• 検索結果がありません。

第 6 章 走行可能領域から逸脱しない走行制御 81

6.3 動作の設計

6.3 動作の設計

6.3.1 アプローチ

自律移動ロボットの実験走行から得た著者の知見より,ロボットが経路上にいる歩行者や 他のロボットに対して回避行動を行った場合,かえってそれらの動きを乱す場合があるこ とがわかっている.これまでに群集の中におけるロボットの回避行動の研究が行われてき た[76].しかし2015年現在において,未だ歩行者にとってロボットは日常にない異質な存 在であり,その回避行動は先の読めない動きといえる.例としてつくばチャレンジで見られ た状況では,ロボットの回避行動が歩行者の動きを阻害し,警戒心を抱かせてしまうことが あった.また,先述のRahockのように,回避行動によって経路を逸脱した結果,識別でき ていない低い縁石などの物体に接触することがあった.ロボットの自己位置・姿勢の推定の 観点からも,回避のための急な動きはランドマークとスキャンデータの誤マッチングを誘発 する可能性がある.したがって本研究では,ロボットが検知した対象との相対位置,および 経路との位置関係によって,ロボットが安全な動作を選択し,走行可能領域からの逸脱を抑 制する走行制御を構築する.

6.3.2 対象の位置による動作の定義

本研究では,図6.2に示すように,ロボットが進行方向において回避対象を検知すること とし,検知範囲をロボットの後側方を若干含んだ±105[deg]に設定した.本研究では,特に 経路上でロボットの前方3[m]以内かつ正面15[deg]の範囲で検知した対象を前方物体と定義 する.一方,それ以外の対象を側方物体とする.

ロボットから見た検知対象の相対位置による動作の定義を図6.2に示す.本研究では,ロ ボットが検知した前方物体に対して,それが動いているか静止物かの判別はしない.そのた め,経路上で検知した前方物体がロボットと同じ方向に動いている歩行者やロボットの場合,

ロボットがそのまま追従することで経路からの逸脱が抑制される.一方,ロードコーンや看 板などの静止物の場合,安全停止できる距離として設定している1.5[m]程度でロボットを一 時停止させる.静止物が歩行者の場合,ロボットが自ら回避するよりも相手に回避してもら う方が安全である.しかしながら先述のとおり,ロボットは相手の種別を判別しない.した がって,ロボットは動く対象ならば前方距離に変化があると仮定し,一時停止中に前方物体 を観測する.一定時間内に前方距離の変化がない場合,ロボットは前方物体を静止物と判断 して回避動作を行う.一方,距離に変化があれば歩行者や他のロボットと判別する.その後,

ロボットはそれらが経路上にいる場合には追従走行を再開し,それ以外は回避動作を行う.

6.3 動作の設計

3.0m

WayPoint [n]

0.6m

後退

回避(210deg)

WayPoint [n-1]

追従制御

15deg

1.5m

減速・一時停止

6.2 前方物体に対する動作の定義

6.3.3 到達時間制御による追従走行

本研究におけるロボットの,前方物体に対する動作の定義を図 6.2に示す.本手法では 図 6.2に示すようにロボットが経路上を走行しているとき,ロボットが正面(15[deg],距離 3[m]の範囲)で検知した前方物体に対しては,ロボットの経路上を走行していると判別し,

前方物体までの到達時間:“Time To Contact”を一定にする制御を実行する.この到達時 間制御手法(TTC制御)は前方物体の速度によって追従するロボットとの距離が変化するが,

到達時間が一定であることから高い安全性を確保することができる.すなわち追従対象への 接触に対する安全のマージン確保と,追従対象と占有する空間の最適化を両立できることか ら交通の流れに対して適応性が高い.応用例として,自動車のAdaptive Cruise Control 用いられている[78].

TTCを一定にするための目標速度V は,前方の追従対象までの距離をdとして目標到達

時間T T Cより,下記のとおり式( 6.3)より算出される.本研究では安全に回避行動をとれ

る時間的余裕を重視し,T T C6[sec]に設定した.

V =d/T T C (6.3)

6.3.4 回避動作

ロボットの回避動作は,その前方においてロボットが通過できる走行可能領域を探索する 大島の手法を用いる[43].本研究では,図6.3に示すように,第5章で述べた手法によって

6.3 動作の設計

SubWayPoint

ScanPoint Robot

WayPoint

6.3 前方物体に対する回避手法

抽出した走行可能領域,すなわち2次元測域センサのスキャンポイント,および低所特徴を 表す3次元測域センサのスキャンポイントが存在せず,ロボットが通過できる幅をもつ領域 を探索する.その中でウェイポイントから構成される経路に最も近い位置に走行目標点を設 定する.本研究では探索範囲の長さを先に述べた回避動作の定義と同等の3[m]以内とした.

また,ロボットが余裕を持って通過できることから,探索範囲の幅を1.0[m]に設定した.こ の手法はA*アルゴリズムのような局所的な経路計画を必要としない.そのため,ロボット は検知した直前の物体に対して比較的早い対応が可能であるが,スキャンデータのノイズに 影響される.したがって,特に低所特徴のノイズを除去しておくことが必要である.

6.3.5 直前の物体に対する動作

一般市街地環境において,歩行者や自転車の飛び出しは想定すべき事態である.したがっ て本研究では検知したロボットと前方物体との距離が安全停止距離(1.5[m])以内になったと き,ロボットは経路上の他のロボットや歩行者との接触を避けるため,その場で一時停止す る.それから走行可能領域を探索し,走行目標点を設定する.その後,ロボットは回避に要 する空間を最小限に留めるため,走行目標点の方向にその場で回転して向きを変え,走行目 標点を目指して走行することで回避動作を達成する.また,直前の急な飛び出しでロボット

の0.6[m]以内に対象が接近した場合には衝突を回避するため,駆動輪をブレーキモードで

急速に停止させる.その後1[m]程度後退し,回避動作を行う.