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均一広がりと仮定した場合の Raman 散乱の影響

ドキュメント内 パルス生成に関する研究 (ページ 129-134)

第 7 章 本研究のまとめ 110

A.2 Backpropagation 法

A.2.2 均一広がりと仮定した場合の Raman 散乱の影響

Raman 散乱によるノイズ演算子に関するN(z, t1, t2)の導出

さて,Raman散乱によって付加される雑音についてであるが,分子振動は均一広がりの分布と不均一広が りの分布の両方を持っていると考えられる。本副節では均一広がりのみを仮定し,一本の共鳴周波数のみを持 つ場合の計算法を示す。前副節で示した条件から,ノイズ演算子nˆの交換関係を求めるためにはEq. (A.78)に 示すように摂動電界に対する線形化が必要となる。そのため,まず古典的なSchr¨odinger 方程式をまず示す。

Raman散乱を単一周波数の均一広がりのみと考えると,Raman応答関数は

h(t) = exp(−γrt) sin(Ω0t)s0(t), (A.85)

となる。ただしs0(t)は単位ステップ関数であり,tが負のときはゼロとなることを示す。また,Ω0γrはそれぞれ フォノンの共鳴周波数とその減衰率(時定数の逆数)を表し,良く用いられる値はΩ0= 1/(32[fs]) = 3.1×1013[s1]

γr= 1/(12.2[fs]) = 8.2×1013 [s1]である。また,一般にRaman応答関数は積分したときに1となるよう に規格化する必要がある。規格化した場合,この式は

h(t) =20+γ20

exp(−γrt) sin(Ω0t)s0(t), (A.86) となる。ここで,Eq. (A.56)の摂動電界u(z, t)ˆ に対する伝搬方程式を再掲すると,

∂zu(z, t) =jˆ ∑

k2

jkβk

k!

k

∂tku(z, t) + 2j(1ˆ −fr|U(z, t)|2ˆu(z, t) +j(1−fr)γU2(z, t)ˆu(z, t) +jfrγ

t

−∞

h(t−τ)|U(z, τ)|2dτu(z, t) +ˆ jfrγ

t

−∞

h(t−τ)U(z, τ)ˆu(z, τ)dτ U(z, t) +jfrγ

t

−∞

h(t−τ)U(z, τ)ˆu(z, τ)dτ U(z, t), (A.87) である。よってEq. (A.78)から

N(z, t1, t2) ={−P1(z, t1)−P1(z, t2)}δ(t1−t2)

=−jfrγ [∫ t1

−∞

h(t1−τ)U(z, τ)δ(τ−t2)dτ U(z, t1)

t2

−∞

h(t2−τ)U(z, τ)δ(t1−τ)dτ U(z, t2) ]

, (A.88) となる。ここで,Eq. (A.87)の項のうち,右辺3項目と6項目はuˆに依存するため,P1に含まれないことと,

右辺1, 2, 4項目は純虚数となるため消えることに注意する。このときt2≥t1であれば

N(z, t1, t2) =jfrγU(z, t1)U(z, t2)h(t2−t1), (A.89) であり,t2< t1であれば

N(z, t1, t2) =−jfrγU0(z, t1)U(z, t2)h(t1−t2), (A.90) となる。今回の場合Eq. (A.85)を見ればこれらの式は以下のように書き換えることができる。

N(z, t1, t2) =jfrγ20+γ20

U(z, t1)U(z, t2) exp(−γr|t2−t1|) sin{0(t2−t1)}. (A.91)

フォノンの時間発展に由来するノイズの解析 これで[

ˆ

n(z, t1),nˆ(z, t2)]

の交換関係が求まったわけであるが,前述したようにこれだけでは不完全である。

Raman散乱に由来するノイズ演算子は元をたどればフォノンが熱浴(Reservoir)と結合しているために発生す

るので,フォノンの時間発展に関する式を計算する必要がある。Eq. (A.55),Eq. (A.86)から,Raman散乱に 関する項は

jfrγ

t

−∞

20+γr20

exp{−γr(t−τ)}sin{0(t−τ)} |U(z, τ)|2dτ U(z, t), (A.92) である。ここでフォノンの強度をˆb(z, t)で表すと,その時間発展を

∂t

ˆb(z, t) =−γrˆb(z, t)−jΩ0ˆb(z, t) +jg0|U(z, t)|2, (A.93)

と仮定する。この式は光の強度|U(z, t)|2によってフォノンが励起し,Ω0で振動しながらγrにより減衰して いく様子を表している。ここで,g0はフォノンと光の強度の結合の強さを表している。この式を解くと

ˆb(z, t) =jg0

t

−∞

exp{−r+jΩ0)(t−τ)} |U(z, t)|2dτ, (A.94) となり,Raman散乱の項を

jfrγ

t

−∞

20+γr2

0 exp{−γr(t−τ)}sin{0(t−τ)} |U(z, τ)|2dτ U(z, t)

=jfrγ 2g0

20+γ2r

0b(z, t) + ˆb(z, t))U(z, t), (A.95)

とすれば非線形Schr¨odinger方程式を無理なく満たす。さて,このような非線形Schr¨odinger方程式とフォノ ンの時間発展に関する式の連立方程式を量子化し,フォノンの時間発展の式に新たなノイズ演算子nˆb(z, t)を 加える。まず,非線形Schr¨odinger 方程式は以下のようになる。

∂zU(z, t) =j

k2

jkβk k!

k

∂tkU(z, t) +j(1−fr|U(z, t)|2U(z, t) +jfrγ 2g0

20+γr20

b(z, t) + ˆb(z, t))U(z, t).

(A.96) 同様にEq. (A.93)のフォノンの時間発展は

∂t

ˆb(z, t) =−γrˆb(z, t)−jΩ0ˆb(z, t) +jg0|U(z, t)|2+ ˆnb(z, t), (A.97) となる。Equation (A.97)を解くとその解はEq. (A.94)にnˆb(z, t)の項が加わり,

ˆb(z, t) =jg0

t

−∞

exp{−r+jΩ0)(t−τ)} |U(z, t)|2+

t

−∞

exp{−r+jΩ0)(t−τ)}ˆnb(z, t)dτ, (A.98) となる。この結果をEq. (A.96)に代入することでnˆのより正確な形を導くことができる。

∂zU(z, t) =j∑

k2

jkβk

k!

k

∂tkU(z, t) +j(1−fr|U(z, t)|2U(z, t) +jfrγ 2g0

20+γr2

0b(z, t) + ˆb(z, t))U(z, t)

=j∑

k2

jkβk k!

k

∂tkU(z, t) +j(1−fr|U(z, t)|2U(z, t) +jfrγ

t

−∞

h(t−τ)|U(z, τ)|2dτ U(z, t)

+jfrγ 2g0

t

−∞

[

H(t−τ)ˆnb(z, τ) +H(t−τ)ˆnb(z, τ) ]

dτ U(z, t), (A.99)

となる。この式の下線部分がˆn(z, t)に等しいといえる。また,H(t)は H(t) =20+γr2

0

exp [(−γ−jΩ0)t], (A.100)

となる。ˆn(z, t)の交換関係Eq. (A.70),Eq. (A.70)および,Eq. (A.91)を満たすようにnˆb(z, t)の交換関係を 決めると

nb(z, t1),ˆnb(z, t2)] = [

ˆ

nb(z, t1),ˆnb(z, t2) ]

= 0, (A.101)

はすぐに導出される。これに対し,

[ ˆ

nb(z, t1),ˆnb(z, t2) ]

は [n(z, tˆ 1),ˆn(z, t2)]

= fr2γ2 4g20

∫ ∫ t1,t2

−∞,−∞

{(

H(t1−τ1nb(z, τ1) +H(t1−τ1nb(z, τ1) ) (

H(t2−τ2nb(z, τ2) +H(t2−τ2nb(z, τ2) )

(

H(t2−τ2nb(z, τ2) +H(t2−τ2nb(z, τ2) ) (

H(t1−τ1nb(z, τ1) +H(t1−τ1nb(z, τ1) )}

×dτ12U(z, t1)U(z, t2)

= fr2γ2 4g20

∫ ∫ t1,t2

−∞,−∞

{

H(t1−τ1)H(t2−τ2) [

ˆ

nb(z, τ1),ˆnb(z, τ2) ]

+H(t1−τ1)H(t2−τ2) [

ˆ

nb(z, τ1),ˆnb(z, τ2) ]}

×dτ12U(z, t1)U(z, t2), (A.102)

から計算される。ここで,

[ ˆ

nb(z, t1),nˆb(z, t2) ]

t1t2に対するδ関数を含むと考えられる。また,Eq. (A.70) がzに対するδ関数を含んでいることから,仮に,

[ ˆ

nb(z, t1),nˆb(z, t2) ]

= Aδ(t1−t2)δ(z−z) とすると,

Eq. (A.102)は fr2γ2

4g20

∫ ∫ t1,t2

−∞,−∞{H(t1−τ1)H(t2−τ2)Aδ(τ1−τ2)δ(z−z)−H(t1−τ1)H(t2−τ2)Aδ(τ2−τ1)δ(z−z)}        ×dτ12U(z, t1)U(z, t2)

= fr2γ2 4g20

tL

−∞{H(t1−τ)H(t2−τ)−H(t1−τ)H(t2−τ)}Aδ(z−z)dτ U(z, t1)U(z, t2)

=−j1 2

{frγ g0

20+γ2r0

}2tL

−∞

exp{−γr(t1+t22τ)}sin{−0(t1−t2)}Aδ(z−z)dτ U(z, t1)U(z, t2)

=j 1 4γr

{frγ g0

20+γr20

}2

exp{−γr(t1+t22tL)}sin{0(t1−t2)}Aδ(z−z)U(z, t1)U(z, t2), (A.103) と変形できる。ここでtLt1t2のうち小さいほうを指す。この式をEq. (A.70),Eq. (A.91)と見比べると

j 1 4γr

{frγ g0

20+γr20

}2

exp{−γr(t1+t22tL)}sin{0(t1−t2)}Aδ(z−z)U(z, t1)U(z, t2)

=jfrγU(z, t1)U(z, t2)Ω20+γr20

exp(−γr|t1−t2|) sin{0(t1−t2)}δ(z−z). (A.104) よりA=4gf20γr

rγ 0

20r2 となる。よって [

ˆ

nb(z, t1),nˆb(z, t2) ]

= 4g02γr

frγ0

20+γr2δ(t1−t2)δ(z−z), (A.105)

となる。物理的にはnˆb(z, t)はフォノン場の減衰によって生じるため,線形損失と扱うことができる。そのた め,線形損失のときのn(z, t)ˆ と同様の相関関数を持つと考えられる。よって

ˆnb(z, t1nb(z, t2)=

⟨ ˆ

nb(z, t1nb(z, t2)

= 0 (A.106)

⟨ ˆ

nb(z, t1nb(z, t2)

= [n0(T) + 1]4g20γr

frγ0

20+γr2δ(t1−t2)δ(z−z) (A.107)

⟨ ˆ

nb(z, t1nb(z, t2)

=n0(T)4g20γr

frγ0

20+γr2δ(t1−t2)δ(z−z), (A.108) となる。ここでn0(T)は温度Tにおける平均フォノン数であり,Eq. (A.84)と同様に

n(T) = 1

e~ΩkT 1, (A.109)

となる。ここからˆn(z, t)に対する相関関数を計算する。まず,⟨n(z, tˆ 1n(z, t2)

(frγ

2g0

)2∫ ∫ t1,t2

−∞,−∞

{

H(t1−τ1nb(z, τ1) +H(t1−τ1nb(z, τ1) } {

H(t2−τ2nb(z, τ2) +H(t2−τ2nb(z, τ2) }

×dτ12U(z, t1)U(z, t2), (A.110)

の平均値となる。従って

⟨n(z, tˆ 1n(z, t2)

= (frγ

2g0

)2∫ ∫ t1,t2

−∞,−∞

{

H(t1−τ1)H(t2−τ2)

⟨ ˆ

nb(z, τ1nb(z, τ2)

+H(t1−τ1)H(t2−τ2)

⟨ ˆ

nb(z, τ1nb(z, τ2)

⟩}

      ×dτ12U(z, t1)U(z, t2)

= (frγ

2g0

)2∫ ∫ t1,t2

−∞,−∞

{

H(t1−τ1)H(t2−τ2)[n0(T) + 1]4g20γr frγ

0

20+γ2rδ(τ1−τ2)δ(z−z)       +H(t1−τ1)H(t2−τ2)n0(T)4g20γr

frγ0

20+γr2δ(τ1−τ2)δ(z−z) }

12U(z, t1)U(z, t2)

=−frγγr

20+γr20

δ(z−z)U(z, t1)U(z, t2)

×

tL

−∞

exp{−γr(t1+t22τ)−jΩ0(t1−t2)}[n0(T) + 1] + exp{−γr(t1+t22τ) +jΩ0(t1−t2)}n0(T)dτ

=−frγ 2

20+γr20

δ(z−z)U(z, t1)U(z, t2) exp(−γr(t1+t22tL)

×[(n0(T) + 1) exp{−jΩ0(t1−t2)}+n0(T) exp{jΩ0(t1−t2)}]. (A.111) となる。例によってtLt1,t2の低い方である。式が複雑で若干見通しが悪いため,Nn(t)を以下のように 定義する。

Nn(t) =frγ 2

20+γr2

0 exp(−γr|t|){(n0(T) + 1) exp(−jΩ0t) +n0(T) exp(jΩ0t)}. (A.112) すると,⟨n(z, tˆ 1n(z, t2)

ˆn(z, t1n(z, t2)=−U(z, t1)U(z, t2)Nn(t1−t2)δ(z−z). (A.113)

さらに,これと同様に他の三つの相関関数を計算すると,

n(z, tˆ 1n(z, t2)⟩

=U(z, t1)U(z, t2)Nn(t1−t2)δ(z−z), (A.114)

nˆ(z, t1n(z, t2)⟩

=U(z, t1)U(z, t2)Nn(t1−t2)δ(z−z), (A.115)

⟨ˆn(z, t1n(z, t2)⟩

=−U(z, t1)U(z, t2)Nn(t1−t2)δ(z−z), (A.116) となる。従って,Eq. (A.69)にこれらを代入すると

Var⟨uA(L, t)|u(L, t)ˆ =Var⟨uA(0, t)|u(0, t)ˆ

1 4

L 0

∫ ∫

uA(z, t1)uA(z, t2)U(z, t1)U(z, t2)Nn(t1−t2)dt1dt2dz +1

4

L 0

∫ ∫

uA(z, t1)uA(z, t2)U(z, t1)U(z, t2)Nn(t1−t2)dt1dt2dz +1

4

L 0

∫ ∫

uA(z, t1)uA(z, t2)U(z, t1)U(z, t2)Nn(t1−t2)dt1dt2dz

1 4

L 0

∫ ∫

uA(z, t1)uA(z, t2)U(z, t1)U(z, t2)Nn(t1−t2)dt1dt2dz, (A.117) を計算すればよいことになる。このEq. (A.117)およびEq. (A.112)が本副節の結論となる。

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