第 3 章 自律移動ロボットの構成 30
4.5 占有格子地図の作成実験
4.5 占有格子地図の作成実験
Start & Goal R1
R2
R3
R4
R5
R6
R7
図 4.7 宇都宮大学工学部に設定した実験コース
-80 -60 -40 -20 0 20 40 60 80 100
-100 -80 -60 -40 -20 0 20 40 60 80
[m]
[m]
Start,Goal
Gyro-Odometry1 Gyro-Odometry2 Gyro-Odometry3
図 4.8 ジャイロオドメトリによる走行軌跡 ジャイロオドメトリによる走行軌跡
地図作成の再現性を評価するため,著者は実験コースを3回,ロボットを手動走行させ てジャイロオドメトリのデータと2次元測域センサのスキャンデータを取得した.図4.8に 3回の実験コース走行における走行軌跡を示す.ロボットが進路を大きく変更する度に誤差 によって形状が大きく歪んでいることがわかる.特に進行方向がほぼ直角に折れ曲がるコー
4.5 占有格子地図の作成実験
-80 -60 -40 -20 0 20 40 60 80 100
-100 -80 -60 -40 -20 0 20 40 60 80
[m]
[m]
DGPS Error
DGPS1 DGPS2 DGPS3 High Accuracy Point1 High Accuracy Point2 High Accuracy Point3
図 4.9 DGPS測位点の軌跡とDGPS高精度測位点
ナー部の前後で大きな誤差が生じている.これ以降,この走行軌跡を基準として占有格子地 図を作成する手法について述べる.
DGPS高精度測位点
図4.9に,実験コースを手押しでロボットを3回走行させて取得したDGPS測位の軌跡 と,それらより抽出した高精度測位点を示す.特に図に示す“DGPS3”では,“DGPS Error”
で示す区間で高い建物によるマルチパスと考えられる測位精度の低下区間がある.これらを 除いて,DGPS高精度測位点が直線走行区間から抽出されている.
4.5.2 DGPS高精度測位点の評価で作成した地図
本手法を用いて,ジャイロオドメトリとDGPS高精度測位点よりロボットの走行軌跡を推 定した結果を図4.10に示す.コースの重複区間である“R1”において走行軌跡に最大2[m]
程度のずれが生じている.また,DGPS測位の誤差が最も大きい“PF3”を用いて作成した 占有格子地図を図4.11に示す.“R1”において走行毎に観測した同一のランドマーク(建物 の外壁)が一致しない不整合が生じている.これは閉ループ問題が解決されていないことを 示している.
4.5 占有格子地図の作成実験
-80 -60 -40 -20 0 20 40 60 80 100
-100 -80 -60 -40 -20 0 20 40 60 80
[m]
[m]
Start,Goal
Loop Error1 Loop Error2
PF1 PF2 PF3
図 4.10 DGPS高精度測位点から推定した走行軌跡
Start, Goal
DGPS
Estimated Trajectory by Particle Filter DGPS High Accuracy Point Loop Error2
Loop Error1
Estimated Trajectory by Particle Filter
図 4.11 DGPS高精度測位点から推定した走行軌跡による占有格子地図
4.5.3 DGPS高精度測位点とマッチングの評価により作成した地図
図4.12に,本手法を用いてDGPS高精度測位点およびマッチングによる評価で推定した 3回分の走行軌跡を示す.DGPS高精度測位点のみで推定した走行軌跡(図4.10)と比較し
4.5 占有格子地図の作成実験
て重複区間“R1”において3回の走行軌跡がほぼ一致した.図4.13に,“PF3”が表す走行 軌跡を用いて作成した占有格子地図を示す.複数回観測したランドマークの地図上の不整合 が解消されていることがわかる.すなわち,閉ループ問題が解決された.その一方で,直線 区間では地図に若干の歪みが生じている.これについて筆者は,DGPS高精度測位点の間隔 が長い区間では,パーティクルフィルタに設定したロボットの姿勢の誤差によって走行軌跡 に誤差が累積するためと考えている.
4.5.4 コーナーでのリサンプリングにより作成した地図
図4.12において,コーナー付近(図4.12に示す“Corner”)で3回の走行軌跡がほぼ重なっ ていることから,これまでの本手法による走行軌跡推定の再現性が比較的高い.このことか ら,さらに高精度な占有格子地図を作成するため,コーナーをリサンプリング点に設定し,
既知領域での閉ループ処理を併用して再度走行軌跡の推定を行う.本研究においてコーナー の定義は,ジャイロオドメトリによるロボットの姿勢変化が60[deg]以上の地点とした.
図4.14に推定した走行軌跡を示す.3回の走行軌跡が全区間を通じて1[m]以下でほぼ一 致している.図4.12に示すDGPS測位点と閉ループ処理によって推定した走行軌跡と比較 して直線走行区間の歪みが小さく,精度の再現性が高い走行軌跡が得られている.この図に
おける”PF3”の走行軌跡を用いて作成した占有格子地図を図 4.15に示す.方位と形状の精
度が高い占有格子地図が作成できていることがわかる.
4.5.5 つくばチャレンジ2014の課題コース
本研究で構築した占有格子地図の作成手法を用いて,著者は図4.2に示すつくばチャレン ジ2014の課題コースの地図を作成した.図4.4に示すジャイロオドメトリによる走行軌跡 を,DGPS高精度測位点,および閉ループ処理を用いて補正して作成した占有格子地図を 図4.16に示す.本研究では占有格子地図のデータサイズと,走行環境に対して必要な分解 能から,占有格子地図の格子サイズを10[cm]とした.この図において“White”の領域がロ ボットの走行軌跡で,“Black”の領域が建物などのランドマークをセンシングした測域セン サのスキャンデータによる占有格子を表す.先述の閉ループ問題の解決によって,課題コー スの往路と復路が重なる区間でランドマークが相互の位置関係に矛盾なく再現されている ことがわかる.一般的には,占有格子地図の範囲が大きくなるほど閉ループ処理が難しくな る.これに対して本手法は地図の範囲によらず正確な地図を作成することが可能である.
本手法では占有格子地図をビットマップ形式の画像として作成する.地図作成において環 境中の建物の外壁などのランドマークを確実に占有格子とするため,測域センサのスキャン データをすべて描画する.そのため,地図上には歩行者の軌跡などのノイズも含まれる.こ のようなノイズを地図に描画しない手法として,同一場所で複数回観測された対象を地図に 描画する手法が用いられている.しかし本研究において,著者は環境のランドマークを確実
4.5 占有格子地図の作成実験
-80 -60 -40 -20 0 20 40 60 80 100
-100 -80 -60 -40 -20 0 20 40 60 80
[m]
[m]
Start,Goal
PF1 PF2 PF3 Corner
図 4.12 DGPS高精度測位点と閉ループ処理により推定した走行軌跡
DGPS
Estimated Trajectory by Particle Filter DGPS High Accuracy Point Estimated Trajectory by Particle Filter
図 4.13 DGPS高精度測位点と閉ループ処理より推定した走行軌跡による占有格子地図 に描画することを重視する.したがって占有格子地図において歩行者の軌跡などのノイズが 顕著な場合,人手によって既存のペイントツールを用いて削除・修正することとした.