• 検索結果がありません。

分類の妥当性について

ドキュメント内 ニ格の名詞と動詞からなる連語について (ページ 42-46)

第 2 章 先行研究および本研究の位置づけ

2.4 本研究の位置づけ

2.4.1 奥田(1962[1983])の再考

2.4.1.3 分類の妥当性について

2.3.1節の表3からすぐわかるように、奥田(1962[1983])の分類では、〔対象的なむす

びつき〕のうちの〔ありかのむすびつき〕と〔かかわりのむすびつき〕のみが細分類され ていて(前者は 6つのタイプに、後者は2 つのタイプにそれぞれ分かれている)、他のむ すびつきについては下位分類がほとんど行われていない。これは言語学研究会(編)(1983)

に収められている奥田の「を格の名詞と動詞とのくみあわせ」と「を格のかたちをとる名 詞と動詞とのくみあわせ」に比べ、詳細さで劣るように思われる。

1 つの下位分類として立ててはいないが、もちろん奥田もその細かいところの違いに気 づいているようである。その証拠として、いくつかのむすびつきについて、下位分類の可 能性を示唆するような記述が散見されることが挙げられる。以下、むすびつきごとに紹介 する。

・〔ゆくさきのむすびつき〕

「(前略)に格の名詞と動詞とのくみあわせのなかに状態のむすびつきをカテゴリーと してたてることができるだろうか。」(p.294)(点線は引用者による。以下同様)。例えば

「曽根は興奮した精神の状態にある」「日本の教育は危機にたつ」のような連語を指す。

ただし、その問いかけに対して、奥田は「動詞の語彙的な意味はうしないかけていて、

この種の単語のくみあわせは陳述的であるといわなければならない。」(p.294)と付け加 えている。

37

・〔かかわりのむすびつき〕

「かかわりのむすびつきのなかに、きわめて未発達であるが、認知のむすびつきをぬ きだすことができる。このむすびつきをつくるのは、ふれる、さわる、通じる、通暁す る、きづくのような動詞である。」(p.306)。「六角のことにふれる」「遊里の消息に通暁 する」などの連語である。

「かかわりのむすびつきをあらわす単語のくみあわせのなかには、論理的な関係を表 現したものがある。かざられになる動詞は、くらべる、比較する、もとづく、かこつけ るのようなものにかぎられている。」(p.306-307)。「お三輪にくらべる」「日教組指令に もとづく」のような連語がある。

「かかわる、関係する、にている、にあうのような動詞とに格の名詞とでできている 単語のくみあわせは、物や現象のあいだにある客観的な関係が表現をうけている。」

(p.307)。例えば「六代目ににている」「おれの体面にかかわる」などである。

・〔道具のむすびつき〕

「とむ、みちる、あふれる、たける、めぐまれる、不足する、かけるのような動詞と に格の名詞がくみあわさると、に格の名詞は、動詞でしめされる状態をその内容の側面 から具体化する。この種の単語のくみあわせは、道具のむすびつきをあらわす単語のく みあわせからずれてきたものである。」(p.309)。例えば「よろこびにあふれる」「才智に たける」のような連語がある。

これらの記述は、それぞれのむすびつきについて更に細かく深く分析できる余地が十分 にあることを示唆している。以下、主に〔ゆくさきのむすびつき〕と〔かかわりのむすび つき〕を取り上げて、他の資料も参考にしつつ、それぞれの下位分類の可能性について考 えてみる。

まず、〔ゆくさきのむすびつき〕について検討する。

〔ゆくさきのむすびつき〕について、奥田(同:291)は「方向性をもった移動動詞が、

に格の名詞とくみあわさると、そこにはゆくさき....

のむすびつきができる。」としている。自 動詞の例に、「いく、くる、かえる、でかける、むかう、かよう、はいる、あつまる、うつ る……」などがあり、「山にいく」「社にかえる」「広場にあつまる」「汽船にうつる」「庭に おりる」「海にむかう」のような連語を作る。他動詞の例に、「はこぶ、うつす、とどける、

おろす、ちかづける……」などがあり、「荷物をトラックにはこぶ」「煙草の灰を灰皿にお とす」などの連語を挙げている。この「ゆくさきのむすびつき」におけるニ格の名詞につ いて、奥田(同:291)は「空間的なニュアンスをもった具体名詞であって、動詞との関係 においてゆくさき....

をしめしている」と述べているが、「ゆくさき」とは具体的に何を指して いるかについてはっきりとした定義がなされていない。

「移動」という現象についての先行研究には、宮島(1972)が包括的なものとして重要 である。宮島(同:203)は、「ある動詞が移動の開始(すなわち出発)から終了(すなわち

38

到着)にいたるまでの、どの段階に重点をおいて表現しているか」によって、移動動詞を 以下の4種類に大きく分けている。

①出発の段階に重点があるもの。「でかける」「出発する」の類

②経過の段階に重点があるもの。「むかう」「とおる」の類

③到着の段階に重点があるもの。「つく」「とどく」の類

④全部の段階をふくむもの。「いく」「はいる」の類 (宮島(同:203))

「移動」概念の範囲について、宮島(同:204)は「広い意味での<移動>には、<出発・

到着>もふくまれる。すなわち、<出発・到着>にも<移動>としての側面はある。しか し、よりせまく<移動>をくぎれば、②④の類であり、そのなかでも特に④類である。」と 述べている。このことを図で示すと、以下のようになる。

(出発) ①でかける、出発する……

(経過) ②むかう、とおる……

移動 (移動)

(移動) ④いく、のぼる……

(到着) ③つく、とどく…… (宮島(同:204))

また、石綿(1999)は、動詞の統語構造を用いて述語になる単語の分類を行っている。

そのうち、移動動詞については、「移動一般」(「いどうする」「いく・ゆく」「くる」など)、

「方向をもつ移動」(「すすむ」「あがる」など)、「出発移動」(「しゅっぱつする」「たつ」) など)、「着点移動」(「つく」「もどる」など)、「経路移動」(「こえる」「とおる」など)、「様 態移動」(「あるく」「はしる」など)、「方向移動」(「むく」「むける」など)、「移動の逆」

(「とどまる」「とまる」など)という8つのタイプに分けられている(p.197-208)。 宮島(1972)や石綿(1999)のこういった研究を踏まえて、上に挙げた奥田の用例を見 直すと、例えば「海にむかう」「山にいく」と「広場にあつまる」との間に連語のタイプの 差があることがわかる。すなわち、「海にむかう」「山にいく」の場合は、宮島分類のいわ ゆる狭い意味での<移動>(<経過>と<移動>)の段階にあるのに対して、「広場にあつ まる」は<到着>の段階にあると言っていいであろう。また、これらの例を石綿分類で見 てみると、「山にいく」は「移動一般」に入るが、「広場にあつまる」は「着点移動」に入 る(「向かう」は石綿(1999)では取り上げられていない)。

このように、奥田が一括して〔ゆくさきのむすびつき〕と呼んでいるものには、実は性 質が異なるいくつかのタイプが含まれていると言える。よって、このむすびつきについて、

さらに細かく分類し、その内部構造をより明らかにすることが必要であろう。

次に、〔かかわりのむすびつき〕について考える。

39

〔かかわりのむすびつき〕について、奥田(同)はこのむすびつきを作る動詞は態度動 詞であるとし、「態度動詞には心理的なものと動作的なものとがあり」、それに応じて〔心 理的な態度のむすびつき〕と〔態度的な動作のむすびつき〕に分けている。それ以上の分 類はなされていない。しかし、すでに述べたように、奥田もその他の下位分類の可能性に 気づいているようである。奥田の示唆的な記述にもとづいて、例えば〔かかわりのむすび つき〕の中に、〔認知のむすびつき〕、〔関係のむすびつき〕とでも呼ばれるむすびつきを立 てることができるのではないだろうか。

実際に、奥田の「ヲ格」の論文を見てみると、同じく〔かかわりのむすびつき〕と呼ば れるむすびつきの中に、下位のタイプが細かく立てられていることがわかる。例えば「を 格の名詞と動詞とのくみあわせ」の論文では、第三章の〔心理的なかかわり〕はまず〔認 識のむすびつき〕〔通達のむすびつき〕〔態度のむすびつき〕21〔モーダルな態度のむすび つき〕〔内容規定的なむすびつき〕に5分類されている。またそれぞれについてはさらに下 位分類が行われている。ただし、〔通達のむすびつき〕だけは、〔認識のむすびつき〕の下 位のカテゴリーとして分類する余地があると指摘されており(奥田(1968-1972:109))、

それ以上細かく分けられていない。それ以外のむすびつきについては、下位分類は具体的 には以下のようになっている。

・〔認識のむすびつき〕

a)〔感性的なむすびつき〕:「天井をみつめる」「ピアノをきく」

b)〔知的なむすびつき〕:「もののむずかしさを考える」「精神状態を考察する」

c)〔発見のむすびつき〕:「先生を雑沓のなかにみつけだす」「国民性を古代に発見する」

・〔態度のむすびつき〕

a)〔感情的な態度のむすびつき〕:「蛇をおそれる」「風呂をたのしむ」

b)〔知的な態度のむすびつき〕:

「文章を小説の一技術とみなす」「雲をけむりとまちがえる」

c)〔表現的な態度のむすびつき〕:「あらい金づかいをたしなめる」「友だちをはげます」

・〔モーダルな態度のむすびつき〕

a)〔要求的なむすびつき〕:「天皇制の復活をのぞむ」「娘の手術をたのむ」

b)〔意志的なむすびつき〕:「復讐をたくらむ」「旅行をおもいたつ」

・〔内容規定的なむすびつき〕

a)〔体験の内容規定〕:「狼狽を感じる」「反感をおぼえる」

b)〔思考の内容規定〕:「策略を考える」「名義を考える」

c)〔通達の内容規定〕:「じょうだんをいう」「日本語をはなす」

21 「を格のかたちをとる名詞と動詞とのくみあわせ」では、〔かかわり〕の下位に〔動作的な態度のむす びつき〕というのがあるが、これはこの論文にない。この論文での〔態度的なむすびつき〕は、のちに紹 介するように、〔感情的な態度〕〔知的な態度〕〔表現的な態度〕の3つに分けられている。

ドキュメント内 ニ格の名詞と動詞からなる連語について (ページ 42-46)