• 検索結果がありません。

結果規定のむすびつき

ドキュメント内 ニ格の名詞と動詞からなる連語について (ページ 127-130)

第 4 章 規定的なむすびつき

4.1 結果規定のむすびつき

121

122 変化動詞には以下のようなものがある。

終わる、変える、変わる

一変する、様変わりする、転じる、発展する、扮する、変身する、変ずる、変装す る、変貌する

(1)達夫が若手社員でも群を抜くやり手で、三十になるやならずで係長になった出世 頭なのに引きかえ、波多野は年は三つ下だが、有力筋のコネ入社で、仕事よりも趣 味に重きを置くタイプだった。(『男どき女どき』)

(2)炭屋のオッチャンの店は、お好み焼き屋でもあった。夏になると、“炭屋”は“氷 屋”に変わって、店先に「氷」と書いた旗がひるがえっていた。(『少年H』(上巻)) (3)陸戦から海戦へ、さらに空戦へと進んできたそのプロセスはいまやそのスケールを

はるかに拡大し、大陸間の空間攻撃から宇宙空間内の戦争(space war)にまで発 展しようとしている。(『空間と人間』)

(4)テロの背景には貧困と差別、憎悪の荒野が広がる。それをどう沃野(よくや)に 変えるか。(朝・天)

なお、動詞「なる」はその語彙的な意味の多義性に頼って、他の変化動詞よりも広い範 囲における変化を表わすことができる。例えば、上で挙げたものの他に、「夜」「夏」のよ うな時間あるいは時期を表わすニ格の名詞ともくみあわさりやすい。この場合、「なる」は

「その時刻・時期に至る」という意味であり、連語全体は時間的な変化を表わしている。

なお、こういった連語においては、変化の主体が普通現われておらず、また補うことも難 しい(「時間/時期が…になる」のように言えないことはないが)ことは特徴であろう。

(5)「学校は?」まだ昼にもなっていない時間だったので、僕は聞いた。(『落花流水』) (6)しかもこの主婦のように、こういうエリート馬鹿の生まれきたった原因まで考察し

て弾劾している。ずいぶん風通しのいい時代になったものである。(『天窓に雀の あしあと』)

また、「なる」と意味的に対になると言える他動詞「する」も語彙的な意味の多義性によ り、変化動詞として機能する場合がある。

(7)てきぱきと開かれた包みからは、なんでもジュースにしてしまいそうな、見事な ジューサーが出てきた。(『キッチン』)

(8)二、三時間の授業があり、あとは校庭を畠にする作業と、防空壕掘りが日課であ った。(『母の影』)

123

典型的な変化動詞の他に、「仕立てる、育つ、育てる」などの生産動詞と、「生まれる」

などの出現動詞もこのグループに入る。

(9)敏子は、二人の子どもを、“汚れなき天使”のような子に育てようと決心したらし く、“献児式”というのを教会で行った。それは、カソリックの幼児洗礼に相当す る儀式であった。(『少年H』(上巻))

(10)精神病院の伜に生まれたことに初めは抵抗し、文学部を選んだものの、戦争にな り、医学生ならば徴兵を延期されると知ると、ただちに大した抵抗もなく祖父と 父と同じ道へと駒を進めた。(『いい言葉は、いい人生をつくる』)

また、「折れる、崩れる、太る、曲がる」などのような、ものの形状の変化の意味を語彙 的に含んでいる動詞や、「増える、分かれる、分ける/分割する」などものの増減を表わす 動詞も〔結果規定のむすびつき〕を表わす連語を作ることができる。例えば以下のような 例である。

(11)千葉県野島崎沖では、この十年間に三万トン級の大型鉱石運搬船などが、船体が 真二つに折れるなどして沈没したり行方不明になっている。(『男どき女どき』) (12)その頂点をてべして傘を開きかけの茸型にむくむくと太って行く。(『黒い雨』) (13)「ありゃ、大仏さまがふたつにふえてる! おじいさん、たいへんだよ。大仏さ

まがふたりいらっしゃるよ」(『ブンとフン』)

(14)勤労奉仕団員は、三次町に行くものと庄原町に行くものと、東城町に行くものと 三隊に分かれて出発した。(『黒い雨』)

なお、(11)~(14)に見られるように、この種の連語におけるニ格の名詞(「真二つ」

「茸型」「ふたつ」「三隊」)は、「ころころに太る」「ばらばらに分かれる」などのように副 詞的になっていることが多い。

「かえる」を含む複合動詞「着替える」「穿き替える」などの動詞がニ格の具体名詞とく みあわさって、〔結果規定のむすびつき〕を表わす連語を作る場合もある。

(15)借りた寝まきに着替えて、しんとした部屋に出ていった。(『キッチン』)

(16)それから、リュックザックに入れておいた地下足袋にはきかえたが、それでも痛 痒は去らなかった。(『母の影』)

なお、この種の連語については、奥田(同:311)は「/交換する/という意味でのかえる はとりかえる、のりかえる、きかえる、はきかえるのようなかさね動詞の成分になってい て、これらの動詞とに格の名詞とのくみあわせは、規定的ではなく、対象的なむすびつき

124

をつくっていて、結果規定のむすびつきの出発点をなしている。」と述べている。

さらに、語彙的には変化の意味に欠けていると思われる現象性の動詞が、様態を示すニ 格の名詞とくみあわさると、結果規定的な関係が表現される場合がある。

(17)「でも、明治の初めごろインキで書いた手紙、茶色に薄れていました。ひい爺さ んが東京の人から貰いなさった手紙、文字が茶色に薄れています」(『黒い雨』)

(18)その子のケチャップ色に染まった唇が動くのを、私は不思議な気持ちで眺めてい た。(『落花流水』)

上の2例の他に、以下のようなものもある。

(19)真っ白に泡立つ、薔薇色に色づく、オレンジ色に浮き上がる、虹色に映る、人な つこい色に潤む、鮮やかな緑に輝く、灰色にかすむ、乳色に煙る、薄紫色に澄み 切る、灰色に濁る、銀色に光る、羊羹色に焼ける;山気に染まる、残忍な光に燃 える

これらの連語を作る動詞のうち、〔出現物のありか〕ですでに見た通り、「浮かぶ、浮 き上がる、映る」などは場所を示すニ格の名詞とくみあわさって、〔出現物のありか〕を 表わす連語を作ることができる(例えば、「山の上に白雲が浮かぶ」「ガラスに人が映る」)。

なお、この種の連語に現われることができる名詞は、「茶色」「薔薇色」のような色を 表わすものや、「山気」「残忍な光」など、ものの様態を修飾するようなものに限られ、

動詞も上に挙げた現象性の動詞がほとんどのようである。また、これらの連語において、

ニ格の名詞と動詞との関係は、「(平社員が)係長になる」「(炭屋が)氷屋に変わる」

などに比べてかなり弱く、むすびつきの性格はニ格名詞の語彙的な意味への依存性が高い と言えるであろう。

ドキュメント内 ニ格の名詞と動詞からなる連語について (ページ 127-130)