第 7 章 環境情報地図の構築 89
7.3 環境情報地図を用いた実験走行
7.3.1 低所特徴を用いた自己位置・姿勢の推定
外乱に対する安定性の評価
著者は占有格子地図の元になったジャイロオドメトリに対してノイズを付加した状態でオ フラインで走行再現実験を行い,そのときのMonte Carlo Localizationによる自己位置・姿 勢の推定結果を比較した.ノイズはロボットの姿勢に対して±5.0[deg]の範囲で与えた.自 己位置・姿勢の推定に対して,低所特徴を用いなかった場合を図 7.10 (a)に示す.図で示 す“White Line”はコースである.図中の“Error”に示す区間で走行軌跡に大きな誤差が生じ た.実際の走行ではコースの逸脱に相当し,左側の芝生を走行している状態である.一方,
自己位置・姿勢の推定に低所特徴を用いた結果を図 7.10 (b)に示す.全体的に誤差が小さ く,コースの逸脱は生じなかった.以上より低所特徴を自己位置・姿勢の推定に用いること で,外乱に対して安定性が向上することが確認できた.
実験走行
つくばチャレンジ2015の10月17日の第4回実験走行会において,環境情報地図の低所 特徴を用いた自己位置・姿勢の推定の有効性を検証した.その手法は次のとおりである.
第4章で述べた占有格子地図と2次元測域センサのスキャンデータのマッチングによる 自己位置・姿勢の推定手法2)に対して,低所特徴による自己位置・姿勢の推定を加えて実 験走行を行った.ここで再度説明するが,本研究では第4章4.6節で示したように,自己位 置・姿勢推定を安定性によって評価する.それには,スキャンデータ(2次元測域センサの スキャンデータ,および3次元測域センサによる低所特徴の抽出結果)と,環境情報地図と の非マッチング率を用いる.
実験走行の結果を図7.11に示す.この図において非マッチング率を円の大きさで表す.
2)Monte Carlo Localization
7.3 環境情報地図を用いた実験走行
(b) 低所特徴を用いた自己位置・姿勢の推定
(a) 低所特徴を用いない自己位置・姿勢の推定
ロボットの 推定走行軌跡
誤差
ロボットの 推定走行軌跡
図 7.10 自己位置・姿勢の安定性の比較
• Redの円: 占有格子地図のランドマーク
• Greenの円: 環境情報地図上の低所特徴
図7.12にランドマークと低所特徴の非マッチング率と,ランドマークと低所特徴の非マッ チング率の差を示す.これらの正の差が大きいほど,自己位置・姿勢の推定に対して低所特 徴による寄与が大きい.
著者は実験走行で行った自己位置・姿勢の推定について顕著な特徴を示した以下の区間よ り,自己位置・姿勢の推定における低所特徴の有効性を考察した.
7.3 環境情報地図を用いた実験走行
Start Goal
(1)
(2) (3)
ランドマークとの非マッチング率 (小さいほど自己位置・姿勢の推定の安定性が高い) 低所特徴との非マッチング率 (小さいほど安定性が高い)
(1) 公園
(2) つくばセンター
(b) ランドマークや低所特徴が少ない開放区間
(a) 建物に囲まれた区間
(b) 街路樹と縁石の近傍
(3) 横断歩道,および一般歩道
(b) 一般歩道 (a) 横断歩道
(a) 芝生に近い開放区間 (a)
(b)
(a)
(b) (b)
(a)
図 7.11 ランドマークと低所特徴を用いた自己位置・姿勢の推定
0 0.5 1
0 200 400 600 800 1000 1200 1400 1600 1800
Matching Error Rate
Travel Distance [m]
(1) (2) (3)
Landmark LowPlaceFeature
-1 -0.5 0 0.5 1
0 200 400 600 800 1000 1200 1400 1600 1800
Difference
Travel Distance [m]
(1) (2) (3)
図 7.12 ランドマークと低所特徴の非マッチング率
7.3 環境情報地図を用いた実験走行
(1) 公園
図7.11 (1)-(a)に示す区間は周囲にランドマークが少ない区間である.そのため,図7.12 の(1)に示すとおり2次元測域センサのスキャンデータと占有格子地図のマッチング が十分でなく,非マッチング率が大きくなった.一方,ロボットは歩道と芝生領域の 境界を低所特徴として抽出しているため,低所特徴の非マッチング率は小さくなった.
これはこの区間において低所特徴が安定した自己位置・姿勢の推定に効果的であるこ とを示している.一方,図 7.11 (1)-(b)に示す開放区間のロボットの走行経路は芝生 から離れていることから,低所特徴よりもランドマークのマッチングによって自己位 置・姿勢の推定の安定性が維持されている.
(2) つくばセンター
図7.11 (2)-(a)に示す区間は,ランドマークとなる建物に囲まれていることから,自
己位置・姿勢の推定の安定性がランドマークとのマッチングによって維持できている.
また,ランドマークおよび低所特徴の両方の非マッチング率の変動が大きい.その理 由は,課題タスクである人物探索によってロボットが頻繁に進行方向を変えたことで,
一時的に非マッチング率が高くなったためである.
図7.11 (2)-(b)では,先述のとおり街路樹を囲む縁石が低所特徴として抽出されてい
る.このため図7.12に示すとおり,この区間における低所特徴の非マッチング率が比 較的低くなっている.これは縁石を用いた自己位置・姿勢の推定の安定性が高いこと を示しており,縁石との接触のリスクを低くすることに効果的と考えられる.
(3) 横断歩道,および一般歩道
図7.11 (2)-(a)に示す横断歩道では,車道であることから周囲にランドマークが少な
いため,自己位置・姿勢推定の安定性が低い.しかしながら,ランドマークが観測で きない区間は10[m]程度であること,および横断歩道は直線であることから走行軌跡 の誤差は比較的小さい.
図7.11 (2)-(b)に示す歩道では,図 7.12 (3)に示すとおり,この区間のランドマーク の非マッチング率が高くなっている.これは進行方向に対してロボットの右側が斜面 であることから,ランドマークによる自己位置・姿勢の推定精度と安定性が低下する ためである.
一方,低所特徴として図 7.7に示したとおり,ロボットの左側にある歩道端が比較的 精度よく抽出できている.このため低所特徴の非マッチング率が低く,ほぼ一定値と なっている.したがってこの区間ではランドマーク(右側斜面)よりも低所特徴(歩道 端)による自己位置・姿勢の推定の寄与が大きい.
以上より,自己位置・姿勢の推定においてランドマークに加えて低所特徴を用いることに によって,より多くの市街地環境で安定性を高く維持できる.
7.3 環境情報地図を用いた実験走行