第 5 章 走行可能領域の識別 62
5.4 非接触センサによる低所特徴の抽出
5.4.4 センシング手法
3次元測域センサの垂直方向の走査において各Spotに番号を割り当てたとき,図5.5に 示すように同一番号のSpotは,同一水平直線上に並ぶ.n番目のSpotの水平距離rnを式 ( 5.7)で求める.Spotが地面にあるとき,Spot番号毎に同心円ができる.例として,図5.7 に平面と両側に縁石のある道路に対して,それぞれSpot番号n=40のスキャン結果を比較 する.平面(a)ではSpotは円に近い形状となっている.一方,縁石周辺(b)では形状が歪 み,水平距離が小さくなっていることがわかる.
5.4 非接触センサによる低所特徴の抽出
(a) 平面 (b) 縁石周辺
Spot [40] Spot [40]
縁石 ロボット
図 5.6 Scan Range
図 5.7 道路のスキャン形状の比較
平坦な地面にロボットを置いて,式( 5.8)に示すように地面をセンシングしたときのSpot 番号nの円の半径をRnとする.スポット番号nとRnの対応付けした結果が平面テーブル と定義する.段差の抽出は,Rnとrnを比較することで行う.図5.9に平面テーブルの例を 示す.Spot番号nの44から67までの間はセンサのレーザービームが水平から上向きにな ることから地面をセンシングできないため,テーブルの値を0に設定した.また,Spotの地 面に対する距離をテーブル化しても同様の結果が得られるが,2次元で表現できる水平距離 の方が画面に表示したとき,開発者が視覚的に確認しやすい.このため本研究では平面テー ブルに水平距離を用いた.また,本手法の実施はテーブル化の他に,レーザの照射角度から 幾何学的に水平距離を算出することも可能である.しかしながら実際にはセンサの取り付け 位置・姿勢の誤差やロボットの姿勢の影響がある.よって著者は,実測値をテーブル化した 方が,それらの誤差推定の必要がないため,扱いが容易であると考える.以下,平面テーブ ルによる段差の抽出手法について述べる.
上段差の抽出
上段差では,図 5.8 (a)に示すように高低差が大きいほど,平面上の距離rnが小さく,
rn < Rnとなる.したがって,rn < αRn,(0< α≤1)のとき,そのSpotを上段差とみな し,走行不可能領域とする.ここでαは抽出対象とする段差の高低差によって設定する係数 である.値が大きいほど小さい段差が抽出可能となるがノイズが増えるため,対象とする環 境によって設定する必要がある.本研究では高さ10[cm]程度の上段差の実測から,これよ りも若干低い段差を抽出できるようにα= 0.8に設定した.この値はセンサの取り付け位置 と抽出対象とする段差の高さによって設定する.
5.4 非接触センサによる低所特徴の抽出
3次元測域センサ
Ground
Spot[n-1]
Spot[n]
Spot[n-1]
Spot[n]
𝑅𝑛
上段差
Spot[n-1]
Spot[n]
Spot[n-1]
Spot[n]
𝑅𝑛
下段差
𝑟𝑛
(a) 上段差
(b) 下段差
𝑟𝑛
図 5.8 段差の抽出手法 下段差の抽出
下段差では,図5.8 (b)に示すようにSpotの水平距離rn> βRn,(β≥1)のとき,下段差 として走行不可能領域とする.βはαと同様の係数である.本研究では,実際の歩道を計測
5.4 非接触センサによる低所特徴の抽出
0 1 2 3 4 5 6 7 8 9
0 10 20 30 40 50 60 70 80
Radius[m]
Spot Number
Spot
図 5.9 平面テーブル
し,高低差15[cm]程度の下段差を抽出することとし,β = 1.18に設定した.
平面テーブルの効果
本研究では段差の高さzを式( 5.3)に示すようにレーザビームの到達距離lと垂直方向の 角度θから算出する.したがって,lが大きい遠方ほどθの誤差によってzが大きく変化す る.これに対して平面テーブルは平面とそれ以外を判別するためのしきい値テーブルであ る.図 5.9に示すように隣接するSpot間で平面上の水平距離:Radiusの変化の幅は一様で
はなく,Radiusが大きいSpot間ほど大きい.高さzの測定で段差を抽出する場合には,先
述のとおりロボットの微小な姿勢の変化でも遠方ほどレーザビームが照射される位置が大き く移動し,段差が抽出できない問題がある.これに対して平面テーブルではレーザビームの 角度によってしきい値が変化し,遠方ほど姿勢の変化による誤差を許容することができる.
したがって遠方において高さzの算出よりも精度よく段差を抽出できる.その反面,正確な 高さの値は得られないため,事前に抽出対象とする高さの段差をセンシングしてαとβを 最適化しておく必要がある.また,平面テーブルでは路面の凹凸などで走行中のロボットの 姿勢が大きく変化したときには段差の抽出は正確にできない.これについてはロボットの姿 勢の計測による補正が必要がある.