関名、および掲載ページを示している。
それぞれの取組事例の最初にも、タイトルと機関名、連絡先、事業名を記して いる。また、複数のキーワードも示した。一覧や各取組事例の最初をみて、関心 のあるカテゴリーから読み進めるとよいだろう。学生を対象とした取組は、重要 であるとともに比較的企画しやすく、実際に各地域において、大学と連携した多 図表3-1 男女共同参画の視点に立った若者のキャリア形成支援の枠組:対象、目
標の志向別プログラム例
③様々な生活上の困難に 直面する人
②社会人
①学 生 対象
対象例 無業者、非正規雇用者、
シングルマザー、DV 被害者等 働く女性、働く男女、
若年女性、若年男女等 大学生、短大生、
専門学校生等
目標の志向によるプログラム例の位置づけ 社会に参画する社会とつながる働く連携先例 大学・短大・専門学校
(キャリアセンター、男女共同 参画室、関連するゼミ等)
団体・NPO 教育委員会
民間企業 経済団体 団体・NPO
民間企業
若者サポートステーション ハローワーク
団体・NPO ユースリーダー養成/中高生支援の活動 デートDV防止啓発 男女共同参画関連ワークショップ
インターンシップ 生涯を見据えたライフプランニング支援 まちづくり講座・活動 リーダーシップ養成セミナー おしゃべりカフェ/交流会 ワーク・ライフ・バランス講座 ロールモデル提示ワークショップ おしゃべりカフェ 就労体験の場の提供 当事者グループ活動支援就労/起業支援 スキルアップ講座︵パソコン等︶
*自治体や女性/男女共同参画センターでの取組状況調査をもとに、調査研究検討委員会での討議を踏まえ作成
取組事例を多く取り上げている。
各取組事例は、「取組の特色」「企画にあたって」「事業概要」「男女共同参画の 視点にかかわる工夫」「成果・効果」「今後の展望と課題」の項目にわけて示され ている。
なお、取組事例の記述は、本調査研究の一環として行ったヒアリング調査にも とづいており、調査者の主観的な見解も含まれている。事例の抽出は、地域、自 治体の規模、取組の対象、目的、方法等のバランスを考慮して行った。
第3章 若者のキャリア形成支援にかかわる取組事例
図表3-2 取組事例一覧
タイトル 事業名 目標の志向 機関名 ページ
①学生を対象とした取組
1 大学等と連携した男女共同参画の視 点による啓発・キャリア形成事業
未来館フォーラム(大学等と
の連携講座) つながる福島県男女共生セン
ター 74
2
ワールド・カフェの手法で、大学生 が男女共同参画社会について意見交 換
「学生のための男女共同参画 ワールド・カフェ 100 人男 子会×女子会っちゃ!〜学生 だけの本音ミーティング in 北 九州〜」
つながる
文部科学省生涯学習 政策局男女共同参画
学習課 81
3 大学生を対象としたライフプラン等 を考えるキャリア教育授業の推進
大学における「男女共同参画 の視点によるライフキャリア 教育」支援事業
つながる
神奈川県県民局くらし 県民部人権男女共同参 画課
86
4 中高生の居場所づくり活動を通し て、大学生の力量形成の場を提供
「ピア・サポーター養成講座」
と中高生のための居場所づく り事業「たまりんぱ」
つながる 参画する
札幌市男女共同参画
センター 92
5 学生リーダーを養成し、中学校・高 校でデート DV 予防講座を実施
「ユースリーダー養成講座」と 中学・高校での DV予防講座
つながる
参画するもりおか女性センター 99 6 学生の活動支援等、個別ニーズに合
わせた課題解決型事業の展開
大 学 生による無 償 学 習 教 室
「宿題カフェ」の活動支援 (他)
つながる
参画する静岡市女性会館 106 7 インターンシップで主体的な社会づ
くりの担い手になるきっかけを提供大学生インターンシップ つながる 働く
川崎市男女共同参画
センター 114
②社会人を対象とした取組
8 若年女性によるまちづくり活動を支 援し、次世代リーダーを育成
次世代人材育成事業「松江市 21世紀ウィメンズプロジェクト」
つながる 参画する
松江市市民部男女共
同参画課 123
9 働く女性を対象としたロールモデル の提示と活動支援
「キャリアサロン for Working Women」
つながる 働く
公益財団法人日本女 性学習財団 129 10働く女性を対象とした連続講座で資
質向上とネットワーク形成を支援 「働き女子のハピキャリ道場」つながる 働く
福岡市男女共同参画
センター 135
③様々な生活上の困難に直面する人を対象とした取組 11スタッフの企画会議で相談からニー
ズをひろいあげ講座事業へ
「母と娘の心地イイ関係〜母 ゴコロ、娘ゴコロはムズカシ イ !? 〜」
つながる姫路市男女共同参画 推進センター 141
12困難を抱えた若年無業女性の支援
―県の拠点施設による総合支援―
「おはなしカフェ」
「自分にあった働き方をみつ けよう:女性の働き方講座」
つながる
働く 埼玉県男女共同参画 推進センター 147
13若年無業女性を対象とした講座、就 労体験、居場所づくりの充実した取組
「ガールズ編しごと準備講座」
就労体験「めぐカフェ」
「ガールズ『いちご』の会」
つながる 働く
公益財団法人横浜市男 女共同参画推進協会 154
14シングルマザーの不安な気持ちを支 える就労応援とグループ相談
「シングルマザーのための就 労応援講座」「シングルマザー のほっとサロン」
つながる 働く
世田谷区立男女共同 参画センター 160
* 取組事例は、第一に対象①〜③、第二に目標の志向(「社会とつながる」→「社会に参画する」→「働く」)、
第三に都道府県の順序に従い並べている。
* 「目標の志向」は、図表 3-1 に示すカテゴリーをさす。「つながる」=「社会とつながる」、「参画する」=「社 会に参画する」。