第 3 章 Photonic Crystal Fibre とスペクトルフィルタリング法による光子数スクイジングの実験およ
3.2.4 ソリトン伝搬における数値解析結果
通常のソリトンに対するスペクトルフィルタリングの数値解析はすでに行われているが,今回の数値解析 プログラムを確認するため計算を行った。また,周波数モード間の相関のマッピングをRaman 散乱の有無 の間で比較した。これによりスペクトルフィルタリングで抽出する周波数帯を選び出せる。Kumarらによれ
ば [14]N = 1ソリトンにエッジフィルターをつかってスペクトルフィルタリングをした場合,約18%のエネ
ルギーをフィルタリングしたときに3ソリトン周期付近で最も強くスクイージング起こり,このとき−6.5dB のスクイージングが得られる。
-7 -6 -5 -4 -3 -2 -1 0
0 1 2 3 4 5 6
Rel. Noise. Power [dB]
Length [soliton period]
Fig. 3.8: Photon number noise dependence on propagation length using the model without Raman scattering.
光ファイバは一般的な石英ファイバを想定し,光ソリトンは光ファイバの異常分散領域で形成されるため,
波長1.5µmのフェムト秒パルスを想定した。ここでの石英ファイバの二次分散をβ2を−10 ps2/kmとし,簡 単化のため三次以上の分散は無視した。次に三次の非線形性の強さを表す係数γはγ= 0.01 W−1m−1とした。
ただし,これらは仮想的に設定した値で,このようなファイバが実在するかはわからない。また,ソリトンの 条件[9]を満たしていれば,値そのものはさほど重要でない。さらに,このようなファイバでソリトンを作る 条件を満たすように,パルスのパラメータをτ0= 50 fs,ピークパワーを400 Wとした。ここでτ0はパルス 幅に相当する値で半値前幅に直すと,約88 fsとなる。また,このときソリトン周期はπ/8 m (約40 cm)であ
-6 -5 -4 -3 -2 -1 0
0 1 2 3 4 5 6
Rel. Noise Power [dB]
Length [soliton period]
Fig. 3.9: Photon number noise dependence on propagation length using the model with Raman scattering.
る。このパルス幅を1.5µm帯で得るのは難しいが,可能である。なお,Raman散乱を考慮すると同じN= 1 ソリトンでも波形や量子状態が変わる。
まず,Raman散乱を考慮に入れずにソリトン伝搬の計算を6ソリトン周期まで(約235 cm)行った。このパ ルスに対してバンドパスフィルタ(BPF)によりスペクトルの裾から取り除いた際の光子数スクイジングを各 距離で計算した。このBPFは中心波長に対して対称な波長にカットオフ波長を持ち,パルスエネルギーの約 18%分に相当するスペクトル成分を遮断するようにカットオフ波長を設定している。このような条件での各距 離の光子数スクイジングをFig. 3.8に示す。このグラフは[14]とほぼ等しく,3ソリトン付近で−6.5dBのス クイージングが得られた。
次にこれと同様にRaman散乱の影響を考えた場合について同様に計算した結果をFig. 3.9に示す。Raman 散乱の影響によってスクイージングの最大値は長距離に移り,その値はやや小さくなった。この結果から3か ら3.5ソリトン周期の間で最大−5.8dB前後のスクイージングが得られた。フィルタの条件はRaman散乱を 考慮しないときと同じである。
次にパルス内のスペクトル間の光子数雑音の相関が光子数スクイージングにどのような影響を与えているか を調べた。このために以下のような周波数相互相関関数を計算した。
C(i, j) = cov(ni, nj)
√
∆n2i∆n2j
(3.14)
ただし,cov(ni, nj) =⟨nˆinˆj⟩ − ⟨nˆi⟩ ⟨nˆj⟩である。ここで,
Var[ˆni+ ˆnj]−Var[ˆni]−Var[ˆnj] = 2cov(ni, nj). (3.15) を利用すると,光ファイバからの出射スペクトルを細かく区切り,その周波数成分単独の光子数分散Var[ˆni]と,
複数の周波数成分の和の光子数分散Var[ˆni+ ˆnj] からC(i, j)を求めることができる。また,この式は(i̸=j)
-0.2 -0.15 -0.1 -0.05 0 0.05 0.1 0.15 0.2
1460 1480 1500 1520 1540 1560 1460 1480 1500 1520 1540 1560 1460 1480 1500 1520 1540 1560
0 0.2 0.4 0.6 0.8 1 1.2
1460 1480 1500 1520 1540 1560
With Raman Without Raman
Wavelength [nm]
(a) (b)
(c)
Fig. 3.10: (a)(b) A numerically calculated map of intrapulse quantum correlations with (a) and without (b) Raman scattering. (c) Output spectra for the each case.
のとき使用し,i=jの場合は以下のような式を用いる。
C(i, i) = 1− ⟨ni⟩
∆n2i. (3.16)
これらの値は周波数モード間の光子数相関を表していて,Eq. (3.14)は二つの周波数モードの光子数の和の分 散が個々の周波数モードの分散の和より大きくなると正の値を取り,小さくなると負の値を取る。すなわち,
正の光子数相関は二つの周波数モードの一方の光子数が多いときは,他方の光子数も多くなる。逆に負の光子 数相関は一方の光子数が多いときは,他方の光子数が減る。この共分散が負の相関を持つ部分を透過し,正の 相関を持つ部分を排除すれことで高いスクイージングを得ることができる[15]。従ってこの共分散のマッピン グから適切なフィルタリングを知ることができる。N = 1ソリトン光が最大のスクイージングを示す3ソリト ン周期の共分散をマッピングした。その結果をFig. 3.10に示す。Raman散乱を含む場合はピークが全体的に 長波長側にシフトし,相関も全体的に長波長側に移動している。特に,Raman散乱を考えないときは中心部か
ら四方向にあった正の相関が,Raman散乱があるときは長波長同士の領域に集中して強い正の相関となって いる。このことからHPFによって高いスクイージングを得られることを示している。しかし最も強い負の相 関はこの長波長部分と,やや短波長の部分との相関に現れており,最も良いスクイージングを得るにはRaman が無いときとほぼ同様のバンドパスフィルタリングが最もよい。