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第 3 章 自律移動ロボットの構成 30

4.6 自己位置・姿勢の推定の評価実験

4.6 自己位置・姿勢の推定の評価実験

4.16 つくばチャレンジ2014の課題コースの占有格子地図 を用いる.これによって確率的に自己位置・姿勢の識別を行う.

一般的に自律走行における自己位置・姿勢の再現性の評価は難しい.自律走行では歩行者 や他のロボットの回避行動を含むため,走行毎に環境条件と走行軌跡が異なる.そのため,

走行軌跡の単純な比較ができない.ゆえに,著者は自己位置・姿勢の推定に対する評価は,

複数回の走行から統計的に行うよりも,それぞれの実験走行における発生事象と,それが自 己位置・姿勢の推定に及ぼした影響を考察した方が有用であると考える.したがって本研究 では,実際に屋外環境をロボットに自律走行させて自己位置・姿勢の推定を行った結果から,

その有効性を検証する.

4.6 自己位置・姿勢の推定の評価実験

4.6.1 安定性の評価

自己位置・姿勢の推定の破綻

一般的に2次元測域センサのスキャンデータと占有格子地図のマッチングが正確に行われ ている状態では,自己位置・姿勢の推定精度は格子サイズオーダーであるため,格子が小さ いほど精度が高くなる.一方,ランドマークを観測したスキャンデータと,そのランドマー クを表す地図上の占有格子との間に誤マッチングが生じた場合,それによって推定した自己 位置・姿勢に誤差が生じる.その結果,さらなる誤マッチングが発生する.この繰り返しに よって自己位置・姿勢の誤差が増大し,最終的にロボットは正確な自己位置・姿勢を推定す ることができなくなる.このような状態から正常にマッチングできていた状態に復帰するこ とは非常に難しい.これが本研究で定義した自己位置・姿勢推定の「破綻」である.占有格 子地図とのマッチングによる自己位置・姿勢の推定は,この「破綻」を抑制することが大き な課題である.したがって,本研究では測域センサと占有格子地図のマッチングによる自己 位置・姿勢の推定を安定性によって評価する.

自己位置・姿勢の推定の安定性に対する評価手法

自己位置・姿勢の推定の安定性は,環境中の物体を計測したスキャンデータが占有格子地 図とマッチングした割合(マッチング率)が大きいほど高いことから,マッチング率によって 評価できる.本研究では,図示したときの視覚的な認識の容易性からマッチング率と等価な

「非マッチング率」で安定性を評価する.非マッチング率は,式( 4.10)に示すとおり,環境 のセンシングに成功したスキャンポイントのうち,占有格子地図とマッチングしなかった割 合を表す.非マッチング率が高い状況は,ロボットの自己位置・姿勢の推定ができない状況 である.このような状態が長く続くほど,自己位置・姿勢の破綻が発生する可能性が高くな る.すなわち,非マッチング率が高いほど自己位置・姿勢の推定の安定性が低いといえる.

非マッチング率= 占有格子地図とマッチングしなかったスキャンポイント数

環境のセンシングに成功したスキャンポイント数 (4.10)

4.6.2 実験走行

本手法における自己位置・姿勢の推定の安定性の検証をつくばチャレンジと同程度の距離 と環境で行うため,宇都宮大学工学部キャンパスに全周1200[m]の実験コースを設定した.

図4.17の左側にコース全体を示す.この図の右側に本手法によって作成した占有格子地図 を示す.この実験コースで,201410月に著者が実験走行を行った結果を図 4.17の占有 格子地図上に示す.歩行者に対するロボットの回避行動が数回あったが,コースの全区間で 安定して走行した.図4.17の各区間の自律走行の非マッチング率の大きさを円の半径で表

4.6 自己位置・姿勢の推定の評価実験

す.また,走行区間による非マッチング率を図 4.18に示す.各区間における走行の考察を 次に述べる.

区間(1)

図4.17に示す区間(1)は,実験コースにおけるロボットの進行方向の右側に建物,左 側に植栽があり,マッチングに用いることのできるランドマークが比較的多い.ロボッ トはスタート直後に歩行者を回避したため,そのときの動きによって一時的にマッチ ングがずれて非マッチング率が増大した.しかし時間経過によって姿勢が安定し,再 度非マッチング率が低くなった.このような一時的な姿勢の誤差は,ロボットの姿勢 が大きく変化したときのジャイロの応答性によるものであり,姿勢の安定化に伴って 収束する.

区間(2)

図4.17に示す区間(2)の前半は直線であり,後半が変化の多い曲線的な経路となって いる.この区間では周囲にランドマークとなる建物が多いため,区間全体を通じて非 マッチング率が比較的低く,ロボットは安定した自己位置・姿勢の推定ができている.

区間(3)

図4.17に示す区間(3)の後半で建物などのランドマークが少なくなっている.そのた め,図4.18に示すように,場所によっては非マッチング率が0.8以上となり,ロボッ トの自己位置・姿勢の推定の安定性が低下した.

区間(4)

図4.17に示す区間(4)は実験コースにおいて最も長い直線区間である.一般的に直線 区間ではロボットの走行は安定する.後半部分では非マッチング率が高くなっている が,これはロボットが空き地を通過する際に,雑草をセンシングしたことによると考 えられる.

区間(5)

図4.17に示す区間(5)は,コースの曲がり角で非マッチング率が高くなっている.先 に述べたように,これについても姿勢の変化に対してジャイロオドメトリの応答が遅 れることが原因と考えられる.

区間(6)

図4.17に示す区間(6)の前半部分はランドマークとなる建物があるため,自己位置・

姿勢の推定は安定する.後半は建物がなくなり,雑草をセンシングするため,若干非 マッチング率が向上している

区間(7)

図4.17に示す区間(7)のコースの曲がり角で非マッチング率が高くなっている.右手