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第 8 章 一般市街地における自律実験走行の考察 106

8.3 実験走行の考察

8.3 実験走行の考察

8.3.1 リタイアした事例

20131117日のつくばチャレンジ2013の本走行では,第2探索エリアを通過した地 点で本来のコースより外側にずれて走行した.そのため,図8.2に示す縁石に接触してリタ イアとなった.この縁石はコースから80[cm]程度離れており,コース上を走行したならば,

接触することはなかった.著者はリタイアの原因を,ロボットの進路変更時における自己位 置・姿勢の推定精度が低下したためと考えている.ロボットの進路変更時には,ロボットの 姿勢が大きく変化し,それに伴って2次元測域センサの視野も大きく変化するため,それま で連続的に観測できていたランドマークが観測できなくなる.これによって,2次元測域セ ンサのスキャンデータと占有格子地図の誤マッチングが生じる可能性が高くなる.つくば チャレンジ2013の第6回,および第8回実験走行会においても地図との誤マッチングによっ て自己位置・姿勢の推定が破綻し,リタイアとなった.この問題の対策として,ロボットが

60[deg]以上の進路変更点ではマッチングの評価とパーティクルのリサンプリングを行わな

いこととしていた.しかし,このことによって,つくばチャレンジ2013の本走行では図8.3 に示すように進路変更点付近ではパーティクルが拡散し,自己位置・姿勢の推定精度が低下 させた.その結果,ロボットがコースから80[cm]程度離れた地点を走行した.この程度の 誤差ならば走行中に修正が可能であるが,図8.2に示すとおり,進路上に識別が困難な縁石 があったため,回避できず車輪が引っ掛かってリタイアとなった.また,表8.22013-6th の記録示すとおり,20131027日の第6回実験走行会の記録走行においてもほぼ同じ 場所で縁石に接触し,リタイアとなった.

著者らは,このつくばチャレンジ2013の時点で縁石に接触してリタイアする問題は,自己 位置・姿勢の推定誤差の他に縁石がセンシングできていないこともあると考えていた.10[cm]

以下の縁石はつくばセンター以外にも一般的に数多く見られ,ありふれた存在である.今後,

さらにロボットが設定されたコースを離れて領域を探索しながら走行するためには,低い物 体の検知を含めた走行可能領域を識別する手法を開発する必要がある.したがって本研究 では,つくばチャレンジ2014では環境情報地図を用いた走行不可能領域の回避を実装した.

さらにつくばチャレンジ2015では3次元測域センサによる低所特徴の識別を構築し,実装 した.これらの技術構築によってロボットがつくばチャレンジ2013では識別できず回避出 来なかった縁石を識別し,回避できるようになった.

8.3.2 完走した事例

つくばチャレンジ2014の本走行におけるロボットの走行軌跡および対象人物の検知結果 について,第1探索エリアを図 8.4,第2および第3探索エリアを図 8.5に示す.以下,環 境情報地図における「走行禁止領域」と「走行不可能領域」の有効性について述べる.

8.3 実験走行の考察

縁石

8.2 つくばチャレンジ2013本走行において,リタイアしたときの様子

リタイア地点

ロボットの推定走行軌跡

(パーティクルの軌跡)

8.3 つくばチャレンジ2013本走行において,リタイアに至った走行軌跡 走行禁止領域による探索対象人物の誤検知の低減

第1探索エリアでは,ロボットは誤検知なく対象人物にアプローチできた.これに対して 第2および第3探索エリアでは多くの誤検知をした.先述のとおりロボットは,対象人物の 探索を2次元測域センサの受光強度のみで行っている.そのため,環境中の建物や設置物の 金属部位が誤検知の対象となりやすい.ロボットによる誤検知の頻度が高い物体の例として,

建物外壁にあるガラス扉の枠や自動販売機などがある.また,自転車の反射板も検知頻度が 高く,自転車が停止している場合は,ほぼ確実に誤検知する.一方,自転車が動いている場 合はロボットがアプローチする前にキャンセルされる.したがって,本研究では誤検知しや すい自転車や設置物が集中している建物の外周,露店,駐輪場,および歩道の中央領域を走

8.3 実験走行の考察

探索対象人物1

対象人物候補 確定した対象

8.4 つくばチャレンジ2014 第1探索エリア 行禁止領域に設定し,ロボットが対象人物の探索を行わないようにした.

走行不可能領域による回避動作

図8.5に示す第3探索エリアでは,つくばチャレンジ2014の全実験走行会を通じて街路 樹の近傍に対象人物がいることが多かった.街路樹周辺には2次元測域センサでは識別が難 しい縁石がある(8.6).これらを回避するため,著者が環境情報地図において街路樹周辺 を走行不可能領域に指定した.すなわち第 7章で述べたとおり,ロボットが「走行不可能 領域」に指定した街路樹に接近した場合には「擬似スキャンポイント」が生成される.これ に対してロボットが回避動作をとることで縁石を回避することができる.しかし実験走行で は,探索対象人物の誤検知によって,次の不安定な動作が発生した.

つくばチャレンジ2014の本走行当日,図8.5に示す位置,すなわち課題コースに対して 街路樹の向こう側に移動販売車が営業を行っていた.車両のホイールは金属であり,2次元 測域センサの受光強度が高く,ロボットは高確率で対象人物と誤検知する.この日もロボッ トはこの移動販売車のホイールを誤検知して,これに対してアプローチを行った.しかし,

ロボットは走行不可能領域に指定されていた街路樹周囲に生成された「擬似スキャンポイン ト」のため,縁石より先には進めず,数回縁石に車輪の接触が発生したが,しばらくその場 で接近と後退を繰り返す膠着状態に陥った.その様子を図8.7に示す.最終的にはアプロー チの時間制限機能によってアプローチ対象がキャンセルされ,元のコースに復帰した.以上 より,走行不可能領域とアプローチの時間制限によってリタイアを回避できたといえる.そ の後は順調に自律走行を継続し,ゴールに到達した(図8.8).