• 検索結果がありません。

松本(1979) : 「に格の名詞と形容詞とのくみあわせ」

ドキュメント内 ニ格の名詞と動詞からなる連語について (ページ 32-35)

第 2 章 先行研究および本研究の位置づけ

2.3 ニ格の名詞を含む連語論の研究

2.3.2 松本(1979) : 「に格の名詞と形容詞とのくみあわせ」

ニ格の名詞を含む連語論の研究に、前節で紹介した奥田氏の「に格の名詞と動詞とのく みあわせ」の他に、松本(1979)の「ニ格の名詞と形容詞とのくみあわせ」もある。この 論文の本文中では触れられていないが、論文の後ろに付してある「この報告までの経過」

(pp.309-313)によると、松本(同)は奥田氏の「に格の名詞と動詞とのくみあわせ」と

「を格の名詞と動詞とのくみあわせ」の両論文を大いに参考にしているという。特に、「に 格」の論文は「を格」ほど説明が詳しくないことから、連語現象を記述する際の手続きや 方法などは、「を格」から学んだとされている。

松本(同)も、ニ格の名詞と形容詞とのくみあわせを、ニ格の名詞と形容詞のむすびつ

27

き方の違いによって、〔対象的なむすびつき〕、〔規定的なむすびつき〕、〔状況的なむすびつ き〕の3つに大きく分けている。それに、「これらのカテゴリーのうち、対象的なむすびつ きをあらわすくみあわせでは、かざりのに格名詞の存在が、かざられの形容詞の結合能力 からみて、だいたい義務的だが、規定的なむすびつき、状況的なむすびつきでは、一般に、

義務的とはいえない」(pp.204-205)としている。

この3つのむすびつきについて、松本はさらに下位分類を行っている。以下、表5では、

松本(同)の詳しい分類を連語の例を挙げてまとめる。なお、用例は基本的に松本(同)

のものを挙げるが、むすびつきの性格をより簡潔かつ明確に示すために、実例から当該の 連語のみを抽出し、時制もすべて現在形にしている(下線は松本(同)に従う)。

表5 松本(1979):「に格の名詞と形容詞とのくみあわせ」(分類)

分類 下位分類

連語の例

対象的 なむす びつき

ありかの むすびつき

存在空間のむすびつき このまちに孤児院がない;

この地域に軍の工場が多い

社会的な空間のむすびつき 家にしごとがない;

義務教育学校にそうした制度がない

部分・側面のありかのむすびつき 絵に色彩がない;

からだに異常がない

所属さきのむすびつき 女に詩人が多い;

北条がたに智者がない

もちぬしのむすびつき 伸子に旅費がない;

夫婦にこどもがない

かかわりの むすびつき

態度―性質 的なかかわ りのむすび

つき

あいて的なむすびつき 房子におみやげがない;

この手紙に返事がない

態度のあいてのむすびつき 私はかれにおいめがない;

おふくろは寺に功績がない 態度のむけられるものごと

のむすびつき

おっとは組合のしごとに熱心だ;

志村はけしきに興味がない ひとの特性のむけられ、あら

われる対象のむすびつき

あつさによわい(おば);

食物にくわしい(西洋婦人)

ものの特性のむけられ、あら われる対象のむすびつき

ときわ木の葉は風雨につよい;

木造のたてものは台風によわい 客観的なか

かわりのむ すびつき

ちかさ―とおさの むすびつき

ちぢみの産地はこの温泉場にちかい;

海にとおい(この野の村)

にかよいのむすびつき 自分の顔はKの顔にそっくりだ;

28

ももにちかい(木)

へだたりのむすびつき 工廠に関係がない(もの) 芸術は政治に無縁だ 対象=判断

的なかかわ りのむすび

つき

評価的な判断のよりどころ

=にないてのむすびつき

ストーブは台所に不適当だ;

色が壁に不つりあいだ モーダルな判断のよりどこ

ろ=にないてのむすびつき

ごはんにたくあんが必要だ;

学者に書物が大切だ

主体の むすびつき

感情の主体のむすびつき 話し方のほうが三四郎におもしろい;

私に労働がたのしい

感覚の主体のむすびつき ふたりにここの陽気があつい;

鮭にまぶしい(光堂)

感覚点のむすびつき 冬の夜風がくちびるにつめたい;

風が皮膚にいたい

規定的 なむす びつき

内容規定的なむすびつき 宗助は勇気にとぼしい;

このはなしは確実性にとぼしい

目的規定的なむすびつき むしぼしによい(季節);

学習に必要な(あかるい生活)

意義づけ的なむすびつき 牛のすねの骨つき肉がスープに適当だ;

女もちにおおきい(銀どけい)

状態規定的なむすびつき 茶色にきたない(髪);

地形は南北にながい

状況的 なむす びつき

時間的なむすびつき 天保時代にない(もの);

下痢のときなぞにくずゆが適当だ

環境的なむすびつき 曇天にかぜがつよい;

うすあかりのうちに色があざやかだ

原因的なむすびつき かおはたそがれのひかりにあおい;

ひかるみどりに目がいたい

以上、本節では、松本(1979)の分類を簡単に紹介した。かざられが形容詞か動詞かで 性質が全く異なるが、動詞「ある」の反対語が「ない」であるように、松本(同)は本研 究とも関連している。例えば「庭に木がある」という連語は「庭に木がない/多い」と同じ むすびつきをしている。また、「彼は父親に似ている」と「彼は父親にそっくりだ」とはニ ュアンスの違いはあるものの、ニ格の名詞と動詞あるいは形容詞との間の関係は同じであ る。このように、本研究はニ格の名詞と動詞からなる連語を分類する際に、いくつかのむ すびつきについては松本(同)も参考になった。

29

ドキュメント内 ニ格の名詞と動詞からなる連語について (ページ 32-35)